成毛 眞

ガムシャラに働いても報われない。かといって、今の仕事は辞められない。時代の目まぐるしい変化にもついていけなくなった。焦りを覚えるが、どうすればいいのかわからない――。ニッチもサッチもいかない現状に、行き詰まりを感じている40代は少なくない。そんな人こそ、今後の人生を自らデザインする必要があると指摘するのは、新著『定年まで待つな! 一生稼げる逆転のキャリア戦略』(PHPビジネス新書)を上梓する成毛眞氏である。日本マイクロソフト社長として活躍し、45歳で独立後、「人生は道楽」を信条に活動を続ける成毛眞氏。本連載では、40代が今後の人生を充実させるための戦略についてうかがっていく。

AIよりも「ゆとり世代」が脅威になる!

 企業の中枢を担う40代。どこも人手が不足する中、それを埋めるために、真面目に働く日々を送っている人は多いかと思います。しかし、今の職場で目の前の仕事に追われているだけでは、定年前に仕事を失い、路頭に迷うことになる……。そんな悲劇に見舞われる人が、たくさん出てくるでしょう。

 その理由として、最近よく指摘されるのが、AIの登場です。ホワイトカラーの仕事の大半は近い将来、AIに代替されるとされています。ただ、個人的にはここ10〜20年でAIがホワイトカラーの仕事を奪うまでにはいたらないと考えています。何でもかんでもAIに頼ったらコストに見合わないからです。

 とくに、中小企業の仕事がすべてAIに置き換えられることはないでしょう。

 もっとも、安心はできません。AIよりももっと脅威な存在が現れたからです。それは、これから入社してくる20代の新入社員です。メジャーリーグの大谷翔平、フィギュアスケートの羽生結弦、水泳の池江璃花子、将棋の藤井聡太……。近年、各界でまるで漫画のような活躍をする優れた日本人が次々と登場しています。

 彼らに共通するのは、1987〜2003年度の間に生まれた、「ゆとり教育」を受けた世代だということです。

 ゆとり教育は、「子供を甘やかすだけ」などとさんざん酷評され、ついに国も「脱ゆとり教育」を打ち出しました。しかし育った子供たちを見ると、屈託がなく、常識にとらわれずに物事を本質的に考えられる人が増えています。おそらく、教条主義的な義務教育にスポイルされていないためでしょう。それが、個性をのびのびと伸ばし、大谷選手をはじめとする天才を数多く生み出すことにつながっているのでしょう。

 これは、ビジネスでも同じことがいえると思います。今後、ゆとり教育を受けた世代の中から、常識にとらわれない柔軟な思考を持った人材が次々と登場することは間違いありません。すると、会社に入ったばかりの新入社員より、40代のほうが、仕事ができないということが珍しくなくなります。

 今の40代以上の人たちは、もはや若い世代の足を引っ張るだけになり、定年まで持たずに駆逐される人も続出するでしょう。

「スキルという幻想」に振り回される40代

 40代が、ゆとり世代に駆逐されないためには、何らかの手を打つ必要があります。

 そういうと、まず「資格さえあれば!」「とにかくスキルアップ」と考える人は多いでしょう。最近は、「人生100年時代を生き抜くために、社会人も『学び直し』が必要だ」とメディアで盛んにいわれています。安倍政権も社会人の学び直しの支援に力を入れるようです。

 しかし、私はいたずらに学び直す必要などないと思います。少なくとも、論理的思考やフレームワークといったいわゆるビジネススキルを学んでも、無意味。現場では役に立ちませんし、差別化にもつながりません。スキルなどというのは、世の中が作りあげた幻想に過ぎないのです。実は皆さんも薄々お気づきではありませんか?

 無意味な学び直しの最たるものが、国内MBAです。かつて私は国内のビジネススクールで教鞭をとっていましたが、講義後に希望する生徒と連れ立って飲みに行くと、「MBAなんて、あまり役に立たないよ」と伝えていました。戸惑っていた生徒も、何週間か後にまた飲みに行くと、「成毛さんの言う通りかもしれません。MBAをとれば、なんとかなると思っていましたけど、なんともならないですね」と言っていました。

 学生たちは数百万円の学費を払い、寝る間を削ってMBAに臨んでいますが、実は学位取得という知的趣味を楽しんでいるのです。