今、世界的に注目を集めている「パーパス経営」。日本でもすでに先進的な企業はパーパスを中心とした経営を進めているという。しかし、それは単なる「お題目」であってはならない。血の通ったパーパスとはどういったものなのか、具体的な事例を挙げながら解説する。

※本稿は、『THE21』2022年10月号に掲載された「志本主義時代のリーダー論」より、内容を一部抜粋・編集したものです。


「KANDO」で異次元の成長を遂げたソニー

行き過ぎた資本主義が全世界的に見直されつつあり、その結果として「志」を原点に据えた「パーパス経営」が求められるようになっている。そして、パーパスとはいわば、「志」であり、それは日本および日本の企業がもともと大切にしてきたものに他ならない。

しかし、日本ではいまだに多くの企業が行きすぎた資本主義、すなわち利益至上主義から抜け出すことができていない。そして、それが現代のビジネスパーソンが抱えている閉塞感につながっているのだが、

一方で、世にリーディングカンパニーと呼ばれるような企業では、このパーパス経営──私の言葉では「志本主義」経営──をすでに実行しているところも増えている。

今回はそうしたケースを取り上げつつ、パーパスとはどういったものであるか、なぜそれが大事なのかについて、詳しく見ていくことにしたい。

行きすぎた資本主義経営を見直し、いち早くパーパスの重要性に気づいた企業がある。それがソニーだ。

2012年、業績の悪化に苦しむ中で社長に就任した平井一夫氏が掲げたパーパスは「KANDO」(感動)。就任直後、劇的なV字回復を果たしたのち、ソニーをさらに元気な企業にしたいと考えた。

多くの社員たちから話を聞いた平井氏は、ソニーの原点は「WOW」という言葉にあると改めて気づいたという。人々が「WOW」と驚いたり感動したりする製品を生み出すことこそが、ソニーの原点だということだ。

そして、後を継いだ現・吉田憲一郎社長は、就任から8カ月後に、「クリエイティビティとテクノロジーの力で世界を感動(KANDO)で満たす」を、自社のパーパスとして掲げた。

数々の事業体を持つソニーを「感動を届ける会社」として定義し直したことで、一致団結させることに成功。ソニーはその後、異次元の成長を果たすこととなる。

同様に日本語をうまく用いているのが花王だ。その言葉とは「Kirei」(キレイ)。「Kirei Lifestyle」を「こころ豊かに暮らすこと」と定義し、そのための革新と創造に挑み続けることを自社のパーパスとして宣言している。

キレイという言葉にはビューティフルという意味に加え、クリーンという意味もある。非常に多様性のある言葉であると共に、誰にとってもイメージしやすい。大企業をまとめるにふさわしいパーパスだろう。


ユニクロが定義する「LifeWear」とは?

非常に壮大なパーパスを掲げているのがユニクロを展開するファーストリテイリングだ。同社のパーパスは、「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」である。

そして、それを象徴するのが「LifeWear」という概念だ。社長の柳井正氏は、なぜ服が世界を変えていくのかについて、服が人類の歴史の中でどのような役割を担ってきたかを考えるべきだと説く。

大昔には、服は身体を守るためのものであった。それが、時代を経るに従って自分を良く見せるためのもの、着飾るためのものになっていった。ファストファッションなどはその象徴だ。

だが、トレンドに振り回されることは本当に人間らしいのか。その先にあるのは、自分らしいスタイルを見つけて快適に過ごすことではないか。それを実現するものこそが「本当に良い服」であり、それをファーストリテイリングでは「LifeWear」と呼ぶ。いわば「究極の普段着」だ。

この志があればこそ、ファーストリテイリングはあれだけ事業が拡大しても、ぶれずに進むことができているのだ。