パナソニックは、テクニクスブランドよりフラグシップシリーズ“リファレンスクラス”初となるプリメインアンプ「SU-R1000」を12月11日に発売する。価格は830,000円(税抜)。

テクニクスブランドは、2014年に復活した。その際、リファレンスクラスのネットワークオーディオコントロールプレーヤー「SU-R1」、ステレオパワーアンプ「SE-R1」が発売された。それから6年が経過し、ついに同シリーズ初のプリメインアンプが誕生したことになる。

■解像感を維持しながらドライブ能力を高めることを目指した

アンプ部には、フルデジタルアンプ「JENO Engine」やLAPC(Load Adaptive Phase Calibration)といった、これまでのセパレートアンプにも搭載していた同社独自の技術を採用。これによって低ノイズでクリアな音質、広大なサウンドステージといった長所が得られる。

テクニクスCTOの井谷哲也氏は、「これまでのパワーアンプ部は、S/Nや解像感については高いご評価をいただく一方、エネルギー感とドライブ能力をさらに高め、次のステージに引き上げることが課題だった」と説明する。

解像感とパワー感を両立するために「スピーカーからの逆起電力や高電流時の電源電圧ドロップによる歪みの混入を避ける必要があると考えた」と井谷氏は続け、それを実現するために「Active Distortion Canceling Technology(ADCT)」「Advanced Speed Silent Power Supply(AS2PS)」という2つの技術を新開発したという。

■パワー段の歪み成分のみを抽出し補正する「ADCT」

ADCTは、ΔΣ変換や1ビットコンバージョンなどを担うJENO Engineの出力信号と、その後段のパワーアンプ部の出力を比較し、歪み成分のみを抽出して、正確に補正を行うというものだ。

ADCTでは、アナログアンプで用いられる負帰還回路(NFB)のように音楽信号そのものをフィードバックするのではなく、デジタル領域でフィードバックを行う。

音声信号を帰還させると音楽信号の過渡特性が悪くなることが考えられるが、歪み成分のみを帰還させるという方法により、JENO Engieの「フルデジタル・無帰還」という音質優位性を保てるという。これにより、リアリティを損なうことなく必要なパワーを正しくスピーカーに伝え、低域の駆動力を獲得できるとしている。

ADCTはまた、独自のキャリブレーションによってアナログ回路のバラつきを吸収することも可能だ。起動時にアンプのゲインやオフセットを学習し、再生時の歪み抽出時に補正する。これによって、正確に歪み成分のみを抽出できる。

■新開発の高速・低ノイズ電源ユニット「AS2PS」

もう一つの新開発技術「AS2PS」は、高速スイッチング電源と超低ノイズレギュレーターを採用した電源ユニットのことを指す。

スイッチング電源は瞬時の電源供給能力に優れる反面、スイッチング動作でノイズが発生するという問題も抱える。同社はノイズ低減のため、スイッチング周波数をオーディオ帯域外の100kHzに固定し採用していたが、本機ではさらに高い約400kHzに固定。「スイッチング周波数をオーディオ帯域外へ追いやることで音質への悪影響を排除した」(同社)。

その後段には。超低ノイズレギュレーターを設けたことで、低域までフラットな低ノイズかつ安定した出力を実現したという。

電源回路構成も贅沢だ。筐体は下段がプリアンプ部、上段がパワーアンプ部に分離したセパレート構成となっており、下段のプリアンプ部ではアナログ回路/デジタル回路でブロックを分離し、それぞれ専用の電源回路から電源を供給している。

また上段のパワーアンプ部についても。左右対称のデュアルモノ構造で、L/Rそれぞれ単独の電源回路から電源供給することで、各ブロック間の不要な干渉を防ぎ、高S/N、高セパレーションを実現している。

■アナログレコード再生をさらに高音質化する新技術が満載

本製品で特に注力したのが「アナログ再生の高音質化」だ。

まずはフルデジタルアンプの特性を活かし、デジタル信号処理とアナログ回路を組み合わせた「Intelligent PHONO EQ」(インテリジェントフォノイコライザー)に注目したい。

フォノイコ部はデジタル/アナログハイブリッド機構の「Accurate EQ Curve」(高精度EQカーブ)。レコードからのアナログ信号をデジタル変換後、デジタルフィルターによる高精度なEQカーブにより、左右のレベルやバラツキのない理想的な周波数特性に補正し、高精度なイコライジングを実現するというものだ。

