一人当たりの「労働生産性」でみると、中小企業の上位10%は大企業のそれを上回っているにも関わらず、平均をみると大企業に遠く及ばない。

その原因として、中小企業の現場をよく知る山元浩二氏は、中小企業には明確な経営戦略が存在しないことを指摘する。同氏が中小企業が生産性を高めるために欠かせない経営戦略について解説する。


中小企業が苦手な「経営計画」

中小企業にとって、生産性の向上は大きな課題です。「会社で働く人たち一人当たりがどれだけ利益を出したか」を数値化したものを労働生産性と言います。

中小企業の労働生産性の平均をみると、すべての業種で大企業を下回っており、この状況は何年も変わっていません。2021年の「中小企業白書」のデータでは、その差は約2倍となっています。

しかし、中小企業の労働生産性上位10%をみると、大企業の中央値を上回っていることがわかります。この差を生み出している要因の1つは、設備、IT化、人材といった将来への投資だと考えていいでしょう。

この成長、発展のための投資計画こそ「経営計画」であり、何にどれだけ投資していくのかを具体的に決めるのが「戦略」となります。戦略とは、いわば「1〜3年先の業績目標をもっとも効果的に達成するための打ち手」です。

会社が目指すビジョンを実現するために、これからどうするのか、どう動くのかを具体的に定めたもの、といえば分かりやすいでしょう。


結果だけを求めていても目標は達成できない

私はこれまで約20年にわたり、中小企業にコンサルティングを行ってきましたが、中小企業で戦略まできちんと明文化しているところはほどんどありませんでした。

一方、業績目標や数値目標は多くの中小企業が決めています。そして、目標が達成できなかった社員に対して、社長やリーダーが「なぜ達成できないんだ」と詰め寄る、というのがよくあるパターンです。原因や課題を共有し、指導やアドバイスを行うこともせず、結果だけを求めます。

これでは目標だけ数字で示し、あとは社員にお任せと言っているのと変わらないでしょう。その結果、目標達成度がバラついてしまい、その会社の目標達成は営業マンの力量任せということになります。何よりもこれでは人が育ちません。

このように数値目標だけはあり、戦略がなく、社員任せになっている組織運営が、中小企業の労働生産性の低さに影響を及ぼしていると言えます。これこそが、生産性が低いという悩みを抱えた中小企業が陥りやすい勘違いです。