パナソニックは「CES 2020」開催中、ラスベガス市内のプライベートブースにて、2020年の4K有機ELテレビの新フラグシップ「HZ2000」シリーズを披露。新たに搭載された機能の詳細と共に、画質をチェックしていこう。

2020年モデルのポイントは、最新のHDR規格であるHDR10/HDR10+/HLG/HLGフォト/DolbyVisionのすべてに対応していること。さらにパナソニックもメンバーに連なる「Filmmaker Mode」、およびドルビーが新しく発表した規格「Dolby Vision IQ」に対応することだ。

■「Filmmaker Mode」と「Dolby Vision IQ」とは

Filmmaker Modeが策定された経緯と内容については、昨年9月にファイルウェブで詳しく報じているが、HZ2000はパナソニックにおけるその搭載第一弾モデルとなる。そしてもう一つのDolby Vision IQは、CES 2020のタイミングで突如その名前が登場した新機能だ。HZ2000の高画質デモでは、この2つの機能が大々的に扱われている。

まず、Dolby Vision IQとは、周囲の照度環境に応じた自動画質調整が組み込まれた、ドルビーによる新しいHDRのフォーマットだ。まだ技術の詳細がリリースされている訳ではないが、Dolby Vision IQというフラグを含んだ、現在のDolby Visionを拡張する規格だと考えて良い。

では、何故Dolby Vision IQが必要なのか。HDR対応テレビが普及してから頻繁に耳にするようになった「4Kテレビは画面が暗い」という問題がある。

HDRは正しく視聴できれば素晴らしいコントラスト性能を発揮するはずなのだが、そのポテンシャルが発揮されるのは暗い部屋で映画などを視聴するというマニアックな環境のみ。HDR対応テレビが一般の家庭に普及し、明るいリビングなどに設置されるようになると、「高画質なHDR対応テレビを購入して家に設置したら、画面が暗くてキレイには見えない」と言われはじめた。

その原因は様々ある。HDRコンテンツが豊富にある映画やドラマは全体的に画作りが暗かったり、あるいは映像モードの想定する環境よりも部屋が明るいことが原因だったりする。しかし何であれ、せっかくHDR対応テレビを購入したのに、期待通りの体験を得られないのはとても残念なことだ。

そこでDolby Vision IQが取り組んだのは、薄型テレビに内蔵する照度センサーを使って設置場所の輝度を測定し、設置場所に応じて画質をコントロールすることだ。Dolby Vision IQでは特定の階調部分を維持しつつガンマを変えるようなリニアな処理を加えることで、明るい部屋でも画面が暗く見えることがないように画質調整を行う。

実際にDolby Vision IQを有効にした状態で、明るい部屋で映像を見比べると、暗い部分のディテールが潰れるようなことがなくなり、伸びやかでダイナミックな高画質が体験できた。

なお、Dolby Vision IQ対応の信号が入力された状態では専用の映像モードで動作するため、メーカー側に画作りの余地はなくなるが、公式の機能としておまかせにあたる「Dolby Vision IQ」、完全に暗室向けの「Dolby Vision Dark」、店頭のような明るい環境向けの「Dolby Vision Vivid」という3つのモードが用意される。

ただし、Dolby Vision IQはドルビーによるHDR信号を伴う新規格だ。どんな信号が入ってきてもDolby Vision IQを有効にすれば画質調整を行うという類ではなく、Dolby Visionコンテンツ再生時のみ利用できる。

 

そこで映画を見る時に活躍する機能がFilmmaker Mode……と簡単に言い切れるものではないが、HZ2000の機能としてはそうなるように実装されている。

Filmmaker Modeについては昨年報じた内容から抜粋すると、

・白色点をD65として、SDR/HDRに適用すること

・フレームレート、画角を変更しないこと

・「フレーム補間」「オーバースキャン」「シャープネス」「ノイズリダクション」「その他の画像処理機能」をオフにすること

というものであり、HDRや色に関する規定はない。つまり、Filmmaker ModeにはHDRの画面が暗い問題を解決できる直接的な機能はないのだが、メーカーが自由にできる余地がある。パナソニックは元々、HDRの暗い映像を明るく表示する機能を開発済みで、2019年モデルのVIERAにはエントリー向けの機種から搭載済みだ。HZ2000のFilmmaker Modeにも、パナソニックが自社で開発した、環境に応じた最適な設定で視聴できる機能が搭載されている。

実際にデモで上映された映像は、パナソニックがHDRデモで使用している忍者のコンテンツ。暗い状態から照明をオンにすると、黒浮きをしない形で中間の階調と平均輝度を引き上げ、暗闇のなかで動く黒装束の忍者の姿が潰れない黒階調と輝度バランスで表示してくれた。

照度センサーを搭載して視聴環境に応じて画面の明るさを変える機能は、もとをたどれば液晶テレビの消費電力引き下げ競争をしていた際に、 “暗い部屋では輝度を落として消費電力を下げる” という目的で用いられていた。以降、一定以上のレベルの薄型テレビには搭載され続けている当たり前の機能なのだが、HDRの画面が暗いという問題を機に、高画質化という目的で使う機運が高まったということだろう。

もちろん、従来のHLGを含むHDR、そしてSDRの画質についても進化している。HZ2000のパネルは、基本的には昨年の「GZ2000」と同じ自社工場で組み立てた独自設計版で、一般的な有機ELパネルと比べて約20%高い輝度を実現。欧州版の名称では「Master HDR OLED Professional Edition」で、欧州に出荷される製品は、チェコにあるパナソニックの工場で組み立てられている。

上映されていたデモ映像の画質を見ても、ピークまで伸びやかで明るく、色鮮やかな映像は、同世代の有機ELテレビと比較しても、やはり頭抜けた画質性能を秘めている。2019年から引き続き、高画質で4K有機ELを牽引するモデルとなっていきそうだ。

(折原一也)