デジタルフィルターなので、RIAA以外にもIEC、DECCA/FFRR、Columbia、AES、NAB、RCAの計7種類のイコライザーカーブに対応しており、様々なレコードの忠実な再生が可能になるとしている。

後段には新開発の「Crosstalk Canceller」(クロストークキャンセラー)を搭載。これは測定用の「キャリブレーションレコード」を再生してカートリッジのクロストークを測定・機械学習し、DSPによってキャンセルするというもので、クロストークを改善した“レコード本来の音”を、より忠実に再現できるという。

クロストークの測定と機械学習を行うのは非常に計算量が多く、SHARCプロセッサーを使っても10分程度時間がかかる。具体的には、4096タップのFIRフィルターそれぞれ32bitの係数の最適組み合わせを求めることが必要で、本来はさらに膨大な時間を要するが、本機は独自のアルゴリズムによって、より短時間でエラー信号を収れんさせる手法を開発し、実装しているという。

また、カートリッジとフォノイコライザーのインピーダンスマッチングによる影響をDSPで補正し、カートリッジ本来の音を再現するという「PHONO Response Optimiser」(フォノ・レスポンス・オプティマイザー)も搭載している。

PHONO Response Optimiserは、具体的には、カートリッジのインダクタンス成分、ケーブルの容量成分と回路入力インピーダンスのミスマッチによって発生する周波数特性の乱れを補正するというもの。このPHONO Response Optimiserについても、キャリブレーションレコードでゲイン/フェーズ特性をL/R個別に測定し、最適化を行う。

なお、Crosstalk CancellerとPHONO Response Optimiserは同時に測定・補正することが可能。補正データは内蔵メモリーに3つまで保存でき、使用するカートリッジにあわせて切り替えて使用可能となっている。また、Crosstalk CancellerとPHONO Response Optimiserは、それぞれ個別にオン・オフできる。

ちなみにキャリブレーション・レコードは本体に付属し、30cm・33.3rpmの180g重量版。A/B両面に、テスト信号を外周部・中央部に2回記録しており、それぞれ個別の音溝となる。このレコードを破損したり紛失したりした場合も、保守部品として用意されているという。

このように本機には、デジタル技術を使ってアナログレコード再生を高音質化する技術が多数搭載されているが、井谷CTOは「アナログレコードの音をツルツルにしたいわけではない。あくまでアナログレコードらしさを残しつつ、そのレコード本来の音を楽しんで頂くために開発した」と説明する。

実際にこれらの効果をオン・オフして確かめると、その効果は非常に高い。特にクロストークキャンセラーの効果は劇的とさえ言える。アナログレコードの温かみを失わずに、S/Nや解像感が一気に向上することが確認できた。

■肉厚アルミパネルを採用、ブロックごとに筐体を分割

シャーシのフロントには10mm、トップ・サイドには6mmのアルミパネルを採用。内部は補強を兼ねた鋼板シールドプレートでブロックごとに分割されるほか、鋳鉄製インシューレーターを採用するなど、高剛性化により制振性が高められている。

入力端子はRCA×2、XLR×1、PHONO RCA(MM/MC)×1、PHONO XLR(MC専用)×1、MAIN IN×1、REC IN×1、光デジタル×2、同軸デジタル×2、USB B×2を搭載。デジタル音源は最大PCM 384kHz/32bit、DSD 22.4MHzに対応するほか、MQAフルデコード再生にも対応する。

定格出力は150W+150W(1kHz、T.H.D.0.5%、8Ω、20kHz LPF)、300W+300W(1kHz、T.H.D.0.5%、4Ω、20kHz LPF)で、周波数特性はフォノ(MM):20Hz-20kHz(RIAA DEVIATION ±1dB、8Ω)、ライン:5Hz-80kHz(-3dB、8Ω)、デジタル:5Hz-80kHz(-3dB、8Ω)。入力感度/インピーダンスはフォノ(MM):2.5mV/47kΩ、フォノ(MC):300μV/100Ω、ライン:200mV/22kΩ。 

アンプ部にはGaN-FETを採用するなど、各所に高品質パーツを採用した。スピーカーターミナルも専用のもので、極太ケーブルも装着できる。外形寸法は430W×191H×459Dmmで、質量は約22.8kg。