Case2.辞めるなら直接言ってよ!退職代行を使う若手

【オトナのイラモヤ】
「退職代行サービスの〇〇です。おたくの部署の△△君、辞めたいと言ってますので、退職手続きをよろしくお願いします」。いきなりの電話だった。え?退職代行って?電話を切ってちょっとした後、ものすごい怒りが湧いてきた。突然辞めるのもどうかと思うけど、辞めるなら辞めるって、せめて自分で言ってきてよ!

【若手社員のホンネ】
前から辞めたいって思ってたんですけど、辞めるって言うと、絶対、引き留められますよね。だから、なかなか言い出せなくて。ググってみたら、退職代行ってのが、めちゃくちゃいっぱい並んでて。5万で辞めるって言ってくれるって、下手に長引くことを考えたら、全然コスパいいっす。

最近の若者は突然辞める。この現象については前項の「昨日の面談では元気だったのに...」の項でもお伝えしました。

先述の通り、最近の若者が突然辞めるのは(あるいは突然辞めるように見えるのは)、彼らの「辞めることに抵抗はない」ものの「辞めると言い出すことに抵抗がある」という価値観によるところが大きく影響しています。

終身雇用が崩壊しつつある今、今どきの若手は一企業でずっと働く気は毛頭ありません。だからオトナ世代と比べ「辞める重み」が違います。また、育ってきた環境やオンラインコミュニケーションの発達も相まって、打たれ弱くなっています。軋轢が生じるであろうというリアルなコミュニケーションがすこぶる苦手なのです。

こうした若手社員の価値観を反映して一気に広がったのが、「退職代行」なるサービスです。文字通り、退職の意向を本人に代わって会社に伝えるサービス。5万円から10万円くらいで、会社に電話してくれます。

辞めたい。しかし辞めるって、手続きとかどうすれば?とりあえず「退職手続き めんどくさい」といったワードを検索窓に打ち込んでみる。そうすると退職代行なるサービスの紹介記事が出てくる。退職代行ってなんだ?と思いつつ「退職代行」と打ちこむ。すると、検索結果一覧にはズラリと退職代行サービスが並んでいます。

このように、会社を辞めたいという人の助け舟的な存在として、このサービスの利用が急速に増えているのです。

筆者が主宰するツナグ働き方研究所では、退職代行に関する調査を行いました。

20代のビジネスパーソンを対象に、「もし会社を辞めたくなったときに退職代行を利用したいですか?」と聞いたところ、利用したいとの回答は35.9%に上りました。しかも男性の利用意向は、なんと47.5%。今まで同じ職場で働いていた上司や先輩にとっては、なんとも残念な結果です。

実際に知人が経営する会社にも、退職代行と名乗る業者から電話がかかってきました。まさに狐につままれたような感覚だったと言います。本人ではなく業者の口から告げられたことに大きなショックを受けていました。

そりゃそうですよね。期待していた人材が退職するのもキツいけど、それならそれで、せめて本人の口から辞めると言ってきてほしい。それくらいは人としての礼儀じゃないか。

こう考えるオトナ世代の気持ちに、筆者も完全に同意します。

 

<解決のヒント>SOSサインを見逃さない

前項では、本質的なイラモヤ解消法についてお伝えしたので、ここでは、具体的なコツとして、「辞めそうな人のサイン」についてご紹介します。

(1)挨拶をしなくなった 
(2)上司や同僚からの評判を意識しなくなる
(3)覇気がない 
(4)急な早退や休みを申し出る 
(5)会議などで意見を発言しなくなる 
(6)服装や髪型がいつもと違う 
(7)自席にいる時間が増える 
(8)仕事後の付き合いをしなくなる 

これらが、一般的に言われる辞めそうな人のサインです。特に若者のSOSは微弱ですから、できるだけアンテナを張っておいてください。


【プロフィール】
平賀充記(ひらが あつのり :組織コミュニケーション研究家。人材コンサルタント)

同志社大学卒業。1988年、株式会社リクルートに入社。人事部門で新卒採用を担当。NY駐在員などを経て「FromA」「タウンワーク」「とらばーゆ」などの編集長を歴任。2008年からは主要求人媒体統括編集長を務め、日本における求人メディア隆盛の一端を担う。2012年、リクルート分社化で株式会社リクルートジョブズ メディアプロデュース統括部門担当執行役員に就任。2014年に同社を退職、株式会社ツナグ・ソリューションズ(現ツナググループ・ホールディングス)取締役に就任。2015年には、ダイバーシティワーカーに関するシンクタンク「ツナグ働き方研究所」を設立、所長に就任。

専門分野は人材採用、人材開発、組織開発など。人材領域を幅広く網羅した知見を持つ。「東洋経済オンライン」「読売新聞オンライン」など寄稿多数。著書に『非正規って言うな!』(クロスメディア・パブリッシング)、『神採用メソッド』(かんき出版)、『なぜ最近の若者は突然辞めるのか』(アスコム)などがある。