ビジネス書を中心に1冊10分で読める本の要約をお届けしているサービス「flier(フライヤー)」。こちらで紹介している本の中から、特にワンランク上のビジネスパーソンを目指す方に読んでほしい一冊を、CEOの大賀康史がチョイスします。

今回、紹介するのは『職場学習論 新装版』(中原淳著、東京大学出版会)。この本がビジネスパーソンにとってどう重要なのか。何を学ぶべきなのか。詳細に解説する。


長いキャリアを一社に捧げるのは難しい

事業を発展させられるかどうかは人次第。優秀な人材を確保して育成する難しさは、あらゆる会社が抱える課題になっています。

2008年をピークに人口減少トレンドに入り、リーマンショック後の不況以来、有効求人倍率の全国平均はコロナ禍でも1を超えています。2020年の出生率は1.34となり、少子化傾向は継続しています。

会社経営の視点では、人材不足が長期化しているため、人材獲得の企業間競争が激しくなるばかりです。給与水準の高い一握りの大手企業や、急成長中のスタートアップを除いて、ほとんどの企業は十分な人材採用が行えていないという実態があります。優秀な人を採用する難易度は、これからも上がる一方だと予想されます。

働く個人の視点では、会社のライフサイクルは短くなったため、長いキャリアを一社に捧げるという生き方は難しくなっています。この環境下では、どうすれば長いキャリアをまっとうできる核となるスキルを身に付けて行くのかを、自分自身で考えなくてはなりません。

会社経営の視点でも個人のキャリアの視点でも、これからの時代を生き抜くには人数や長時間労働で解決するのではなく、継続的な能力向上が不可欠です。人材育成の領域でも様々な研究がなされていて、特に職場における学習に注目したのが、本書『職場学習論 新装版』です。

2010年に出版されたロングセラーの装丁を新たにした本書には、今も十分に通用する理論と提言が込められています。


職場における他者からの支援

研修のように仕事から離れて学ぶ機会が提供されるものもあります。一方で、最も長く時間を使っている仕事自体から学ぶことが一番多いということは、違和感なく受け止められるのではないでしょうか。

本書では、仕事における他者からの支援として、業務支援、内省支援、精神支援の3つが紹介されています。

最もわかりやすいのが、業務支援と言えるでしょう。業務を行うための、直接的で具体的な助言や指導のことです。エクセルやパワーポイントなどの業務ツールの使い方、報告書のフォーマットに合わせた記載方法や、会議での発言内容について、様々なアドバイスを受けること等が該当します。

成長のために、内省は欠かせないものと言えるでしょう。どのような行動でも、行っただけよりも、振り返る時間を持った方が将来に残る知見に昇華されやすいと考えられています。そのような内省を促す支援を内省支援と呼びます。

もう一つの精神支援も直観的にわかるものではないでしょうか。落ち込んでいるときやイライラしているときに、周りの人に話を聞いてもらうだけで随分と救われます。そのような心の支えとなる関わりのことを指しています。

これら3つの支援について、それぞれ誰からの支援が重要な役割を持つのかについて、見ていきましょう。