アメリカの名門・ハーバード大卒の芸人であるパトリック・ハーラン氏。その資産運用術も数字や理論を駆使し、さぞかしクレバーなモノかと思いきや、基本は決まった金融商品を買い、ほったらかしにしているという。浪費を防ぐユニークかつ、実践的な考え方と共に、資産運用のコツをうかがった。(取材・構成:辻由美子 )

※本稿は、『THE21』2022年9月号特集「普通のサラリーマンが60歳までに『お金の自由』を手に入れる方法」より、内容を一部抜粋・編集したものです。

※本稿は2022年7月時点の情報に基づき、投資に対する考え方を示したものであり、個別の金融商品を推奨するものではありません。金融商品の価値は状況によって変動しますので、購入の可否を含む投資の判断はご自身の責任で行うようお願いいたします。


やめるべき「バカな借金」、 やるべき「頭がいい借金」

――パトリックさんは投資歴25年のベテランとお聞きしました。投資を始めるきっかけは何でしたか?

【パトリック】僕はシングルマザーの比較的貧しい家庭で育ったので、ハーバード大学へ奨学金をもらっていきました。卒業したあと、必死で働き、2年で数百万円の奨学金を全額返しました。投資を始めたのは、奨学金を返済し終えた翌月からです。

アメリカでは投資をするのは当たり前だったので、子どもの頃から投資をするのが憧れだったんです。

――2年で数百万円の奨学金を返済したとは驚きです。

【パトリック】借金している状態はすごく落ち着かない気持ちでしたから。でも借金がすべてダメといっているわけではありませんよ。借金には「頭がいい借金とバカな借金」があるんです。ご存じですか?

頭がいい借金は、金利7%以下で借りられるもの。住宅ローンや自動車ローンはその代表です。反対にバカな借金は金利7%以上のもの。クレジットカードの借金なんて、12〜17%です。そんな金利で借りるなんて、Oh My God!(笑)。

――金利7%以下ならよい?

【パトリック】アメリカのインデックスファンド(特定の株価指数と連動するように作られた投資信託)で、代表的な指標であるS&P 500に連動するものを買うと、平均で年間7〜8%の利回りで動くと言われています。

だから金利7%以下の借金なら、S&Pに投資してもプラスになる。でも金利15%で借金をしたら、投資をしても赤字です。そういうバカな借金をしてしまったら、1日でも早く返すべきですね。

――パトリックさんは「頭のいい借金」をしていらっしゃいますか?

【パトリック】僕は地価が上がると見込まれる地域に、住宅ローンを借りて一軒家を買いました。ローンは変動金利で35年。

今は0%台の低い金利なので、変動金利が極端に上がらない限り、35年を目一杯使って、低金利で住宅ローンを返そうと思っています。でも余計な借金はしない。つまり、金利が低くても、お金を借りて「いらないもの」は絶対に買いません。

――奨学金は2年で完済されましたが、住宅ローンは繰り上げ返済しないのでしょうか。

【パトリック】住宅ローンについては家賃代わりにローンを返し、繰り上げ返済できるお金を他の投資に回したほうが得だと考えています。


インデックスファンド80%と債券15%でリスクヘッジ

――パトリックさんの投資ポートフォリオを教えてください。

【パトリック】僕はほとんどを株式のインデックスファンドに投資しています。割合で言えば80〜85%が株式のインデックスファンド。残り15%は債券ファンドで、5%がリート(多くの投資家から集めた資金で、不動産などを購入し、その賃貸収入や売買益を投資家に分配する商品)です。

――8割以上を株式のインデックスファンドにしている理由は?

【パトリック】株式のインデックスファンドなら日経平均やダウ平均に連動しているので、長期で見れば安定しています。僕の投資スタンスは超保守的。投資の世界ではプロ中のプロでも負けるわけですから、謙虚にインデックス一本に絞っています。

――債券を組み込んでいるのはなぜなのでしょうか。

【パトリック】株式のインデックスファンドは安定しているとはいえ、株ですから債券と比べればリスクが高めです。債券は利回りが低めですがリスクも低い。いざというときのために、より安全な債券を買っているわけです。

――金融商品はどんなものをお持ちですか。

【パトリック】ETF(上場投資信託)や投資信託が中心です。それから投資対象地域も分散させています。ヨーロッパ、アメリカ、日本、中国など。通貨もドル、ユーロ、円、元で持っています。

――このポートフォリオを微調整することはありますか。

【パトリック】面倒くさいので微調整はしません。毎月インデックスファンドのS&P500に自動的にお金を入れて、あとはほったらかしですね。ただ自分に余力と気力があって、色々と調べられるときは、社会貢献度の高いものに投資することもあります。

最近だと脱炭素の投資を促進するグリーンファンドや世界の中小企業を支援するスモールキャップファンド(中堅・中小企業の株を扱っている)などですね。

――なぜ、インデックスファンドのS&P500なのでしょう?

【パトリック】S&P500はアメリカの代表的な企業500社の株価指数です。業績が悪化した企業は500社から外されるので、常に勝ち組の企業しか残りません。いわば勝ち組の社会クラブに投資し続けるようなもの。安定的で堅いですよね。


低リスクから土台を作るお勧め「投資ピラミッド」

――個別株は買わないのですか?

【パトリック】投資をし始めた頃、個別株を買って大やけどをしたことがあるんです。スタンフォード大を出た友人の一人が、IT株で大儲けしていたんです。うらやましいなと思って、僕も色々買いました。

ところが1999年にITバブルが崩壊。ビビって全部売ってしまったんです。その友人に株価が大きく下がってしまったことを半ばなじるように報告したところ、「まだ売ってなかったの?」と言われました(笑)。友人は利益が出たところでとっくに売ってしまっていたんですね。

専業の投資家は一般投資家とはけた違いに情報を持っていますし、センスがある人もいる。この出来事で、自分だって個別株で儲けられると傲慢になるよりも、投資に関して僕はあくまで堅実に、謙虚でありたいと思いました。それによく考えると株の取引って裏があると思いません?

――裏、ですか?

【パトリック】僕がA社の株を買おうとするとき、誰かがA社の株を売ろうとしているわけです。なぜ売るんですかね? あるいは僕がA社の株を売る。喜んで買う誰かがいるわけです。

なぜ買うのか?「へえ、あなた、この株、売るんですか。これから上がるのに」とほくそ笑んでいる人がいるんじゃないかなって、考えてしまうんですよね(笑)。

――なるほど。

【パトリック】投資の神様と言われるウォーレン・バフェットすらインデックスファンドへの投資を勧めていますからね。僕の投資に対する考え方は非常に堅実です。ピラミッドで説明すると、投資をするには、まず収入と健康が大前提。ここをしっかり固めないと投資はできません。

――ピラミッドの土台ですね。

【パトリック】はい。そのうえで、リスクの低い債券を買う。基盤ができたら株式のインデックスファンドを買って資産を増やし、最後に余剰金を使って、遊びで少しだけ個別株を買ってもいいかな、という考え方です。要するにリスクごとにピラミッド型になっているわけです。

ただしこれは僕の考え方なので、すべての方にパックン流の投資が当てはまるとは考えないでくださいね。