愛知県安城市には全国でも珍しいアニマルセラピーを行う『一般社団法人ロイヤルアシスタントドッグ』がある。会員約50名の創立者理事を務めるのが近藤清美さん(54歳)だ。(猫びより 2018年9月号 vol.101より)

猫とふれあい 笑顔あふれる

アニマルセラピーとは「動物とのふれあいを通じて心を癒す活動」のこと。トレーニングが難しいとされる猫も、時間をかけて行うことによって、初めての人がふれてもリラックスした姿を見せてくれるそうで、高齢者や障害者施設、入院中など諸事情で動物を飼うことができない人々のもとを訪れている。

訪れるのは3回目という西尾市の高齢者施設へ同行した。猫4匹と犬2匹とスタッフ5名が訪問し、まずは明るいトークで入居者たちを笑いで包み込む。あらかじめ入居者に猫好きか犬好きか分かるようシールを胸につけてもらい、猫や犬たちの得意技披露で盛り上がった後、順番に膝に乗せたり撫でたりしてもらう。

「柔らかく温かな猫とふれあうことで、これまでの幸せな思い出がよみがえってくるそうです」と笑顔で語る近藤さん。猫や犬を通じて、口下手な人も自然に会話がはずみ楽しそうだ。

赤ちゃん着物を再利用した綺麗な猫用衣装は年配の女性に大好評。

また、ターミナルケア(末期治療)を行うホスピスでは、緩和治療の一環として、通常動物は入れない病棟へセラピー猫や犬を連れていく。添い寝をしてくれるセラピー猫に、言葉は発せられなくとも涙を流して嬉しそうに反応してくれる患者さんの姿を見て「大好きな猫がいるんだよ、よかったね」と家族からも喜びの声が寄せられる。そして患者だけでなく、家族や職員さんの心をも癒やす効果があり、定期的な訪問を心から楽しみにしているそうだ。

猫セラピーは試行錯誤

「一緒にいた時間を〝楽しかった〟と言ってもらえるように、精一杯努力するのが私の仕事」と明るく話す近藤さんは、20歳と若くして結婚したが、子育てをしながら25歳でコーギー犬のブリーダーを始める。全国大会にも参加し、チャンピオン犬を育成するまでに。しかし30歳の頃、介助犬を育ててほしいと頼まれたのをきっかけに独学で学びはじめ、36歳でブリーダーをやめてアニマルセラピーに専念することを決意。まだドッグセラピーが主だった時代、それこそ猫セラピーについては試行錯誤の連続だったという。

セラピー猫になった元保護猫たち

近藤さんの元で活躍するセラピー猫たちは、怪我をしたり捨てられたりしていた元保護猫だ。トレーニングは猫たちが好きなことを見つけ出し、喜びながら学ぶのが近藤流。自宅でじっくり根気よく、決して無理強いはせずに撫でたり時には遊んだりしながら、その猫に合わせた訓練を重ねている。

そんな優しいママがみんな大好きで、夜も顔の真横で眠るのは、添い寝が得意な甘えん坊マイケル。ダニエルやチロルは足元で寝て、後輩のカールは場所が無いと仕方なく息子さんの布団へ行くのだとか。

一番先輩のキティは、年齢を考えてセラピー活動は控えているのだが、広いお庭へプチ脱走するほど元気だ。たまに活動へ参加した時に名前を呼ばれると、まるで思い出したかのように、近藤さんの肩に乗ってニャアと元気にお返事。

保護された時にはシッポを大怪我していて、手術でチロルチョコ2個分の長さになってしまったからと命名されたチロルは、人の気持ちを理解できる、人間大好きなコに育った。

愛情を注げば返してくれる

幼い頃から猫と犬に育てられたという三男の由宗さん(23歳)は普段から猫や犬たちの食餌の世話をしたり、セラピー活動前に皆を洗ってあげたりと頼りになる若手スタッフだ。長男や次男、ご主人の峰(たかね)さん(60歳)も仕事の合間、活動に参加したりと協力的。そんな家族の応援もあり、忙しくても清美さんは常に一生懸命だ。

ブリーダーから転身し主婦業をこなしながら、保護猫や保護犬をアニマルセラピーのプロへと変身させる近藤さん。「愛知県の動物保護管理センターでも、新しいお家を待っている猫や犬がたくさんいます。その事実を多くの人に広く知ってもらいたいです」。どんな動物でも愛情を注ぐことによって、人に愛情を返してくれる。

文・写真 原田佐登美

ロイヤルアシスタントドッグ&キャット

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Facebook:一般社団法人ロイヤルアシスタントドッグ

Satomi Harada
愛知県在住で保護猫3匹と暮らす。著書に『猫にまたタビ』(辰巳出版)。