幼稚園や小学校では、みんなが多少とも取り組んでいたなわとび。その後いつの間にか遠ざかり、何十年もしたことがないという人がほとんどではないだろうか。しかし、コロナ禍でひきこもり生活が多い昨今、なわとびこそ気軽に取り組むことができ、運動不足の解消、ひいては人生を変える力がある! とメッセージを発信しているのが、プロなわとびプレーヤーの生山ヒジキ氏。『人生が変わる 最高の後ろ跳び』(徳間書店)という著書を今年1月に発表したばかり。ここから現代人のさまざまな不調に特に効果があるという「後ろ跳び」についてご紹介しよう。

なわとび、特に後ろ跳びをすることのさまざまな効果とは?


プロなわとびプレーヤーの生山ヒジキ氏

プロなわとびプレーヤーの生山氏は、2007年以来なわとびを持って全国1000ヵ所以上を巡り、述べ50万人以上の人々になわとびの跳び方、楽しさを伝えてきた。しかしコロナ禍で外出が減り、在宅時間が増えたこと、スマホやパソコンに向かい前傾姿勢が多いことなどから、さまざまな体調不良が起こっている現実を目の当たりにして、なわとびこそそれを変えられると思ったのだそうだ。特に、後ろ跳びは普段やらない動き、日常動作とは逆向きの動きになるので、素晴らしい効果があるのだという。いったい、なわとび、特に後ろ跳びの何が私たちの日常にメリットをもたらすのか、生山氏がパーソナルトレーナーの森本浩之氏とまとめたものを紹介しよう。


国立健康・栄養研究所 2012年「改訂版 身体活動のメッツ(METs)表」を参照

1.必要なものはなわとびだけ
 なわとびは高価なツールではないし、複雑な技術、特別な施設は必要ない。

2.運動強度が強くダイエットにも効果的
 安静時の運動強度を1とすると、なわとびは8.8〜12.3。散歩が3.5、ジョギングが7.0であることを考えると、なわとびはかなりの強度。しかも短時間で効果がある。

3.体幹トレーニングになる
 なわとびを連続で跳ぶには体幹の安定が必須。続けていれば体幹が鍛えられる。

4.姿勢改善、肩こりや腰痛の予防、下半身の筋力アップに効果的
 姿勢がよくないとなわとびが上手く跳べない。姿勢がよくなればなわとびは上手くなる。特に後ろ跳びは肩甲骨周辺の筋肉をよく使うので、肩こり・腰痛の予防、下半身の筋力アップに繋がる。

5.骨への刺激が、骨の成長促進、骨粗鬆症の予防に
 運動不足で衰えてしまうのは、筋肉はもちろん骨も。なわとびは筋肉だけではなく、骨にも良い刺激を与えることができる。

これらのメリットは、いわゆる運動、スポーツをすればほぼ得ることのできる効果だろう。しかし、なわとびはなわひとつ用意するだけ、しかも短時間で場所を選ばずにこれらを実現することができるのが大きなポイント。では早速、大人は昔の記憶を頼りに、子どもは学校などではたぶんしたことのない後ろ跳びに挑戦してみよう。

なわとびを始める前に

なわとびは単純なジャンプ運動の繰り返しなので、すぐに取り組める。とはいえ、上記の通り運動強度は決して軽くはないので、普段ほとんど運動していない人がいきなり始めるとケガのリスクがあるのも事実。まず、片足立ちテストで下半身の筋力をチェックしてみよう。


30cm程度の高さのもの(ソファや低めの椅子、踏み台など)に座り、両手を胸の前で交差する。片足を床から離して、前方に伸ばす。そこから立ち上がってみる。左右交互に行い、両方とも上手く立ち上がれたらOK

この下半身の筋力チェックをしてみて、上手く立ち上がれなかった、バランスを崩したという人は下半身の筋力が衰えている可能性がある。無理をせずになわとびの回数を少しずつ増やしていく、または書籍で紹介されている動的ストレッチをしたり、準備運動におすすめのジャンプから始めたりするといいそうだ。


なわとびをする前のウォーミングアップとしておすすめなのが「その場ジャンプ」。その場でリズミカルにジャンプをする。着地はつま先で。膝関節、股関節は大きく曲げずにテンポ良くジャンプすることを心がける。10回連続を目標に

