SIE(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)から、PlayStationブランドとして初の完全ワイヤレスイヤホン「PULSE Exploreワイヤレスイヤホン」が12月6日に発売される。

ソニーグループはソニーグループでも、PlayStationを取り扱うSIEが開発/販売するだけのことはあり、デザイン、スペックともに既存のソニーブランドのイヤホンと趣の異なる本モデル。今回、SIEから発売に先駆けて試聴機をお借りすることができたので、気になる使い勝手と音のインプレッションをお届けしたい。

■注目の2大要素:平面磁気ドライバーとPlayStation Link

まずは、PULSE Exploreで特に目を引くスペックをおさらいしよう。

目玉のひとつが、ドライバーユニットとして採用された「プレーナーマグネティックドライバー」だ。イヤホン/ヘッドホンファンにとっては、「平面磁気型」とか「平面駆動型」などと呼んだほうが通りが良いかも知れない。

平面磁気ドライバーについて知らない方へ手短に説明すると、大きな面積の振動板を全面ほぼ均一に動かせるため、歪みが少なく透明感のある音、深く迫力のある低音を再生しやすいなどの長所がある。その代わり、作るのに手間暇がかかり技術力も要るため、一部のブランドが高級イヤホン/ヘッドホンを中心に採用してきた。上手く使いこなすことができれば、優れた音質が期待できるドライバーという訳だ。

ソニーブランドのハイレゾヘッドホン/イヤホンもまだ採用したことがないこのプレーナーマグネティックドライバーを、SIEは初の完全ワイヤレスイヤホンでさっそく搭載した。同じソニーグループでも、オーディオ分野とは違ったアプローチで高音質を目指そうとする姿勢には、イヤホン愛好家の筆者としてはとても興味がそそられる。

加えてSIEは、PULSE Exploreの発表と前後して、平面磁気ドライバーのノウハウが豊富なオーディオブランド・Audezeを買収した。明言はされていないものの、PULSE ExploreのプレーナーマグネティックドライバーもAudezeのノウハウを活かして音質を磨き上げた可能性が高く、聴く前から期待が高まる。

周囲の騒音を抑えるアクティブノイズキャンセリング(ANC)については、非搭載。用途を屋内でのゲーム体験に絞っていることや、平面磁気ドライバーを搭載したことが影響しているのかも知れない。

もうひとつの目玉が、接続方式。PlayStationはじめデバイスとの接続方法は2種類あり、一方はUSB-Aドングル「PlayStation Link USBアダプター」を使用する独自の低遅延ワイヤレス接続PlayStation Link(以下、PS Link)、もう一方がBluetoothとなる。

特にPS Link接続は低遅延かつロスレス品質でオーディオ伝送ができるといい、ゲームのサウンドを音ズレや音質劣化なく楽しむには最適。PULSE Exploreにはアダプターが1つ付属しているが、アダプターを追加購入してペアリングしておけば、イヤホン側のボタン操作でスムーズにアダプターを繋ぎ変えられる。ゲーム機を複数持っていたり、PS5とPCの両方でPULSE Exploreを使いたい場合などは、2個め以降のアダプターの購入を検討してもいいかもしれない。

既存のソニー完全ワイヤレスイヤホンにはなかった機能のひとつとして、「独自ワイヤレス&Bluetoothの同時接続」を搭載している。これにより、PS Linkでゲームの音を聴きつつ、Bluetoothで繋いだスマートフォンからボイスチャットアプリの会話、ないしゲームの攻略情報や実況を聞く、ということが可能となっている。

通話用に内蔵するデュアルマイクは、AI技術を駆使したノイズリダクション機能を搭載。いまやテキストを打ち込むだけでなく音声でコミュニケーションを取ることが日常的なオンラインゲームでは、通話品質は高ければ高いほど快適だ。

バッテリー持ちは最長5時間で、ケース充電を含めれば最長約10時間。休憩をはさみつつゲームプレイするには十分な容量といえる。

■大柄なデザインに反して装着感は安定。既存のソニー製品とはまったく違う

PULSE Exploreは、PS5とも共通点のある曲線的なツートーンデザインを採用している。初めて見たときはいかにもトップヘビーで重みのある印象を受けたのだが、いざ装着してみると思いのほか耳にしっくりと収まり、少々驚いた。

ポイントは耳穴側の形状だ。ハウジング自体がイヤーピースのように耳穴の形状に合わせたカーブを描いており、先端に行くほど急激に細く、平たくなる。先端には小さなシリコンイヤーピースを取り付けて、耳の奥をピンポイントで塞ぐ。他のソニーブランドの完全ワイヤレスイヤホンとはまったく違う形状で、密閉感を確保するようになっている。

