軍事的に見れば台湾海峡は、中国にとって越えることのできないレッドラインになっている。中国が台湾を自分たちのものだと主張する国際的な根拠はまったくない。このことを、日本政府をはじめ世界の政府がはっきりと明言しないのは、中国におもねっているだけでなく、アメリカの態度がいま一つはっきりしないからだ。

※本稿は、日高義樹著『バイデン大混乱――日本の戦略は』(かや書房)を一部抜粋・編集したものです。


バイデン政権は台湾を守るか

2021年、アメリカのバイデン政権の成立を好機として中国の習近平は、懸案になっている台湾占領を目標とする軍事行動を始めるものと予想される。

これはアメリカ海軍やアメリカ太平洋軍の情報担当者の分析によるもので、習近平はバイデン政権がこれまでのトランプ政権とは違って、台湾を守るために断固とした姿勢をとることはないと考えている。

こうした習近平の考え方、情報がある程度正しいと多くの人は考えているが、習近平の目論見が予期されたようにうまくいくとは限らないという見方も、アメリカの専門家のなかで有力になっている。

習近平が台湾に対する軍事行動に踏み切る最大の理由がジョー・バイデンにあることは、間違いがない。ジョー・バイデンが中国と深い関係を持ち、息子のハンター・バイデンが中国に買収されてしまっているのは紛れもない事実である。

そういった情勢のなか、習近平が懸案になっている台湾占領に動き出す。早ければ2021年中と推定されるが、習近平が台湾海峡を越えての大がかりな上陸作戦を練っていることはよく知られている。


東シナ海の占領、尖閣への介入の延長線上に……

習近平は中国の海軍力増強に力を入れている。東シナ海の占領や、尖閣列島に対する介入、そしてその延長線上として、台湾海峡を越えての台湾占領を目論んでいるからである。アメリカ国防総省の中国軍事体制分析レポートは、次の点を指摘している。

「これまで中国が台湾占領に踏み切れなかったのは、三つの問題があったからである。まず、強力な陸軍部隊を搭載する輸送船団が不足していた。二番目に、台湾海峡を越えて上陸作戦を行うための準備ないし訓練を十分に行ってこなかった。三番目に、アジア極東に展開する強力なアメリカ海軍に対抗する海軍能力を持ちえなかった」

アメリカ国防総省の専門家によれば、この三つの問題を解決するために習近平がとくに力を入れているのは、台湾海峡を押し渡って攻撃部隊を上陸させるという作戦である。

確かに1950年代、金門馬祖の戦いといわれる中国の台湾攻撃計画は、大量の陸軍部隊を送り込むという計画がなかったために失敗に終わってしまった。

現在の中国は、10隻以上の揚陸用舟艇や、さらに20隻近い強襲攻撃艦の建造を急ピッチで進めており、あと一年もすれば台湾海峡を越えての上陸作戦が可能になる。

中国はこういった上陸作戦を支援するため、すでに航空戦力の強化にも力を入れており、アメリカのF35に対抗するステルス攻撃機J10などの大量生産を始めている。

こうした動きは、懸案になってきた台湾への軍事行動を早急に実施しようという中国側の意図を明確に示している。アメリカ海軍の専門家は次のように述べている。

「軍事面だけを考えれば、中国は台湾海峡を越えての上陸作戦を行う戦力を保有するに至っている。そのための軍事訓練も行われている。軍事的に見てようやく、中国の台湾上陸作戦が可能な状況になっている」

こういったアメリカ軍上層部の考え方に対抗して、アメリカ太平洋軍などの第一線の専門家たちの考えは、やや異なっている。その理由は、台湾側がすでに最新鋭のディーゼル潜水艦などの大量生産に成功していることや、優秀な中短距離攻撃ミサイルを開発し実戦配備しているからである。