日本ならではの旅の楽しみの一つが温泉。もっとも、観光開発が進んだ反面、かつての素朴な風景や自然が失われ、土産店が並ぶ小道も今一つ引かれるものがなく、ピンポイントで温泉宿だけを目的に訪ねる場所も少なくない。そこで、風景も散策も温泉もすべて楽しめる場所の一つ、大分県の湯布院温泉に足を伸ばした。石と竹、紙のぬくもりが温かく、由布岳を望む露天風呂が絶景の宿「金門坑。」が目的地だ。

 東京からなら、羽田発大分空港まで約1時間40分。空港から湯布院までは直行のバスで、雄大な山並みを眺めつつ55分。列車で着く場合、由布駅とバスターミナルはすぐそば。そこから由布岳を正面にして真っすぐに伸びる道を歩くと、湯の坪街道だ。宿に直行せず、お昼ごろ到着してランチ&散策の時間が欲しい理由がここにある。

 大分川を渡り、ロールケーキやジャムの店、トトロの大きなぬいぐるみが目を引くジブリ作品の店などをゆるりと過ぎると、右手に「鞠智」(くくち)の文字。宿の夕食を考えてランチは軽く、という人にぴったりの「地鶏蕎麦」(500円)が食べられる。“軽過ぎ”という心配は要らない。そこから更に湯の坪街道を行くと、右手に全国のコロッケコンクールで優勝したという「金賞コロッケ」があるから、ここで和牛と男爵いもなどが入った「金賞コロッケ」(170円)をおやつに。

 由布岳を正面に眺めながらの散策は、金鱗湖まで行ったらUターン。歩き疲れても、一息入れられる場所が多数ある。ランチした地点まで戻れば、鞠智のカフェでも一休みできる。テラスと芝生の中庭。古伊万里のカップで味わうコーヒーで、のんびり喉を潤す。

 ここからタクシーで5分走ると目的地の金門坑だ。移築した270年前の合掌造りの建物でチェックイン。今回泊まったのは、離れの「天」。積み上げた石塀とくぬぎに囲まれた80平米。ゆったりとしたリビングダイニングと、障子の光がゆるやかな寝室。全面開放できる広いテラスには、源泉かけ流しの露天風呂。敷地内の散策にも着て出られる作務衣の備えがうれしい。

 点々と建つ離れの間に、「オン・ザ・ヒル」という貸し切り露天風呂がある。名前の通り小さな丘の上。部屋の露天はもちろん楽しみ放題だが、ここも一度は漬かっておきたい。竹の塀に囲まれ、向こうに由布岳の眺めという開放感は格別だ。食事はもちろん、オーナーは元古美術商というだけあって、器も存分に楽しめる。宿泊は1泊1名3万2,600円〜。

 空路なら、帰途は大分空港名物、足湯で“温泉県”大分を最後まで味わい尽くせる。時間やお財布の余裕があれば、もちろん別府や黒川への転戦もお勧めだ。