2021年9月8日=885 *がんの転移を知った2019年4月8日から起算

 ▼コロナ終息は幻想か

クルーズ船からの新型コロナ感染報道が日本で始まり、1年半あまりが経過した。2年前の今ごろ、誰が現在を予想できただろうか。9月は私の生まれ月だ。2019年の誕生日は、がん発病後1年ほどたち、家族とともにシュークリーム1個をゆっくりと頰張っていた。 去年でさえも1年後を想像できなかった。今年の花火大会は無理だった、秋祭りもできないけれど我慢する、来年の開催を期待して。東京オリンピックも延期されていたことだし、誰もがそう考えたんじゃないかな。 私もその一人だった。 ところが2021年9月上旬であるいまはこうだ。1日当たりの新規感染者は昨年同時期をはるかにしのぐ1万人超えで、緊急事態宣言はわが三重県を含む20以上の都道府県に発出されている。 このような状況下でしばしば唱えられてきた「コロナが終わったら・・・」は果たして可能なのかと危ぶんでいる。もちろん新型コロナは終息してもらうに越したことはない。しかしながら、これはかなり厄介な代物である。 従ってアフターコロナは幻想で、ウイズコロナ(コロナとともに)を目指すべきではないか。今ある私のごとく。すなわち「がんが治ったら」ではなく、「がんを持ったままで」生きるように。

 ▼いまの状況

わたくしはというと、今このように生きておりまする。肝臓への転移は小康状態を保ちながら、抗がん剤を続けている。消化管間質腫瘍(ジスト)は悪性腫瘍である故、肝臓のみならず、骨・腹膜・肺などに飛び火しやすい。 だから背中や腰さらにはあばらが痛くなると、骨に転移したか、体重が増えようものならば、腹膜転移からの腹水発生か、体重減少には栄養不足かと気にかかり、増えたら増えたで気を病む。また繰り返すせきには、コロナよりも転移の方が私は気になってしまう。

 ▼検査を先延ばし

ジストの場合これらの兆候を、診察時に毎回行う血液検査(月1〜2回以上)では判断できないため、造影剤を使うCT検査が欠かせない。CT検査は3〜4カ月に1回となるが、検査自体と言うよりも結果が恐ろしく怖いので(例えば転移増悪・病状悪化など)延ばし延ばし、現時点で前回からすでに5カ月過ぎている。もうそろそろ受けないと・・・

 ▼代表的症状一覧

一方、抗がん剤治療はというと、いまはスーテント(正式名はスニチニブ、製造販売元はファイザー)を内服中だ。副作用が強く出るため標準治療の半分量で、内服・休薬期間も規定通りには進まない。このように現在苦しむ代表的なものを以下に記す。  手足症候群 指先や足底に発生する皮膚障害だ。薬を包装紙から押し出しづらく、また歩きづらくなる。休薬すると和らいでくるが、治療が再開されると“再会”してしまう。  骨髄抑制 骨髄は免疫や酸素の運搬に必要な血球をつくっている。白血球や赤血球などだ。その中で特に白血球が減ってきてしまう。健常者の1/2〜1/3までに。  心臓機能低下 現時点ではまだ息苦しさなどの自覚症状は見られないが、心臓超音波検査(心エコー)では心臓機能の数値が正常下限を下回ってきた。これがさらに高じれば一時休薬ではなく、抗がん剤中止を余儀なくされる。

 ▼でも生きている

こんな状況でも生きている。生きていたいから生きている。そうは言っても、しばしば頭をよぎる。 「コロナの終息が早いか、己の終息が早いか」 コロナと競争や。でも陸上や水泳など通常の競技とは違って、遅い方を競いたい。それでは新型コロナの終息はなかなか期待しがたい今、ウイズコロナをどのように生きていこうか。まあ気ぃ楽にいきたいな。他人様からはしょうもないことやと思われても、己が良ければそれでよし。 例えば、このコーナー。医者と言っても医学・健康に役立つ情報を提供するものでもなければ、がん患者でありながら仲間の先頭に立っている訳でもない。 一個人の思いに基づき、好き勝手につづる場である。でもこれがええんや、オレにとっては。とりわけ心地よい。このおかげでもしかすると免疫力が上がって、がん細胞のひとつやふたつ退治してくれているかも。何万何億のがん細胞には及ばへんけど、しぶとく生きていきたい。 もちろん自衛もしている。非正規雇用の仕事日は三重⇔愛知と県境をまたいで行かないといけない。ところがこの仕事、緩和ケア病棟がコロナ病棟に転換して以来激減していて、現在9日間仕事ナシ日を更新中。県境もまたがないので立派な自衛だ。 それはいいが非正規雇用形態は通年契約だが、ギャラは日雇い制。従って仕事なくば、手当ナシ。手当なくば、高額費用を要するがん治療ナシ。やってられへん! 皆さま、お願い申し上げます。もしももしも何か仕事がありますれば、ご紹介を賜れましたら、甚だ幸いであります。わたくし生きている限りどうぞよろしくお願いいたします。

 ▼新刊執筆中です

ここで、ひとつご案内。 10月下旬の発刊を目指して(出版社・双葉社さん)、ただいま原稿執筆中であります。こちらもごひいきのほどなにとぞよろしくお願い申し上げます。 (発信中、フェイスブックおよびYоuTube“足し算命520”)

おおはし・ようへい 1963年、三重県生まれ。三重大学医学部卒。JA愛知厚生連 海南病院(愛知県弥富市)緩和ケア病棟の非常勤医師。稀少がん・ジストとの闘病を語る投稿が、2018年12月に朝日新聞の読者「声」欄に掲載され、全てのがん患者に「しぶとく生きて!」とエールを送った。これをきっかけに2019年8月『緩和ケア医が、がんになって』(双葉社)、2020年9月「がんを生きる緩和ケア医が答える 命の質問58」(双葉社)を出版。その率直な語り口が共感を呼んでいる。

このコーナーではがんと闘病中の大橋先生が、日々の生活の中で思ったことを、気ままにつづっていきます。随時更新。 『 足し算命 』