サブスクで映画を観ることが当たり前となりつつある昨今、その豊富な作品数故に、一体何を観たら良いのか分からない。そんな風に感じたことが、あなたにもありませんか。本コラムでは、映画アドバイザーとして活躍するミヤザキタケルが水先案内人となり、選りすぐりの一本をあなたにお届け。今回は2007年公開の『歩いても 歩いても』をご紹介します!

『歩いても 歩いても』(2007年・日本)

(配信:Netflix / U-NEXT)

『万引き家族』『ベイビー・ブローカー』『怪物』など、国内外で高い評価を得る是枝裕和監督が2008年に発表したホームドラマ。夏の終わり。開業医だった父・恭平(原田芳雄)と母・とし子(樹木希林)が暮らす家に、妻と息子を連れて帰省する良多(阿部寛)。騒がしい姉家族も訪れ一家団欒の時を過ごしていくが、その日は15年前に亡くなった兄の命日であった…。

映し出されていくのは見ず知らずの家族の姿であるというのに、こうも引き込まれてしまうのは何故だろう。それは、劇中に登場する横山家の面々が繰り広げる人間模様を通して、自分自身の家族や、その関係性を想起させられるからに他ならない。両親との距離感、兄弟姉妹との距離感、親戚との距離感、血縁でない者との距離感など、絶妙な塩梅で描かれていく家族の“あたたかさ”と“煩わしさ”。そして、思い通りにはいかない人生と、過ぎ去っていく時間の儚さを思い知らされる。

15年前に他界した兄の存在はあるものの、近年の是枝監督作品と比べると、目を引くような衝撃的な設定があるわけでもなく、ごく普通の家族が過ごす夏の一日を描いた物語。けれど、それだけでも十分引き込まれるものが宿った良作です。そして、きっと家族に会いたくなると思います。

(C)2008「歩いても 歩いても」製作委員会

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ミヤザキタケル1986年生まれ、長野県出身。2015年より「映画アドバイザー」として活動を始める。 WOWOW・宝島社sweet・DOKUSOマガジンでの連載のほか、ラジオ・配信番組・雑誌などで映画を紹介。イベント登壇、MC、映画祭審査員、BRUTUS「30人のシネマコンシェルジュ」など幅広く活動中。