5月14日「ワールドトライアスロンパラシリーズ横浜大会」が横浜市山下公園周辺特設会場で開催された。ワールドトライアスロンシリーズと同時開催。エリートのパラ選手は早朝6時50分からレースがスタート。大粒の雨が降りしきる中、一部コース変更もあったものの、男子32人、女子10人が出走した。

観客の応援がパワーの源!


表彰台で笑顔を見せる宇田

この日、最も注目を集めたのが、東京2020パラリンピック銀メダルの宇田秀生(PTS4)。「目立つことが好き」と話す35歳は、いよいよパリに向けて本格始動。「最後は(上位2選手に追いつけず)キツかったが、レース勘を取り戻すという点ではよかったかな」と振り返り、まずは自身の現状を確認した。

「銀メダルは出来すぎ」と評する東京大会の後、オフを挟み、4月の石垣島トライアスロンからシーズン入りした。東京大会時のコンディションはまだ戻っていない。だが、コロナ禍もあり、出場選手が少ない今大会を、自身が盛り上げたいと宣言していた。

PTS4男子は東京大会の金メダリスト、アレクシ・アンカンカン(フランス)ら8人が出場した。宇田は苦手とするスイムで5位と出遅れたが、続くバイクでトップタイムを記録。得意のランで2人を追い抜き、3位でフィニッシュ。力を出し切り、いつものように倒れこんだ。


「出し切ってゴールするというのはいつも一緒」と宇田(右)

レース後、宇田は振り返った。
「バイクは、セーフティに行ったつもりだったけど、わりかし前の選手をピックアップすることができた。(課題は)毎年、同じことを話しているが、もうちょっとスイムで楽に上がりたい。バイクとランはしっかりペースを作って地力を上げていきたい」

全体的に「まだまだ」と語った宇田。上位2選手はパリパラリンピック開催国のフランス選手で、フィニッシュタイムは2位の選手から16秒遅れ。「パリは遠いなと感じた」と苦笑せざるを得なかった。


大粒の雨が降る中、バイクで地力を発揮した

それでも、3年ぶりの有観客には「近くで応援してもらったことが一番うれしかった」と笑顔。

揃いのTシャツを着た応援団から「行け―!」と声援を受け、さらには応援に駆けつけた家族にメダルの報告もできた。それは東京大会では見られなかった光景だ。「おかげで頑張って走ることができた」と声を弾ませた。


今シーズンは11月の世界選手権(アブダビ)をターゲットにピークを合わせていく

「東京大会でメダルを獲り、僕のことやトライアスロン、それにパラスポーツを知ってもらう機会になった」という宇田。応援に力をもらい、パラリンピックの2大会連続表彰台に向けて気持ちよくスタートを切った。


3位だった宇田(右)。フランス選手の強さは脅威だ

二刀流の挑戦は続く

8選手がエントリーしたPTS5男子には、リオ大会日本代表の佐藤圭一が出場。今シーズン初レースを6位で終えた。

長年、クロスカントリースキー、バイアスロンの日本代表としても活躍し、夏冬二刀流のパラリンピアンとしても知られる佐藤は、ストイックにトレーニングを重ね、食生活ではグルテンフリーを実践している。

バイアスロンで7位に入賞した北京冬季パラリンピックから3月14日に帰国し、自主隔離の3日間が明けた翌日にはトレーニングを再開。二刀流アスリートかつ会社員としての業務もこなす佐藤に休みはない。


佐藤はマルチな活躍を見せる夏冬パラリンピアンだ

例年、スキー仕様の肉体からトライアスロンの練習を重ねることで徐々に身体を絞っていく。だが、今年は3月に冬季パラリンピックがあったことで、トライアスロンの準備期間が足りておらず、例年より筋肉がついたガッチリとした身体で横浜大会に挑んでいた。

「筋量が重く、バランスがよくない」というコンディションで、「スイムの出遅れが響き、バイク、ランとあまり巻き返しができなかった」と悔やしがったものの、「まだトライアスロンの練習を再開したばかりで伸びしろがある。例年に比べるといいところに来ているのではと思う」と前向きさを貫いている。

今後も、スキーのトレーニングの一環としてトライアスロンでも挑戦を続ける意向を示した佐藤。強豪ぞろいのPTS5クラスでは、「スイム、バイク、ランすべてでトップクラスでないと戦えない」と冷静に分析しており、総合的に課題を克服するつもりだ。


スキーからトライアスロンに移行中の佐藤

一方、スキーでは2026年のミラノ・コルティナダンペッツォ冬季パラリンピックも見据えているという。

「バイアスロンは僕がいなくなってしまうと誰もいなくなってしまうので……なんとか次世代の選手を見つけて、その選手につなぎたいが……」

二刀流を続けるベテランの存在は、若手の道筋を示している。

text by Asuka Senaga
photo by Sayaka Masumoto