ブラインドサッカー(パラリンピック競技名:ブラインドフットボール)国内初のトップリーグ「LIGA.i ブラインドサッカートップリーグ2022」は7月18日に浜松アリーナ(静岡県浜松市)で開幕した。


「ブラインドサッカーは新しいステージへ」。塩嶋史郎理事長が挨拶

「LIGA.i(リーガアイ)」は、日本ブラインドサッカー協会が、競技力の向上やクラブ運営の基盤強化を目的に、今年から新設。全国4つのクラブチーム(埼玉T.Wings、free bird mejirodai、パペレシアル品川、buen cambio yokohama)による、全3節の総当たりで優勝を決める。

男女日本代表のエースがゴールで魅せた!

開幕節では公式戦2試合が行われ、「パペレシアル品川」と「埼玉T.Wings」がそれぞれ1勝を挙げた。

開幕ゲーム。序盤からフィジカルで勝る「buen cambio yokohama」が攻勢だったが、パペレシアル品川が少ないチャンスをものにした。


屋外ではなく体育館が会場だった。「湿度が高い時期だったこともあり、ボールコントロールが難しかった」と川村

後半3分に歴史的初ゴールを決めたのは、東京2020パラリンピックで日本代表キャプテンを務めた川村怜(パペレシアル品川)だ。

「いつももっと多くの人に見てもらいたいと思ってプレーしている。日本代表として、生で最高のパフォーマンスを見ていただきたい思いだったし、歴史的ゴールが決められて嬉しい」

この日は盟友・佐々木ロベルト泉を欠いた状態で戦った。相手の接触をかわすためにボールを保持してドリブルする時間も短くなかったが、「フィールドにいる4人とGKの計5選手がパスをつなぐなど連動して動く。それが国内クラブのトップレベルのプレー」と仲間を称え、胸を張った。


1月の日本選手権、2月のKPMGカップに続き、三冠を狙うfree bird mejirodai。園部優月が先制ゴールを決めたが……

一方、女子の最強プレーヤーとして名高い菊島宙(きくしま・そら/埼玉T.Wings)も負けてはいない。

4人がかりで菊島を抑え込む「free bird mejirodai」をかわし、豪快に2得点を決めて埼玉T.Wingsを勝利に導いた。


女子の最強プレーヤーとして名高い菊島。今節はトーキックで2点をゲット

「いつもは子どものころから練習してきたインステップシュートがメイン。でも、今日は(相手GKにシュートのタイミングが読まれにくい)トーキックをメインにする工夫をした」とゴールの裏側を明かした菊島。「男子日本代表が多く、強度の強い相手。吹っ飛ばされたりしたが、なんとか2点が取れてよかった」と笑顔をにじませた。

観客席をどよめかせた川村と菊島は、それぞれ「Player of the Match」を受賞。クリスタルトロフィーが贈られた。


有料試合はレベルが高い試合を見せなくてはいけないプレッシャーもあるが、観客が「SNSで発信したいと思うようなプレーを見せたい」と菊島

タイ代表を迎えたエキシビションマッチは元ロービジョンサッカー日本代表・齊藤悠希の2点でbuen cambio yokohamaが勝利した。


齊藤は「観客の皆さんに感謝の気持ちを伝えたかったので……オーバーだったかもしれないが、大きく手を振った」

地元チームも熱視線

選手入場、得点シーン、そして試合終了時には拍手でスタンドが沸く。オープニングの照明や音響の演出も華やかだった。

そんな新リーグを見て、「僕たちもいつかトップリーグに出場したい」と話すのは、地元・浜松を拠点にするクラブチーム「FCコレチーボ静岡」の選手たちだ。


会場の入り口で行われた体験会は盛況だった

晴眼プレーヤー、上島博幸さんは、パラスポーツイベントがきっかけで、小6の息子とともにチームに参加しており、この日は会場の前で行われたブラインドサッカー体験会を担当した。試合を観るまで、「そっとボールを蹴るような競技」だと思い込んでいた来場者が、試合を観るや選手の空間認知能力やスピード感に驚いて帰っていく。そんな様子を見てこの競技の可能性を感じたという。

「もっとうまくなって、この競技の魅力を伝えたい。刺激を受けました」と気持ちを新たにしたようだ。


タイ代表のエキシビションを観戦するFCコレチーボ静岡の選手、スタッフら

大会に訪れた観客からは多様な声が聞かれた。

「静かに観戦していただけに、ゴールの場面は興奮した」(サッカー少年団に通う兄、保護者と来場した小学2年男児)

「楽しかった。また静岡で試合を開催して欲しい」(市民招待枠で訪れた小学1年女児と家族)

「初めて観たが、アイマスクをして走ったり、壁にぶつかったりする勇敢なプレーに驚いた」(ハーフタイムショーのチアダンスに参加した孫を見に来た60代夫婦)


チケットは有料で500円〜2000円。試合前のサッカー教室参加者やその保護者の姿も多かった

地方開催やコロナ禍の難しさはあれど、主催者が思い描くのは、満員の観客で埋まるスタンド。第一節の来場者は730人だった。

「大会がスタートできたことにまず安心感がある」と胸をなで下ろした松崎英吾事務局長は、こう続ける。

「『一つ先のリーグ』が新リーグのキャッチフレーズ。東京大会を通じた社会変革活動は終わったという意識があるかもしれないが、ピッチの中だけでなくピッチ外にもいい影響がつながる事業を地道に継続していきたい」

東京2020パラリンピックからまもなく一年。新リーグに注目が集まる。

text by Asuka Senaga
photo by X-1