「カーリングのまち」北見は、車いすカーリングも強い。カーリング女子日本代表ロコ・ソラーレと同じ北見市を拠点に活動する車いすカーリングチーム「北見フリーグス」は、4月15〜17日に稚内市みどりスポーツパークで行われた「第18回日本車いすカーリング選手権大会」に出場。決勝で札幌ブレイブスに7対4で勝利し、3年ぶり4度目の日本一を決めた。


最北端・稚内市みどりスポーツパークで行われた日本選手権に5チームが出場した

不振から日本一奪還へ

結成11年目。メンバーは松田華奈、岩田勉、柏原一大、坂田谷隆、小林勉コーチの5人。2016、2017、2019年の選手権で優勝を経験している。そんな強豪チームも、昨年は新型コロナウイルス感染症流行の影響を受けた。氷に上がれなかった時期の練習不足が響いたといい、2021年の選手権は3位と不振にあえいだ。

それでも、前を向くことができたのは、2020年秋にオープンした地元のカーリング場の存在が大きかった。この1年は練習場の閉鎖期間も短く、夏場も含めてしっかりと練習できたと言い、今回の選手権はメンバーそれぞれが日本一奪還に向けて揺るぎない気持ちで挑んだに違いない。


ハウスで指示をするサードの柏原

全国の5チームが集結

本州2チームと北海道3チームの合計5チームが争った今大会は、総当たりの予選で「北見フリーグス」が1位通過。上位3チームが進出できるプレーオフは「チーム長野」と「札幌ブレイブス」の勝者が北見と決勝を行うことになった。


初優勝をかけて決勝に臨んだ札幌ブレイブスの高橋

北見が予選で唯一、苦しんだ相手は「札幌ブレイブス」だ。飄々とした表情で試合を組み立てていく北見のスキップ、坂田谷隆に対し、札幌のスキップ、高橋宏美はポジティブな声がけでチームを盛り立てる。試合は、札幌がリードしていたが最終エンドで北見が逆転。なんとか勝利を飾ったものの、北見には不安がよぎった。

「予選で全勝すると、決勝で負けるとジンクスがあるんです」(坂田谷)

決勝戦。長野との接戦を制して決勝に上がった札幌は初優勝を獲るという気概にあふれていた。序盤は北見が追う展開になったが、なんとか最少失点で食い止めていた。

「苦しい展開だったが、まずは1点を取り返そう、と前向きな気持ちを保てていた」(松田)

カギとなったのは、第3エンド。ハウスには北見の黄色いストーンと札幌の赤いストーンが一つずつ残っていた。後攻の北見は、坂田谷のドローで2点目を獲りにいったが、北見の2番目のストーンより札幌のストーンがやや中央に近かったため、北見はこのエンドで1点に終わってしまう。

坂田谷は「『どちらが中央に近いかわからない』と言われれば、無理をしてでも別の位置に投げたが……」と悔やみ、ハウスにいたサードの柏原も首を傾げた。

車いすカーラーは、目線が低く、正確な位置が図りにくい。数ミリの精度が得点に響くカーリングの難しさを痛感させられたシーンだった。

だが、北見には後半が強い自信もあった。ハーフタイムを終え、ここまで慎重に試合を進めていた北見は、作戦を変更。これまで外側のコースを使っていたが、センターを攻める作戦に変更。それが功を奏し、チームは息を吹き返した。

その後、ショットが決まらない札幌をジワジワ追い詰めていく。同点で迎えた最終エンド、3点を追加し、勝利。北見が予選から負けなしの完全優勝を飾った。


優勝を喜ぶ北見フリーグス

試合後、坂田谷は初の全勝優勝を喜びつつ、「『なんとか、勝てた』という感じでしたね。勉強させてもらいました」と振り返り、好勝負を演じた相手、「札幌ブレイブス」をたたえた。

「相手は最後のエンドで(有利な)後攻という、プレッシャーがあったと思う。うちのほうが少しミスが少なく、それが勝利につながった」

スイープのない車いすカーリングは、健常者のカーリングよりショット率が低く、セオリー通りに勝つことが難しい。だからこそ、ラストロックまで気が抜けない。坂田谷は安どの表情をにじませながら、「もう少し気持ちに余裕のある試合がしたい。ショット率で勝負するのではなく、作戦面をもっと考えなければいけない」と課題を口にした。


「個人的には念願だった北海道同士の決勝が実現して嬉しかった」と坂田谷

見据えるのは4年後、8年後

優勝した北見は、11月にフィンランドで開催される「世界車いすBカーリング選手権」の日本代表に確定。2026年のミラノ・コルティナダンペッツォ冬季パラリンピックに出場するために、まずは同大会で上位になり、Aプールに上がる必要がある。

「やっぱり最高峰のパラリンピックに出場したい。イタリア、そしてもちろん、札幌が招致している2030年も目指している」

そう目標を明かした坂田谷は「でも」と続ける。

「自分はいま53歳。(リードの松田が)24歳で平均年齢を下げてくれているが、男性陣は全員40歳以上。どのチームも高齢化が進んでいて、選手の入れ替わりもない。どこまで持つのかという不安はある」

パラアルペンスキーから車いすカーリングに転向した坂田谷は、北京冬季パラリンピックのアルペンスキーを見て、エースに入れ替わりがないのは他のパラスポーツにも共通している点だと感じた、という。
「急激に競技人口を増やすのは難しいかもしれないが、(長くできるスポーツなので)他の競技を終えた選手にも参加してもらいたいし、二刀流もウェルカム。チーム数や選手が増えないと競技レベルは上がらないので……」と競技の普及を切に願った。


リードとしてショットを放つ松田(写真)は北見フリーグスの最年少だ

一方、「同世代の選手と一緒にカーリングがしたい」という24歳の松田は小4で競技を始めた。

なぜ続けることができたかと尋ねると、「環境が整っていることが大きかった」と即答した。

「学生時代はとにかく練習場に行くのが大変だった。両親の理解と協力はもちろんだが、チームにも理解があり、送り迎えをしてくれていた母親に仕事があるときは、チームメートが迎えに来てくれて練習に連れていってくれた。いざ始めようとしても、遠方への移動や金銭面がネックになりがちなので、そこの援助があればいいのではないかと思う」

車いすカーリングの魅力は、年齢問わず、誰でもできること。
「デリバリースティック1本さえあればできるので、ぜひ競技の魅力に触れてほしい」

そうメッセージを残した松田は、北見に戻るとすぐにチームメートとともに練習を再開させた。

北京冬季オリンピックから続く、カーリング熱が車いすカーリングの盛り上がりにつながることを期待したい。


1位は北見フリーグス(中央)、2位は札幌ブレイブス(右)、3位はチーム長野(左)

text&photo by Asuka Senaga