こんにちは、ヨムーノ編集部です。  

階段の上り下りで足やヒザが痛い。巻爪やタコが痛む。冷え、むくみに悩んでいる……。その症状、歳のせいだからと、あきらめていませんか?足は「若返らせる」ことができます。

ここでは、足の専門医・菊池 守さん著書『足の専門医が教える100歳までスタスタ歩ける足のつくり方』(出版社:アスコム)の中から一部を抜粋・編集してご紹介します。

「歩く」ことは病気を予防する!世界が注目する「中之条研究」
「おとろえは足からくる」とよく言われます。  
加齢は誰しも抗(あらが)えないものです。

そこで足腰の老化を少しでも予防するために、毎日できるだけ長い距離を歩いたり、なるべく階段を使うように心がけたり、人はさまざまな努力をしています。

足にかぎらず、使わなければ次第におとろえていくのは当然のこと。だからこそ、定期的な運動は心身の健康を保つために不可欠です。

しかし、「歩くことは健康にいい」という漠然としたイメージはあっても、具体的にどのような健康効果があるのでしょうか。たとえ万歩計を毎日持ち歩いたとしても、いったいどのくらいの距離を歩けば効果があるのかよくわかりません。

そこで注目されているのが「中之条研究」です。 
中之条研究とは、群馬県にある中之条町で2000年から実施されたモニタリング研究のこと。

中之条町で暮らしている65歳以上の住民およそ5000人を対象に、日頃の運動の頻度や生活習慣、睡眠時間、食生活など、健康に関する詳細な調査が、15年以上にわたって行われました。

さらにこの調査では、被験者5000人のうち、2000人に対しては血液検査や遺伝子解析を実施し、さらに詳しく健康状態を調査。そのうち500人には身体活動計を携帯させ、毎日の歩数とそのスピードを365日にわたって記録しています。  
世界でも類を見ないこの詳細な研究により、どのような運動をどのくらい行えば健康維持に役立つのかが、具体的に突き止められたのです。

結論から言えば、健康を維持・増進するためには、1日平均8000歩以上歩くことが理想的。  
また、ただ歩くだけでなく、早歩きなど中強度の活動が20分以上ふくまれていれば、さらにさまざまな病気に対する予防効果が得られることがわかりました。

ここでいう中強度の活動とは、うっすらと汗ばむ程度の速さで歩くことを意味しています。ウォーキング以外でいえば、雑巾がけやラジオ体操など、多少息がきれてもどうにか他人と会話ができる程度の運動のことです。

たとえば、1日2000歩の歩行量を維持するだけでも、筋肉のおとろえを防ぐことができ、結果として寝たきりになるリスクを軽減することができます。

1日4000歩では、運動による血流促進はもちろん、風景や環境の変化が脳にあたえる刺激がリフレッシュ効果を生み、うつ病予防の効果が認められました。

1日7000歩歩けば、血流が維持されることによって血管が鍛えられ、ガンや動骨も同様であるため、骨脈硬化に対する予防効果があります。さらに、鍛えられるのは血管や筋肉だけでなく骨粗しょう症や骨折を防ぐ効果も期待されます。

そして、1日8000歩歩けば、高血圧症や糖尿病、脂質異常症の予防にまで効果がおよぶと、中之条研究では結論づけられています。

世界中の足病医がこの結果に注目したのは、あらためて歩くことの健康効果を具体的なデータで証明したからにほかなりません。

歩行は全身運動であり、物理的に体が鍛えられます。また、さまざまな風景にふれることで脳の働きを活性化させ、発見や気づきによる刺激が精神のケアに役立ちます。

つまり、歩くことは心身の両面に働きかける効果があるのです。  
さらに興味深いのは、身体活動計を持っただけで、人は意識的に歩く機会を増やす傾向にあると確認されたことでしょう。

中之条研究の被験者は、身体活動計を携帯したことで、以前より平均して1日2000歩ほど歩数が増えたといいます。つまり、万歩計を持つことで、歩数をかせぐモチベーションが生まれたわけです。

なお中之条町では、この研究を通して住民の健康状態がアップしたことにより、国民健康保険医療費の抑制につながりました。  
一人ひとりが健康寿命を維持することは、医療費負担による自治体の財政悪化にまで効果を発揮するのです。

あなたもぜひ、いつまでも健康な足を維持できるよう「スタスタ体操」に挑戦してみてください。

なぜ歩くことによってうつや認知症を予防できるのか?
毎日一定の距離を歩くことが、フィジカル面だけでなくメンタル面への効果も期待できることは、すでに述べた通りです。  
たとえば、近年増加傾向にあるうつ病の治療に、ウォーキングが取り入れられていることをご存じでしょうか。

そもそも運動は筋肉や血流だけでなく、さまざまな部位に影響をあたえます。  
脳もそのひとつで、運動によって血流が上がると、記憶を司る「海馬(かいば)」という部位が大きく発達することがわかっています。

それによって認知機能が向上するほか、手足を規則正しくふって歩くリズムが、さらに脳内でセロトニンという精神を安定させる物質を分泌します。

散歩をしていて「気持ちいい」と感じるのは、このセロトニンが分泌されている証拠なのです。

また、歩くことは認知症の予防にもつながります。  
これも同じように、歩くことで脳に十分な血液が流れ込み、働きを維持することに理由があります。

脳の血流を維持することは、実は非常に大切なことです。なぜなら脳の神経細胞は血流不足に敏感で、一度失ってしまうと二度と再生しない性質があるからです。

定期的な運動をするのが困難な高齢者が、寝たきりになると一気に認知症が進むケースがよく見られるのは、まさにここに理由があります。

実際に中之条研究でも、よく歩く人ほど認知症を発症しにくいことが証明されており、日頃の運動習慣と認知機能は密接に関わっていることがわかります。

脳の機能を維持するためには、少々気分がふさぎこんでいるからといって、引きこもっていてはいけません。  
認知機能のおとろえを感じて不安になったりしたときはなおさら、天気のいい日を選んで、ぜひ散歩に出掛けてみてください。

適度な運動と美しい景色によって、少しずつメンタルが整えられていくのを感じることができるでしょう。