新年度のスタートから少し落ち着いて、生活のリズムもなじんでくる時期。健康や美容のためにダイエットや運動にチャレンジする人も多いのでは? しかし、どちらも始めるのは簡単でも継続するのは難しい。そこで、栄養管理士兼パーソナルトレーナーとして、多くの人にダイエットや運動の指導をしてきた、メディカルフィットネス「T’s Energy」の片岡秀人さんに、ダイエットや運動を継続するコツを教えていただいた。今度こそ、運動を習慣化したい、ダイエットを成功させたいという人は必見!

1.まずは毎朝の体重測定から

――ダイエットや運動が続かない、という人は多いと思いますが、まずはどんなことに気をつければいいでしょうか?

片岡さん(以下敬称略):すべての人におすすめなのが、体重を記録するということです。ダイエット目的の為にジムに通い始める方の多くは、怖くて体重を測っていなくて、久しぶりに測ったら……なんて声をよくお聞きします。このように気がついたら……と、ならないようにするためにも、毎日の体重の変化を知ることは重要です。体重を測るだけで太り過ぎの抑止にもなりますので、毎朝、できれば同じ格好で測るのがベストです。夜の体重では、その日の食事に大きく影響されてしまうので、朝、トイレに行った後が最も比較しやすくておすすめです。

――前日、それほど食べていないのに体重が増えてしまったとか、運動したのに体重が減っていないということがありますよね?

片岡:毎日の体重変動に一喜一憂する必要はありません。基本的に人は1日で体重が1kgも増えたり、痩せたりすることもないからです。この話をすると、『私は1日で1kgくらい簡単に太れるんですよ』と言われることがありますが、それはほぼ水分量の変動です。我々の体重の約60%は水分ですので、毎日の体重変動の大半は水分量の変動に過ぎません。
通常、約7200kcalを摂取すると1kgの脂肪が増えると言われていますので、いつもの食事にプラスして、カツ丼7杯を食べた場合は、1kg太るかもしれませんが(笑)。

要するに体重記録はおすすめしますが、日々の体重の変動に一喜一憂せず、1ヶ月単位くらいで体重変動を見ることが大切ということです。今は体重を測るだけで、携帯に記録が飛んで、グラフも見れる体重計が安い価格で買えますのでぜひ利用してみてください。

2.食事はハレとケでメリハリを

――運動で筋力をアップするにしても、ダイエットで体重を減らすにしても食事は重要だと思うのですが、食事に関するアドバイスはありますか?

片岡:おすすめしたいのは、「ハレとケ」という考え方です。ハレに関しては、晴れ着、晴れ舞台などに使われていて聞いたことがあると思いますが、意味としては非日常をさします。それに対してケは日常のこと。
今まで多くの方のダイエットをサポートしてきましたが、痩せられない方は、ほぼ毎日がハレの食事=非日常の食事となっている傾向があります。要するに、毎日好きなものを好きなだけ食べているということです。活動量が減っている現代人が毎日好きなものを好きなだけ食べていれば、太るのは当たり前です。とはいえ、食べるということは身体をつくるということと同時に、楽しむものでもあると私も考えています。

――毎日のようにお寿司やとんかつ、ハンバーグを食べるような生活では当然太りそうですよね。では、そういったモノを食べていいのは1週間のうちどれくらいの割合でしょうか? また、ケの日は具体的にどんなモノを食べたらいいのでしょうか?

片岡:1週間のうちの割合は、その方の活動量や体格などによって異なります。たとえば私の場合、ケの日は基本的には和食が多く、ご飯に主菜と副菜を食べています。具体的には朝ならご飯と納豆と温野菜のような内容です。でも、週に2、3回はハレの日として、カロリーが高いと言われているラーメンやピザ、揚げ物など好きなものを食べます。私の場合は、これくらいのハレとケのバランスで、今の体重をキープできています。ケがあるからこそ、たまのハレの食事をより楽しむことができるんじゃないでしょうか。
まずは、毎日をハレにするのではなく、自分自身のハレとケの日のバランスを見つけることをおすすめします。

3.タンパク質ファーストを心がける

――最近、ダイエットのために、糖質オフや低GIの食品を摂るといった方法を聞きますが、片岡さんがおすすめする食事内容はどんなものですか?

片岡:私がおすすめするのは、タンパク質ファーストの食べ方です。タンパク質は主菜に多く含まれる栄養素です。具体的には、肉、魚、卵、大豆製品、乳製品に多く含まれます。これらを朝昼晩、毎食必ず1品は摂ることを意識するのがタンパク質ファーストな食事です。
タンパク質=筋肉というイメージがある方も多いかと思いますが、我々の身体は水分と脂質を除くとほとんどがタンパク質でできていますので、筋肉や骨、臓器、皮膚、爪、髪などの主成分となります。
タンパク質は体内で、合成と分解を繰り返し、最低でも体重1kgあたり1g(70kgの人なら70g)は毎日体外に排出されてしまうので、「体重1kgあたり1gは摂りましょう!」というのが、タンパク質を摂る必要性の1つです。

――たとえば体重70kgの人に必要なタンパク質70gを摂取しようとした場合、肉や魚を70g摂取すればいいというわけではありませんよね?

