持続可能なツーリズムを実現する

――JTBがオフィシャル旅行サービスパートナーを務める東京2020オリンピック・パラリンピックの開催は不透明ですが、現時点(4月上旬)でどのような五輪になることを望みますか。

山北 コロナ禍における東京2020大会実現へ向けてのさまざまな努力、取り組みが続けられているなかで、開催の形式については、関係者の皆様がいろいろな検討を進めていることと思います。

2019年に日本で開催されたラグビーワールドカップは、国内外の人びとに喜びと感動を与えました。日本にとって普段は馴染みの薄い国とも、ラグビーというスポーツを通じて交流する機会にもなった。叶うならば、同じような体験を東京2020大会で多くの人たちと分かち合いたいですね。

――五輪後やコロナ収束後の中長期的な観光産業の再生についてはどう展望していますか。

山北 JTBとしては、ツーリズムの在り方そのものを進化させていきたい。人びとが交流の素晴らしさを永続的に楽しめるよう、国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)の考えに合致したツーリズムを実現していかなければならないと考えています。

環境に配慮し、異なる文化を尊重し合うサステナブルな旅行のかたちを模索していきます。

コロナ禍以前、世界の観光産業は大きな成長を遂げてきた一方で、現地のキャパシティ以上の観光客が押し寄せる「オーバーツーリズム」という課題が浮上しました。

日本でいえば京都、世界でいえばパリやバルセロナといった人気スポットに、どうしても人の流れが偏ってしまう。それは該当する観光地に大きな経済効果をもたらす半面、交通渋滞やゴミ投棄といった問題も引き起こしました。

現地に住む人が観光客を心から歓迎する環境を整備しなければならない。我々は、赴く側と迎える側の双方が満足できるツーリズムの在り方を模索していきます。

――観光は個人の幸福をもたらすと同時に、地方の魅力を再発見したり活性化したりする効果もありますね。

山北 そのとおりです。観光は、日本が直面する東京一極集中や過疎化といった課題の解決にも寄与します。人口減少による地域経済力の減退にともない、地場産業の力が弱っている自治体は少なくありません。

伝統工芸や文化が打撃を受ければ、地域のアイデンティティ自体が喪失してしまう。そうならないためには、地域の魅力を発信し続けること、地域外との交流によって国際競争力を高めていくことが不可欠です。

観光によって地方創生を実現する――。これこそが、コロナ禍を乗り越えたあとの日本の観光立国論なのかもしれません。