2019年は元徴用工訴訟問題の懸案から日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の終了まで、話題に事欠かなかった。そして2020年の今に元徴用工問題は再燃している。

そんななか、韓国経済に大ショックを及ぼす事態となったのが、2019年7月に日本が安全保障上を理由に韓国向けの半導体素材の輸出管理を強化したことに端を発した「日韓貿易紛争」であろう。

果たして、これが韓国および日本にどういった影響を及ぼすものなのか。渡邉哲也氏の著書『世界と日本経済大予測2020』(PHP研究所)より、韓国経済が直面するリスクと未来予測について述べる。

韓国経済の弱体化が著しい

2019年7月18日、韓国銀行(中央銀行)は政策金利を1.75%から1.50%へ電撃的に引き下げた。利下げは2016年6月以来、3年1カ月ぶり。これは景気減速に対する韓国の危機感を如実に示すものといえる。

2017年11月、2018年11月と基準金利を0.25%ずつ引き上げていたが、これは半導体メモリーが空前の好況で、国内経済も回復基調が続いていたことによる。

ところが2018年後半になると半導体市況が悪化。「アメリカの利下げを待って利下げを行なうのでは?」という見方があったが、電撃的に利下げを行なわざるをえなかった台所事情に、韓国の苦しさが現れている。

それだけではない。半導体市場で中国から追い上げられているという長期的な問題に加え、日本による輸出規制の強化によって打撃を受け、経済の弱体化が著しい状態になっているという背景がある。


理由1 ウォン安は臨界点に達した

近年の韓国経済を牽引してきたのは、紛れもなく半導体であった。

仮想通貨のマイニング等に用いられる集積回路などへの需要もあったことから、仮想通貨のバブルによって半導体は値を上げ続け、その恩恵を受けていた。

しかし、仮想通貨のバブル崩壊により、半導体価格が1年で5分の1に暴落。ほとんど収益が出ない状況になってしまった。

その結果、貿易収支が赤字に転じ、経済的な苦境を招いたのである。企業自体も内需が減退するなか、企業の資金ショートによる倒産のリスクが高まったことも重なり、利下げを行なったというのが真相である。

今後、もう一段の利下げをする可能性もある。ただ、これはアメリカの利下げと連動してやらないとウォン安が臨界点を超えてしまう可能性があり、そのあたりのさじ加減が非常に難しい。アメリカが利下げをすれば、韓国はそれに呼応して連動利下げという形をとる可能性が高い。


理由2 韓国企業が「武器」を封じられた

2019年、日韓関係において大きなトピックは、貿易管理の問題であった。7月には、日本が安全保障上の理由から半導体素材(フッ化水素等3品目)の輸出管理を強化。

8月28日の改正輸出貿易管理令の施行により、日本は韓国をホワイト国(輸出規制における優遇措置を取る国)から除外した。

正確にいえば、政令改正によって従来の「ホワイト国」「非ホワイト国」の2つのカテゴリーに分類していたものを廃止し、新たにABCDの4つのカテゴリーとしたのである。

新たなカテゴライズで韓国はグループBとなった。グループAが以前のホワイト国である。グループの中でも、輸出管理体制が比較的しっかりしている「ワッセナー・アレンジメント(WA)」という国際輸出管理レジームにある国ということで、いまのところ規制品目はかなり少ない。

もっとも韓国側の出方次第では、政令を改正してグループC以下に落とすことは容易に行なえる。どのグループに入れるかは、これからの韓国側の対応次第ということで韓国側にプレッシャーをかける貴重なカードとなったのである。

韓国側は当初、輸出管理強化の撤回を求めたが、当時の世耕弘成経産大臣(現参議院自民党幹事長)は7月12日に行なわれた韓国に対する日本側の輸出説明会(「輸出管理に関する事務的説明会」)の後、ツイッターで「韓国は一方的に『協議だった』『撤回要請した』と現場合意に反する発表を行った。まずはこの訂正が行われない限り、韓国とは信頼して対話すらも出来ない状況にある」(7月29日)と呟いている。

日本側の意思は固く、これまでのように日本が折れて話がまとまるという認識でいると、韓国側はさらに窮地に追い込まれることになる。

実際、7月24日に行なわれたWTO(世界貿易機関)一般理事会で、韓国側は日本の措置を「自由貿易からの逆行」と批判したものの、他国からの発言はなく、他の参加国が冷ややかに見ている様子が際立つ結果となった。