イヤホン本体は左右両方とも、上部に音量ボタン、下部にPS Linkボタンを備えている。PS Linkボタンはイヤホン本体の電源を入れたり、ペアリング済みの機器間を繋ぎ変えたりする場合に使用する。

■専用アダプターはペアリング済み。PCで使う場合はUSBハブに注意

PULSE Exploreの使い始めはとてもシンプル。PS Link接続する場合は、付属のアダプターをPS5やPCなどに繋ぎ、イヤホン本体をケースから取り出すだけ。アダプターとイヤホンは最初からペアリングされており、正常につながればイヤホンから効果音が流れ、アダプター内蔵のLEDが点灯する。PlayStationブランドの製品だけあってPS5との親和性は特に高く、画面上に左右イヤホンの接続状態やバッテリーの通知が出て分かりやすい。

Bluetoothで接続する場合は、ケースを開けてイヤホンを取り出す前に、ケースの中にあるボタンを8秒ほど押して、離す。ケース下部のLEDが青く点滅をはじめたら、接続したいデバイスのBluetoothペアリングメニューを開けば、「PULSE Explore」のデバイス名が表示されているはずだ。

なお、筆者がWindows PCにアダプターを挿して試そうとしたとき、USBハブを中継するとPS Link接続されないという事があった。Windowsの設定画面では認識されているのに、いくら待ってもアダプター - イヤホン間が繋がらず困ってしまったのだが、別のUSBハブに替えたとたんあっさり解決した。

その後、携帯ゲーム機のSteam Deckで試した際も同じようにPS Linkで繋がるハブ、繋がらないハブが存在した。もしPlayStation以外で使う際PS Linkでトラブルが起こったら、真っ先にアダプターを挿すUSBポートを替えてみると良いかも知れない。

Bluetoothコーデックはスペック表には記載されていないが、AndroidスマートフォンPixel 6で確認したところ、AAC/SBCをサポートしていた。ただ、筆者の設定が原因か、あるいはデバイスの相性や試聴機の仕様によるものか分からないが、Androidの設定でAACからSBCに切り替えると次第に音が途切れだし、最終的に片側からしか音が聴こえなくなった。このためBluetoothの音はAACで体験している。

■低音を気持ち多めに、全体的には明瞭な音質。音楽鑑賞でも十分活躍できる

PULSE Exploreの音質は、低音の量がやや多いかなと感じるものの、全体的にクッキリとした端正なバランス。特に、複数の音が重なっても、その一音一音を聴き分けてしまえそうな明瞭さ、大音量のフレーズに紛れてしまいそうな些細な音もひろい上げる細やかさについては、数ある完全ワイヤレスの中でも上位に数えて良いと思える。

この音質は、ゲームへの没入感を高めるという点では存分に効果を発揮する。メカアクションゲーム『ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON』でいうと、巨大なメカが金属の足場に着地したときの重たい金属音、手持ちの武器を発砲した際の炸裂音など、あらゆる音の響きがより生々しくなり、巨大人型メカを操っているという感覚を煽ってくれる。

音楽鑑賞についても、上述のとおり低音が多めではあるが十分以上に楽しめる。例えばWindows PCとのPS Link接続で、YOASOBIの「アイドル」を聴いてみると、まず出だしのオケヒからして分厚く、ド迫力。それでいて低音で他のパートが覆い隠される心配はなく、ボーカルikuraさんの歌声は口の動きさえイメージできるほど距離感近く、伴奏のシンセサイザーから背景を賑やかす手拍子、掛け声まで、意識すれば隅々まで聴き分けられそうだ。

Bluetooth接続でも音の特徴はおおむね同じだが、高音が伸び切らず掠れたような響きになったり、低音の主張が強くなったりと、圧縮されるがゆえの変化がある。少しでも高音質な音を楽しむならどちらかと尋ねられたら、PS Linkだと答えるだろう。

PULSE Exploreの3万円という価格は、ゲーミングヘッドセットとしてはおそらく高額もいいところだろう。しかし技術的には、10万円クラスのヘッドホンでも使われるようなプレーナーマグネティックドライバーをしっかり使いこなし、ゲームへの没入感を抜群に高める音質に仕上げている。価格帯の近いソニーブランドの他の完全ワイヤレスイヤホンとも聴き比べてみたくなる、個性ある一品だ。