片岡:はい、肉や魚にはタンパク質だけではなく、水分や脂質も含まれます。食の意識が低く、手軽に食事を済ませてしまう方は、タンパク質が不足する、炭水化物ファーストなパターンが多く見られます。例えば朝はパンとコーヒー、昼は蕎麦、夜のみ主菜がある食事となると、1日に必要なタンパク質量を満たすことができません。
具体的に言うと、豚のばら肉100gに含まれるタンパク質の量が約14g、たまご1個は約6gと言われています。もし豚ばら肉だけで70gのタンパク質をとろうすると約500g、たまごだけなら約12個も食べる必要があります。1回の食事で食べるのは難しい量ですよね。ですから、3食必ずタンパク質をとるようにするといいと思います。思い当たる節がある方は、ぜひ今日からタンパク質ファーストで食事を選ぶことを心がけてほしいですね。

――そう考えると、ご飯に納豆や焼き魚、豆腐のみそ汁など、タンパク質が豊富な和食は理想的な朝食と言えますね。とはいえ、朝からそんな手間をかけた食事をするのは難しいという人が多いと思うのですが……。

片岡:はい、ですから朝はパンに卵や高タンパクヨーグルトを追加する。昼は蕎麦単品などではなく、肉や魚などの主菜がある定食を選ぶ。それが難しければ、おにぎりにコンビニでも買えるパックのプロテインドリンクを追加するなど、タンパク質をどうすれば摂れるかを優先的に考え、チョイスするといいと思います。

――プロテインなどのタンパク質は筋肉を増強したいアスリートが摂取するイメージがありますが、ダイエットをしている人もタンパク質ファーストがいいのでしょうか?

片岡:タンパク質ファーストはダイエットにも効果的です。オックスフォード大学のシンプソン教授が提唱した仮説で、タンパク質レバレッジ仮説というものがあります。ざっくり言うと「人は1日のタンパク質の必要量を満たすまで食事をとろうとする」という仮説です。要はタンパク質をちゃんと摂らないと空腹を感じやすくなり、食事量が増えるということです。私の体感としても、炭水化物だけの食事を摂った方が、すぐに空腹を感じやすいです。
仕事柄お昼から夕食の時間が空いてしまうことが多いのですが、仕事の合間にプロテインを摂ることで、空腹を感じずに過ごすことができています。

4.どんな運動をするかを長期目線で考える

――健康やダイエットに運動は必須だと思うのですが、わかっていてもなかなか続けられないという人はどうしたらいいでしょうか?

片岡:まずは「これを続けることができるか?」と、自分に問うことをおすすめします。なぜなら運動は一時的に頑張っても大して効果が期待できないからです。例えば、一生懸命筋トレを頑張ったところで、やめてしまえば体は徐々に元の状態に戻っていきます。ジョギングの習慣も同じです。一時的に心肺機能が向上したり、痩せたりするかもしれませんが、やめればどちらも元に戻っていきます。頑張るのではなく、自分が無理なく続けられることが大切です。

私の場合は、トレーニングは仕事の休憩中に職場であるジムで15分×週4〜5回の筋力トレーニングを5年続けています。これだけでも身体は変わってきましたし、これならずっと続けられると思っています。

とはいえ、私のように休憩中にトレーニングができる人はなかなかいないと思いますが、最近は駅の近くに24時間のジムが増えてきています。週2回30分×2回でしたら、どんなに忙しい方でも時間を作ることができるのではないでしょうか。それも難しい方は、毎日今よりも30分だけ多く歩くことから始めていただきたいです。ぜひ自分がずっと続けられる運動を見つけてみてください。

5.高いと思えるパーソナルトレーナー、実はコスパがいい?

――最近はYouTubeなどのネットで、ストレッチや筋トレ、ヨガなどさまざまな運動の動画を見ることができ、自宅でも手軽に運動を始められるようになりましたが、自分にあった運動を見つけて効果を出すには、どうしたらいいでしょうか?

片岡:それはパーソナルトレーナーをつけることです。運動や食事の改善をしようと思ったら、自己流ではなく、最初だけでもパーソナルトレーナーをつけて学ぶことをおすすめします。これは私がこういう仕事しているからということではなく、圧倒的にコスパが良いと確信しているからです。

運動も食事の改善もやろうと思えば自己流でできてしまう反面、自己流であるが故にずっと効果が出ない人が多く、もったいないと感じてしまいます。
たとえば、髪の毛を切る場合、自己流で家族同士で切ることも可能ですが、普通はやらないじゃないですか? それは圧倒的にプロに頼んだ方が良いことがわかっているからだと思うのですが、私は運動と食事の改善も全く同じだと思っています。
とはいえ、「パーソナルトレーニングは高くて」と躊躇する方もいるかと思いますが、最初の3ヶ月でもいいので、プロに学ぶことをおすすめします。車の運転も最初は教習所に通って基礎を学び、最終的に自立するように、運動や食事の改善も最初はしっかり教えてもらうことが最もコスパが良いと言えます。

今回教えていただいた内容は、どれも難しくなく、中には「そんなこと?」と思った人もいるのではないだろうか? しかし健康や美容の維持に終わりはなく、たとえ目標体重や理想の体型になったとしても、今度はそれを維持していかなくてはならない。だからこそ、長く続けられる簡単な内容であることが大切なのだ。ちなみに片岡さんは学生時代は運動が好きではなく、今も走ることは苦手だという。そんな運動が得意でない人の気持ちがわかるトレーナーのアドバイスは現実的で、これならば続けられそうだと思える。まずは明日の朝、体重計に乗るところから始めてみてはどうだろうか?

【教えてくれた人】 片岡秀人さん
管理栄養士兼パーソナルトレーナー。姿勢改善専門のジムでトレーナーや管理栄養士として保健指導やセミナー講師として活動を行なってきた。現在は、痛風・糖尿病専門外来である両国東口クリニック付属のメディカルフィットネスT’s Energyで活動。

協力:T’s Energy
医師、パーソナルトレーナー、管理栄養士が総合的に健康のサポートをするメディカルフィットネス。
痛風、腎臓病、生活習慣病の改善を望む方やダイエット、パフォーマンスアップまで幅広く指導。
https://www.ts-energy.jp/

text by Kaori Hamanaka(Parasapo Lab)
photo by Shutterstock