きれいな文章は心を揺さぶらない

「きれいに書かない」ということは、相手に行動を促すための文章を作るうえで重要なポイントです。

国語の教科書に出てくる随筆のような文章、文法に誤りがなく句読点の使い方も正確な間違いのない文章というのは、するすると読み進めることができます。それらが悪いわけではありません。

しかし、相手の心を動かすという意味では決定的な力が欠けています。それは感情に働きかける、感情を揺さぶるという力です。

書くべきなのは、表現が稚拙であろうと、言葉選びが洗練されていなくても、個人的な思いや背景が盛り込まれた文章です。そこに相手との共通体験などを盛り込み、読み手の心と文章を結びつけなければいけません。

贈り物に添える文章に必要なのは、当たり障りのない時候の挨拶ではなく、飲みながら交わした何気ない会話の続き、相手が関心を持っていた出来事の報告、以前、聞いていた家族の近況を問うひと言など、互いを結びつける言葉です。

これさえ入っていれば、その短い手紙はズドンと相手の心に刺さります。

例えば、便箋に

「冷え込む季節になりましたが、お元気にお過ごしでしょうか。
さて、この度は、田舎で有名な漬物をお贈りいたしました。
末筆ながら貴社の更なるご発展ご繁栄を心よりお祈り申し上げます。」

のような、「時候の挨拶」から始まるお礼状を綴つづり、贈り物に添えて送ったとしましょう。受け取った側の心に、その文章は残っているでしょうか。

いただいた品物については記憶に残っても、型通りの挨拶文は「添えてあったな」程度の印象しか与えません。

そこには送り手である、あなたらしさがなく、また、あなたと相手を結びつける言葉がないからです。

一例として、個人的に印象的だった贈り手の言葉を紹介します。

「これ、作家の佐藤優さんも使っているらしいよ」

これは、先日、仲の良い読書家の友人から「書見台」をプレゼントされたとき、添えられていたひと言です。

書見台は、本を開いたまま置いておき、参照しながら書き仕事などができる道具。

私は本が大好きで、日に何冊も読んでいます。それでも書見台はそれほど欲しいと思っていませんでした。

ところが、読書家として尊敬している人物が使っていると教えられた途端、俄然、いいものをもらったという気持ちになりました。

時候の挨拶や品物の紹介といった文章は一切なく、こちらの興味にズバリと刺さるたった1行が添えられていたことで、この友人とプレゼントのことは深く印象に残っています。 

このように、「きれいに書くこと」よりも、「相手の想像力を掻き立て」たり、「あなたと相手を結びつける言葉」を盛り込むことを心掛けてみると、みるみる文章の魅力がアップします。ぜひ、取り入れてみてください。