また、地面に縄跳びを横一直線に、または縦一直線に置いて、その前後、その左右を跳ぶ「前後ジャンプ」「左右ジャンプ」も上記その場ジャンプと同様に10回を目標に行うといい。なわとびが久しぶり、体力に自信がないという人は、この「その場ジャンプ」「前後ジャンプ」「左右ジャンプ」に取り組んで基礎体力をつけてから、なわとびを始めよう。

実践! 後ろ跳び

では、いよいよ後ろ跳びに挑戦。自分の身長に合った長さのなわと正しい持ち方を確認し、なわを地面につけることを意識しながら跳んでみよう。


なわがお尻とかかとの間にあるタイミングでジャンプすると上手に跳び越えられる。キツいと感じる場合は、はじめはゆっくりとなわを回し、地面になわが当たった音が聞こえたらジャンプして、なわを跳び越えてもかまわない。

背筋が伸び、脇が開いていないのが理想の姿勢だそうだが、なわとびを続けていると自然にその姿勢になる。というのも、なわの長さが自分の身長に合っていて、なわを地面につけることを意識していれば脇が開かないはずだからだ。脇が開いてしまう場合は、フォームではなく、なわの長さを調整してみよう

『人生が変わる 最高の後ろ跳び』には、このほかに「駆け足跳び」「交差跳び」など、5種の基本の跳び方と、「後ろ二重跳び」「交差二重跳び」など4種の応用の跳び方が紹介されている。そして、これらの跳び方をマスターし、さらに効率よく気になる部位を鍛えたいという人には、大人エクササイズとして特殊な跳び方や、なわとびを取り入れた「大人向け」「子ども向け」両方のエクササイズプログラムなどが紹介されている。しかも、各跳び方にはQRコードがありアクセスすると動画も公開されているので、動作を確認できるのも嬉しいポイントだ。

なわとびは人生を変える!?

ここまで簡単になわとびのメリット、そして後ろ跳びとはどういうものなのかを説明してきたが、これがなぜ「人生を変える」ことにつながるのか? 疑問に思う人も多いだろう。それは、生山氏の実体験からくる。小学生の頃、学校という共同生活に馴染めず不登校気味だった生山氏は、なわとびが得意な担任の先生が好きになり(いわゆる“初恋”)、先生に気に入ってもらいたい一心でなわとびの練習を始めた。最初は失敗ばかりだったのが、次第に上達し、みんなに褒められるようになると自信がつき、生活がみるみる変わっていったのだという。小さな経験が小さな成功を生み、小さな変化に繋がり小さな自信となっていく。

そんな人生が変わるサイクルを身をもって体験した生山氏は、なわとびのギネス世界記録にも挑戦し「24時間で何回なわとびが跳べるか」ほか、11個の世界記録を更新。現在は、プロなわとびプレーヤーとして全国をかけまわって指導する日々を送っている。 この本の編集を担当した苅部達矢氏は、「コロナ禍で運動不足の子どもと大人のためにと思い作りました」と語る。必要なものは「なわ」だけというシンプルさが、この混沌とした時代には合っているのではないか。気軽に運動したい、自分を変えたいという方は、是非本を手に取ってより深いなわとびの世界に挑戦してみてほしい。

私自身、最後になわとびをしたのは、何十年前のことだったか、もはや思い出せない。運動不足を日々自覚している身ゆえ、挑戦してみようかと思い、まずはなわを用意しなければとネットを検索。すると、取り外し可能な重りがついたもの、数をカウントできるものなど、カラフルななわとびが揃っていた。なわではなく、ナイロン製のロープにプラスチックのビーズを通したものまである。お気に入りのなわを手に入れれば、モチベーションもあがりそうだ。


<参考図書>
森本浩之監修『人生が変わる 最高の後ろ跳び』
生山ヒジキ著/徳間書店
1日3分、なわとびを跳ぶだけで運動不足解消はもちろんのこと、肩こり予防、姿勢改善、体幹強化ができる。約50万人になわとびを指導した、世界記録保持者が伝授するなわとびの極意。基本の前跳び、後ろ跳びはもちろんのこと、部位別トレーニング、大人向け・子ども向けのエクササイズなども網羅。わかりやすいQR動画つきで誰でも気軽に取り組める。

text by Sadaie Reiko(Parasapo Lab)
写真提供:『人生が変わる 最高の後ろ跳び』(徳間書店)、Shutterstock