アルバム『Bach Paralleles』のコンセプトを聞く

■AURO 3Dで収録された最新アルバム。ステレオでも高さ方向の表現を感じられる

山之内 今回の『Bach Parallels』も、そういった立体音響を意識したレコーディングがなされていますね。このアルバムのコンセプトについて教えてください。

名倉 『Bach Parallels』は、東京カテドラルの聖マリア大聖堂と軽井沢の大賀ホールの2箇所で録音しました。バッハの作品をマリンバ用に編曲したものと、バッハに影響を受けた現代作曲家が書き下ろしたもの、それらを並べて収録する、という意味で、パラレル、並行というタイトルをつけました。

入交 バッハの作品は東京カテドラルの「教会的な響き」の中で録音して、現代作品は大賀ホールの「通常のコンサートホール的な響き」の中で録音しています。

名倉 1曲目のバッハの「Passacaglia」は、以前から入交さんからリクエストをいただいていたのですが、なかなか環境が整わず実現できませんでした。今回ついに実現できたので、非常に特別な録音になりました。これは演奏会とはまた違う「録音芸術」の世界のように感じています。これは8つの異なる楽器を使っていますが、自分が円の中心に座って、360度からいろんな楽器の音が聴こえてくるような録音になっています。

入交 今回の作品は、AURO 3Dという方式で収録しています。なかなかこれをネイティブな環境で聴くことは難しいですが、たとえばステレオや5.1chで聴いても、天井方向を感じることができます。ハクジュホールの公開実験でも同じ手法を用いましたが、3D録音する時は高い位置にもマイクを立てます。ステレオや5.1chミックスは、上方のマイクの音声をメインマイクに混ぜて制作しますが、特に教会ではこの効果が高く、この高い位置のマイクによって、カテドラルの雰囲気が出せています。さらにこの3DミックスをHPL化すると、楽器の立体感まで表現されることが分かります。HPLはヘッドホン用と思っていらっしゃる方も多いと思いますが、スピーカーで聴いてもその表現力の高さに驚かされます。

名倉 一方、現代作曲家のレーン・ハーダーの「Prelude and Fugue for solo marimba」は大賀ホールで収録したものですが、音楽のテクスチャーがはっきり聴こえるような録音になっていますね。

山之内 このアルバムは、通常のステレオバージョンとHPLバージョンと2パターン配信されています。

名倉 ステレオバージョンとHPLバージョンを聴き比べたら、HPLの方が非常に良かったのです。「Passacaglia」も、ステレオバージョンでは8つの楽器が平面に聴こえますが、 HPLでは立体的に浮き上がって聴こえてきます。私が家で聴いているのはイヤホンや安いオーディオ装置ですが、これほどの差があるとは驚きでした。

山之内 このアルバムでは、演奏会の現場にいるかのような体験もできるし、録音でなければ再現できないような表現の世界も広がる、さまざまな聴きどころがあることが分かりました。

名倉 新型コロナウイルスが感染拡大してから、さまざまな演奏家の方が自分の演奏をYouTubeなどにあげることが増えました。ただ自分ではそれをやる気がしませんでした。それは、音や映像のクオリティについても、中途半端なものを出すのが嫌だなという気持ちがあったからです。しかし、今回のストリーミング配信のように素晴らしい音質で皆様に聴いていただけるのであれば、配信の可能性はますます広がるように思います。

山之内 今後はニューヨークからの配信といった新しい取り組みも期待できそうですね。本日はありがとうございました。

■名倉誠人 ライブインフォメーション

10月24日(土) 開場 14:00 開演 15:00

名倉誠人 マリンバ・リサイタル 「バッハ・パラレルズ:コラールと舞踏組曲」

神戸新聞 松方ホール

〒650-0044 神戸市中央区東川崎町1-5-7 神戸情報文化ビル4階

問い合わせ:松方ホールチケットオフィス

TEL:078-362-7191

https://www.kobe-np.co.jp/matsukata/schedule/2020/1024.html

2021年10月13日(水) 開演 19:00

名倉誠人マリンバ・リサイタル「バッハ・パラレルズ」

東京文化会館小ホール(上野公園内)

〒110-8716東京都台東区上野公園5-45

問い合わせ:ムジカキアラ

TEL:03-6431-8186