ミドル会社員が独立を真剣に考えたとき、相談するのは信頼できる会社の先輩、そして家族だろう。

ただ、彼らに強く反対されると、決意が揺らぐもの。ミドルの独立事情に詳しい前川孝雄氏は、「相談すべき相手を間違ってはいけない」とアドバイスする。

※本稿は、前川孝雄『50歳からの幸せな独立戦略』(PHPビジネス新書)の一部を再編集したものです。


会社の上司・先輩は独立に反対する

読者の中には、真剣に独立を考え、信頼できる上司や先輩、同期に相談した人もいるかもしれません。そんなときに返ってくる答えは、「せっかくウチのような安定した企業にいるのだから、独立なんてやめておいたほうがいい」というものではないでしょうか。

上司や先輩がそう話す理由はいくつかあるでしょう。

独立を都落ちのように考え、今の恵まれた居場所を捨てるべきではないと考えるケースもあるでしょうし、独立の失敗例を見てきて、そんなリスクは冒すべきではないと考えるケースもあるでしょう。また、今の職場であなたが必要だから辞めてほしくないというケースもあるかと思います。

いずれにせよ、上司や先輩は真剣にあなたのことを思ってアドバイスしてくれているはずです。信頼している相手からそのように言われれば、当然心に響きます。

そもそも自分の中にも会社を飛び出すことへの不安が大きいわけですから、独立の決意がよほど確固としたものでなければ、「やっぱりこの会社でもう少し頑張ってみよう」という結論に至ることが多いはずです。


経営者の先輩は独立をすすめる

では、あなたが、すでに独立している経営者の先輩に相談したらどうでしょうか。

私の実体験も踏まえて言えば、彼らの多くは独立をすすめてきます(あなたがよほど甘い考えを持っていたり、準備も覚悟も足りなければ、指摘はするでしょうが)。

私もサラリーマン時代にある先輩経営者に相談した際、「時間は有限だ。早く行動したほうがいい」という助言を実際に受けたことがあり、それが会社を飛び出す後押しになりました。

独立して成功した人たちは、たとえ収入が会社員時代より下がっていたとしても、独立という選択が自分にとっての正解であったという確信を持っていることが多いものです。

もちろん、会社の庇護なく自分の体を張って世間の荒波と戦う大変さはたっぷり語ってくれるでしょうが、それは転ばぬ先の杖として有難く聞いておくとよいでしょう。


独立経験のない先輩に相談をしても意味がない

同じように真摯に語られるアドバイスなのに、言っていることは正反対。仮に両方に相談したとしたら、混乱する人もいるかもしれませんね。

では、なぜこうも正反対のアドバイスが返ってくるのか。答えは簡単です。

「独立はやめておけ」と言う上司や先輩には独立した経験がありません。彼らが語るのは、企業で雇われて働き続ける人の論理なのです。人が誰かのキャリアに関して相談に乗るときは、自分が知っている範囲、信じている範囲のことでしかアドバイスはできません。

そもそも人は自分の生きてきた人生を肯定したいものです。また変化を拒む傾向もあります。相手のことを思って真摯に答えようとすればなおさらです。

しかし、あなたが何かのアドバイスを必要としているとき、その件に関して何の知見も経験もない人に話を聞くことは正しいでしょうか。

例えば、上手に魚を釣るにはどうすればいいかを知りたいときには、少なくとも釣りの経験がある人に話を聞くはずです。子どもの教育で頭を悩ませているなら、子どもを育てた経験がある人に話を聞くでしょう。

そう、独立した経験のない社内の上司・先輩・同期に、そもそも独立について相談をすることがお門違いなのです(不義理のないように報告はすべきでしょうが)。

一方、企業を飛び出して独立した経験がある人は、企業で働くことのメリット・デメリット、独立して働くことのメリット・デメリットの両方を知っています。

企業からの独立について相談するのであれば、このような経験者にこそ話を聞くべきでしょう。