対応ハードの拡充は?

スタンダードな仕様のステレオヘッドホンでも楽しめることが360 RAの技術的なアドバンテージになるが、Sony Headphone Connectアプリによるユーザーの耳を写真に撮って「個人最適化」を行う技術については仕様をまとめたライセンスを用意して、アプリのデベロッパーにも提供する。

ソニーが2020年のCESでも試作機を披露した「SRS-RA5000」を含む、単体で360 RAの立体音場が再現できるワイヤレススピーカーが、近く発売を控えそうだ。本機よりもひと回りほど小さな「SRS-RA3000」も開発が進んでいる。RA5000はハイレゾ対応のワイヤレススピーカーの上位モデル。RA3000には圧縮音源を再生時に高音質化するデジタルサウンド拡張エンジンのDSEEが組み込まれる。

先行して欧州で商品として発表されているモデルについては一部のスペックが明らかにされている。上位のRA5000は本体に合計7基のスピーカーユニットを搭載。ユニットの向きをそれぞれに変えて360度周囲に広がる音場感を実現する。アンプの出力は55W。

SRS-RA3000は円筒型のコンパクトな本体に17mm口径のトゥイーターを2基と、80mm口径のフルレンジスピーカーユニットを搭載。フルレンジスピーカーを上向きに配置して、ディフューザーで360度方向に音の広がりを生む。2基のパッシブラジエーターを背中合わせに配置して低音を強化する仕組みを採用した、密閉型エンクロージャーのワイヤレススピーカーだ。アンプの出力は20W。カラーバリエーションにライトグレーとブラックの2色が揃う。

ふたつの製品はともにWi-Fiでホームネットワークに接続して音楽配信サービスのダイレクトストリーミングが受けられるほか、Spotify ConnectやChromecast built-in機能を活かしてスマホからキャストしたコンテンツの再生にも対応する。AIアシスタントによる音声操作はGoogleアシスタント、Amazon Alexaが選べる。AAC/SBC対応のBluetoothオーディオ対応も実現した。

スピーカーをセットした部屋のルームアコースティックに合わせて音場が自動補正できるほか、オートボリューム機能も備える。天面に設けた音符のアイコンボタンを押すと360 RAの効果を高める「イマーシブオーディオ・エンハンスメント」など充実した機能が揃う。Sony Music Centerアプリでオーディオイコライザーを含む本体設定が細かく追い込める。

どちらのスピーカーもまだ日本国内での販売に関する詳細は伝えられていないが、Echo Studioに加えてソニーの高音質な純正品でAmazon Music HDに公開されている360 RA対応の3D Musicコンテンツを早く聴ける日が楽しみだ。

■2021年は360 Reality Audioの国内本格展開に期待したい

360 RAの技術を映画やゲームの分野にも広げる計画はないのだろうか。岡崎氏は「技術的には可能だが、今は戦略としてオーディオ分野への展開に注力する段階」と答えている。アイテムとしてまずはスピーカーにヘッドホン、VISION-Sにも搭載された車載エンターテインメントシステムのスピーカーなどから360 RA対応の輪を広げる。

Dolby Atmosや空間オーディオなど、シアターの分野に名を馳せる技術や、オーディオテクニカのゲーミングヘッドホン「ATH-G1」が2020年夏に米EmbodyVR社との協業により実現したイマーシブオーディオ技術への対応など、音楽以外の分野にもイマーシブオーディオ体験は広がりつつある。

岡崎氏に聞くと「360 RAにヘッドトラッキングを技術を連結させたイマーシブオーディオ体験を実現することも技術的には可能」だというが、それならばアップルの空間オーディオに対応するヘッドホン「AirPods Max」のライバルとして、ソニーのワイヤレスヘッドホン「WH-1000XM4」や本機の後継モデルでぜひ360 RAとヘッドトラッキングを組み合わせた音楽体験を実現して欲しいと思う。ライバル同士の競争はイマーシブオーディオへの一般の関心を大いに引きつけるだろう。

2021年はソニーの360 RAがいよいよ本気を出してくるのではないかと筆者も期待している。