パリ2024パラリンピックまで、あと2年。パラサポWEB編集部は新シリーズ・TOP PROSPECT(=トップ・プロスペクト。「有望株」の意味)をスタートします。ここでは、パリ大会での活躍が期待されるスター候補をご紹介! ぜひ、あなたの推しを見つけてください。

第1回は、陸上競技の視覚障がい(T13)クラスで5種目の日本記録を持つ福永凌太(ふくなが・りょうた)選手。休日はサウナで整え、わらび餅にハマっている23歳。一見、クールな印象ですが、話し出すと言葉があふれ出てくる、ポジティブな思考の持ち主でした。

福永 凌太(ふくなが・りょうた)|陸上競技
パリ2024パラリンピックに向けて活況を見せる、陸上競技の視覚障がい(T13)クラスのメダル候補。棒高跳び、十種競技の挑戦を経て、2020年にパラ陸上の世界へ。中京大職員。身長182㎝。滋賀県出身。

身長182cm。中学から大学まで得意だったのは棒高跳び

アジアのナンバーワンではなく、世界一を目指して

――昨年、頭角を現し、日本記録を続々と塗り替えました。喜ぶそぶりは見せず淡々と受け答えする姿が印象的です。

福永凌太選手(以下、福永):2年前、大学4年生のとき、初めてパラの大会に出場。それまでは中京大学で十種競技をメインにやっていて日本トップレベルの人たちと練習していました。大学まで健常者で一番を目指していたわけですから、新記録は少し不思議な気持ち。自分の納得できる記録を出せない限り、素直に喜べないんです。

「小学校のとき、少しだけやってみたサッカーや野球を続けたい気持ちもありましたが、目が見えにくくても影響が少ない陸上競技を始めました」 ――この1年でスプリンター向けの身体に肉体改造。食事など日常生活への意識も変えて約5㎏増量させたんですね。

福永:社会人になって栄養なども勉強し、十種競技に取り組んでいた頃とは身体も変わってきました。高たんぱくの食事を心がけていて、職場で昼食を食べるときも、鯖缶や納豆を持参するようにしています。
あとは、モンブランなどスイーツも大好きなのですが、洋菓子と和菓子がある場合、和菓子を選ぶようになりました。最近は、わらび餅が好きですね。

オフは「頭をすっきり」させる!

――オフはどのように過ごしていますか?

福永:休日の午前中はもっぱらサウナです。サウナ、冷水、外気浴を2〜3セット行います。疲労回復効果もあると思いますし、なにより頭がすっきりするんです。

――サウナ―なんですね。平日は?

福永:寝る前のリラックスタイムは、読書かYouTubeを観ることが多いかな。各界でトップを極めた人の思考や言葉を知るのが好きです。単純なのですぐに影響されます(笑)

――好きな言葉は何ですか?

福永:いろいろあるんですけど、『日々成長』ですかね。以前、十種競技元日本王者の武井壮さんが動画で『365日365勝! 成長とは、昨日の自分よりも今日少しでも素敵な自分になっていること。毎日が自分との勝負』とおっしゃっていて。グッときたので、以来、その言葉を大事にしています。

SNSをのぞくと、哲学的な発言も。「言葉が好きなんです」

大舞台に姿を見せぬダークホース

――新型コロナウイルス感染症の影響で、今年最大の目標だったアジアパラ競技大会(中国)が延期になるなど、大きな大会への出場機会がありません。延期を知り、どんな気持ちでしたか?

福永:『持ってるな〜』と思いましたね。東京パラリンピックもまだ国際的な資格を持っていなかったので断念せざるを得ませんでしたし、神戸で行われる予定だった世界パラ陸上競技選手権は2024年に延期。今秋の予定だった杭州2022アジアパラ競技大会も来年になり、(日本では記録を持っているけれど)海外ではいつまでも結果を出させてくれないなって(笑)

100mや走り幅跳びで現在のパラの世界記録を出すことができれば、健常の日本選手権に出場する夢も叶います

前向きなところも僕の持ち味です。“優勝”は僕のなかではすでに決まっていること。今年大会があったら優勝していたけれど、それが1年延びただけ、と考えています。

――とはいえ、競技者が輝ける時間には限りがあります。パラ陸上歴2年目の新星である福永選手ですが、目指しているのは2024年のパリパラリンピックの表彰台だけです。

福永:単調で地味な練習やつらい練習も含めて、もともと陸上競技のすべてが好きなんです。オリンピックを目指して大学に入りましたが、それが叶わず、陸上競技人生に区切りをつけて就職活動をしていました。そんなとき、離れて暮らす実家の母が「パラリンピックもあるよ」と言ってくれて、日本記録やリオパラリンピックの入賞記録を調べてみたら、メダルを狙えることがわかりました。そのとき、どんな大変なことがあっても挑戦しようと決めたんです。一度はあきらめた世界への道ですから、ワクワクする気持ちしかありません。

パラ陸上は、アジアのナンバーワンではなく、世界一を目指して始めました。その先の世界記録更新も狙っています。自己ベストを更新し続けてパリではメダルを獲りたいです。

表彰台で伝えたいことは?

大学職員として競技を続ける福永選手。「周りの理解があり、いい練習ができています」 ――パラリンピックで注目を浴びたとき、伝えたいことはありますか?

福永:「目が悪くてよかった」という言葉を残したいです。

僕が挑戦を通じて伝えたいのは「可能性無限」ということ。小5で目の病気がわかってから棒高跳びや十種競技を始めましたが、ライバルに負けたときは「目が悪いから仕方ない」ではなく「僕がへたくそなだけ」と思って練習に取り組みました。

僕の場合は「目が見えにくい」というわかりやすいコンプレックスがありますが、たとえば「勉強が苦手」とか、そういうコンプレックスがある人にも、頑張る姿を通して「自分もできるかもしれない」という希望を配れる選手になりたいです。挑戦する姿をいろんな人に見ていただき、応援してもらえたら嬉しいです!

「いままで目標達成できないことがほとんどでした。だから僕が出せる全力で目標に向かってがんばります」

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「目が悪くてよかった」とは、言い換えれば福永選手にとって「今の自分でよかった」と再認識することです。パリパラリンピックでは、表彰台でクールなたたずまいで笑みを浮かべる、福永選手をぜひ見たいです!

※日本記録数は6月27日時点

text by TEAM A
photo by Hiroaki Yoda