ソナス・ファベールのHomage Collection、最新2モデルをチェック

読者の皆さま、お元気でしょうか。もうすぐ猛暑の夏も終わり、年末にかけて、専門店のイベントや各地のオーディオショウなどが行われます。今年の新製品も勢揃いしそうで、ワクワクします。

オーディオ選びでは、好みの音質だけではなく、存在感のあるデザインや搭載技術をじっくりと探求することも楽しみですね。そんななかで、今年注目されるスピーカーの一つ、ソナス・ファベールの新しいHomage Collectionが発売されることになりました。私は今回、輸入元のノアを訪問し、そのリスニングルームで試聴することが叶いました。

モデル名は「Amati G5」と「Serafino G2」です。前者は第5世代で、後者は第2世代となります。試聴は後述しますが、コンポーネント・システムとして、ブルメスターのCDプレーヤー「061」、プリアンプ「077+PSU(専用DC電源)」、 そしてステレオパワーアンプ「216」と「218」を組み合わせました。

それでは、Homage Collectionについて紹介しましょう。まず、今回の開発チームについて少し触れておきます。創業者フランコ・セルブリン氏が退任した後は、パオロ・テッツォン氏(サウンドデザイナー)とリヴィオ・ククッツァ氏(インダストリアルデザイナー)が中心となり開発が進められてきました。しかし、パオロ氏が22年に同社を去ることになり、新たな13名で構成されたチーム・リヴィオが開発を担当しています。

それでは、Amati G5とSerafino G2の感激するほどの美しいデザインとキャビネット構造を紹介します。実際に両モデルを目の前にすると、イタリアの高級家具を彷彿とさせてくれます。

伝統の美しい表面仕上げとしては、Wenge(アフリカ産広葉樹ウェンゲ)、Red(レッド・フィニッシュにしたウォルナット)、Graphite(新色:ダークグレーの顔料を施したグラファイト・フィニッシュのウォルナット)の3種が用意されています。

キャビネット構造は、徹底して不要振動を低減し、木材のもつピュアな響きの良さを引き出していると言えるでしょう。まず、キャビネット内部の水平方向の仕切り板材はMDFで、外観の両サイド板材はMDFとは異なります。

それは、厚みの違うシート状の板材を木目の角度を90度変えて9層に積層した板材です。これをプレス機で加圧し、美しく強靭なラウンド・カーブを造形します(プライウッド構造)。さらに熟練の職人による手作業にてラッカーを重ね塗りし、丁重に磨き上げ、光沢のある美しい表面仕上げを行っています。これが美しい響きのコア技術の一つになります。さらにトップとボトムプレートに高精度切削されたアルミ材を使用し、フットはスパイク仕様です。

リアには、フィン形状のStealth Ultraflexという縦長のアルミ・リアパネルが装着されます。これは、最新の2ヶ所の縦長バスレフポートをチューニングし、低域をコントロールする独自方式です。これは、低域の特定周波数を強調するバスレフポートではなく、キャビネット内の背圧を最適化するスリット・ポート(ほとんど空気抜き)のように感じました。こうした異種素材の組み合わせにより、キャビネットの不要振動を低減し、搭載ユニットの音をピュアに再現させ、スピーカー全体のS/Nを大幅に向上させています。

また、トゥイーターとミッドレンジは独立した密閉型チャンバーに収容され、ミッドレンジの強い背圧は、仕切り板の細い穴を通して、トゥイーターとのチャンバーに流れるように工夫しています。これをイントノ・テクノロジーと呼び、ミッドレンジの背圧を6dB減衰させ、中域の特定周波数におけるインピーダンスのピークや上昇を抑えることができます。この音圧の影響を受けないようにトゥイーターの後部磁気回路全体も木材でカバーされています。各チャンバー内部には4種類の減衰材も適正使用されています。このように、リスナーの聴感に敏感な帯域の音の透明度を、徹底して向上させていることが大きな特徴です。

次に両モデル共通のトゥイーターとミッドレンジについて説明します。トゥイーターは伝統的な28mmシルク・ソフトドーム・トゥイーターで、長い歴史を経て進化させています。直近で確認すると、そのドームの頂点がワンポイントで抑えられていることが分かります。これはアローポイントDADと呼ばれ、超高域で発生する逆共振を抑えると同時に、高域の透明度や伸びやかさを引き立てます。後部の強力な磁気回路は、前述のとおり木材でカバーされています。

ミッドレンジは15cm径で、複数の天然繊維を調合し自然乾燥したペーパーコーン振動板を使用します。剛性が高く、軽量で極めて音離れの良い振動板です。強力なネオジム磁石、銅クラッド・アルミニウム・コイル巻線、BIMAX特殊素材によるスパイダー(振動板のリニアな振幅を支えるドーナッツ形状のパーツ)により、開放的な高速レスポンス特性を身につけています。

また、フロントにはコンピューター解析による同軸フェーズプラグを採用しました。これにより、リスニングポイントに向け、理想的な中域放射特性を実現しています。

ウーファーは、Serafino G2では18cm径ですが、特殊発泡材の表裏をミッドレンジと同仕様のペーパーコーンでサンドイッチし、剛性と内部損失を高めています。また、トゥイーターとミッドレンジの音色的つながりも考慮しています。スパイダーはBIMAX製で磁気回路にはネオジム磁石を採用しています。

