就労の場が少ない知的・精神障がい者の就労を目的にした屋内型農園「ソーシャルファーム・わーくはぴねす農園Plus横浜」(横浜市)の開園式が7月22日、横浜市内で行われた。横浜駅から30分以内とアクセスが良く、屋外での就労が比較的難しい知的・精神障がい者に適した就労環境が整備されており、大都市における障がい者の新たな「働き場」として注目される。(福祉ジャーナリスト 楢原多計志)

知的・精神障がい者に重点

 「わーくはぴねす農園横浜」は、障がい者雇用事業などを全国展開しているエスプールプラス(東京、和田一紀社長)が運営する企業向け貸し農園の一つだ。知的・精神障がい者が水耕栽培装置を使って野菜の屋内栽培に取り組んでいる。同社の屋内型農園としては最大規模で最大129人の就労が可能だという。

 半導体メーカー関連や化粧品、サプリメント、建設などさまざまな業種の企業9社が契約し、それぞれの企業と雇用契約を結んだ知的障がい者と精神障がい者計72人が働き始めた。

 障がい者の就労を目的とする貸し農園が注目されている背景には、就職が難しい障がい者にとって「就労の場」として選択肢が増えることが挙げられる。

 一方、障がい者を現在の職場で雇用することが難しい企業からみれば、借り上げた農園が「新たな職場提供」となり、障害者雇用促進法のペナルティー(法定雇用率の未達成企業は納付金を課せられる)や企業イメージの低下を防ぐことができるメリットがあるためだ。

 エスプールプラスが運営する農園の場合、知的・精神障がい者は、企業と雇用契約を直接結び、社員として最低賃金以上の賃金を得ることができる。また、企業は法定雇用率をクリアできるほか、就労に必要な農業知識や技術、労働環境の整備などはエスプールプラスが責任を持つため、業務や労務の管理の負担が少なくて済む。

 「わーくはぴねす農園横浜」などで進めている事業の大きな特徴は、障がい者の中でも就職が難しいとされる知的・精神障がい者の就労に重点を置いていることだ。

 厚生労働省の「障害者の就労支援対策の状況」(2020年)などによると、障害者のうち就労人口(18~64歳)は約365万人だが、実際に就労できているのは約58万人(約16%)にととどまっている。身体障がい者と比べ、就職率の低い知的障がい者と精神障がい者の就職率向上が大きな課題となっている。一方で、企業の半数が法定雇用率を達成できていないのが実情だ。

 エスプールプラスの和田社長は「障がい者雇用対策を推進するには知的・精神障がい者の就労促進は避けて通れない大きな問題だ」と取り組みの意義を強調している。

明るく広い職場

 横浜市営地下鉄「センター南」から歩いて10分ほどの「わーくはぴねす農園横浜」は3階建て。1、3階にそれぞれ野菜栽培室が整備され、2階には障がい者が休憩や食事をしたり、体調の急変に対応したりする部屋が用意されている。特徴は各部屋ともスペースが広く明るいことだ。

 スタッフは「知的・精神障がい者の中には体温調整が苦手だったり、狭く、暗い場所に長くいられなかったりするので屋外より屋内の作業に向いている。可能な限り、明るく、広く、開放的な職場づくりに努めている」と話す。

 野菜栽培室では、同社が共同開発した棚状の水耕栽培装置でサンチュやレタスなどの葉野菜の栽培が始まっている。水や液体肥料をパイプで循環させて供給するため効率的に栽培できる。

 全室とも白色LEDライトで統一され、二酸化炭素(CO₂)を自動調整している。障がい者の不安や安全に配慮した設計だという。採用された障がい者は管理者の指導を受けながら植え付ける苗の選別や、水と液体肥料の流量や残量の点検、生育の管理、収穫の作業に従事する。

 収穫した野菜は各企業が社員食堂の食材として利用したり、食事会などで社員に提供されたりする予定だ。

一緒に社会貢献

 この日の開園式で企業代表者は「働く場所が離れているが、同じ社員としてお互いにつながっている。一緒に働き、会社に、そして社会に貢献していこう」と新社員となった障がい者にエールを送った。

 社員代表の男性は「分からないことがあったら教えてほしい。新しい職場の社員として一生懸命働きたい」と抱負を述べた。

 最後に大橋弘武農園長が「周囲のみなさんの支援によって神奈川で初の屋内型農園が開園した。安心安全を第一に長く働き続けられるよう、応援をお願いしたい」と結んだ。