一方のAmati G5では、22cm径の同仕様の振動板、スパイダー、磁気回路を搭載していますが、大きな違いは、駆動力を高めるためにダブル・ボイスコイル仕様にしていることです。磁気回路後部には、冷却効果が高く、スムーズな振幅と可動域の大幅な改善に貢献するエアポート付きボトムキャップも装着しています。これもコンピューター解析によるものです。

これらのユニットの性能と理想的な空間描写を発揮するネットワーク回路には、「Aida II」にも採用した技術に加えて、新開発のイントラクティブ・フュージョン・フィルタリングを採用していることが特徴です。特に、ユニットの振幅/位相特性、空間/時間特性を最適化し、低域周波数のインピーダンスを最適に制御し、アンプとのマッチングにも配慮されています。ネットワーク回路も実に精密感があり、高品位なコンデンサ、空芯コイル、抵抗が使用されています。実際の製作は、熟練の職人により、イタリアでハンドメイドされています。

ECMレーベルの3作品を試聴。透明感高くデリカシーに富んだ弱音が聴ける

試聴では、このところ演奏と録音で気に入っているECMレーベルのアルバムを再生しました。トルド・グスタフセンによるジャズピアノトリオ「Being There」、ギドン・クレーメルによる「チャイコフスキー:ピアノ三重奏曲「偉大な芸術家の思い出」ほか」、そしてアンドラーシュ・シフによる「ブラームス:ピアノ協奏曲第1番、第2番」です。

まず、Serafino G2とブルメスターのパワーアンプ、216の組み合わせで、ピアノジャズトリオを再生した印象は、冒頭のピアノソロで、ごく僅かなピアノタッチやアクションの音までも、高解像度で聴けたことです。

これは素晴らしい解像度で、再生した直後、スタジオの空気感までも部屋に広がりました。まさにピアノ響板の響きを鮮明にし、一音一音にやや暖色系の柔らかみのある音色が聴けます。この響きには、実にデリカシーに富んだ弱音が伴い、生のピアノに近い印象を受けます。しかも決してドライな音ではなく、心に浸透するソナス伝統の透明な響きなのです。

ベースでは、弦を指で弾く質感を鮮明にし、胴の木質感をよく再現します。奏者の演奏動作をクローズアップしています。ドラムスも一音一音が豊かで、その余韻に微細な響きが聴け、強い打音は力感とスピードがあります。そしてシンバル。響きが消え入るところにも魅了されます。楽器の繊細さ、柔らかさ、そして力強さをよく再現し、その倍音を豊かに再現しています。

総じて言えることは、スピーカー・システムとして、S/N、解像度、3D的空間描写性を前述の技術の総合により、格段に向上させていることが理解できます。従って、ギドン・クレーメルのピアノ三重奏では、奏者の演奏の実在感を鮮明にし、ヴァイオリンやチェロでは、しなやかで厚みのある響きが聴けます。

中低域では、胴の響きに木質感を感じます。しかも、ジャズピアノトリオと同様に、その場で演奏されているかのような温度感とリアリティーを感じます。ブルメスター216は、完全DCアンプであるため、出力トランジスターがダイレクトにスピーカーをドライブするかのような、ピュアな音質を実現しているように思えます。

次にスケールの大きな「ブラームス:ピアノ協奏曲第1番」を再生しましたが、冒頭の力強いティンパニーの打音やチェロ、コントラバスなどの低音弦楽器に、リアルで深い重厚さを感じました。さらにブリュートナー・ピアノに濃厚な倍音を感じ、その響きの広がりやしっとりとした音色に、すっかり魅了されてしまいした。個人的には、さらに汚れなき静寂を際立てる立体的音楽と眼前に迫るリアリティを身につけたところにも感激しております。

次にAmati G5とブルメスター216を使用し、3つのディスクを再生しました。これはウーファーの口径とキャビネット容積が増えているので、空間が拡張され、奏者が大きく描写されます。ウーファーの効果により、低域も深く、高速レスポンスです。しかも、ダブルボイスコイルですから、タイトで反応が良く、ほんの僅かな低域の空気感や暗騒音までもクローズアップしてくれます。従って、空気感を伴った3次元的なリアルな演奏のさまを、さらに高解像度ワイドレンジで再生してくれます。

パワーアンプを218に変更すると、低域がさらに引き締まりスピード感も向上

最後にパワーアンプをスケールアップし、ブルメスター218に変更しました。すると、明らかに低域が引き締まり、中高域もスピード感が向上した印象を受けました。再生音源の重心が下がった印象です。これは単純にパワーアップされただけではなく、さらにダンピングファクターが高まったことにより、出力インピーダンスが下がった効果と推察されます。

このHomage Collectionは、新素材の振動板を投入することなく、ドライバーを静かに進化させ、最新のネットワーク回路を搭載しています。さらには、美しいリュート形状のキャビネットにまでも最新コンピューター測定技術を駆使し、最新技術を投入していることに感心させられます。しかしその音は、どこを切っても、ソナスの音なのです。

両モデルともに高価ですが、コレクションしてきたアルバムから、リアルかつ味わい深いテイストを堪能されたい方にとっては、かけがえのないスピーカー・システムとなることでしょう。

ぜひ一度、専門店で、その美しい姿と極上の音楽を堪能していただきたいと思うところです。