山中俊之(やまなか・としゆき)氏は、外交官からキャリアが始まり、いくつかの職を経験されたあと、現在は株式会社グローバルダイナミクス代表取締役社長であり、神戸情報大学院大学教授でもあります。

「世界と日本」の歴史や文化について造詣は深く、主に世界に通用する人材を育てることを使命と考えています。少しでも多くの日本人に国際的に通用する教養を身につけて欲しい。そのためには日本史をいかに世界の人たちに伝えるかが重要だと考え、『世界96カ国をまわった元外交官が教える 外国人にささる日本史12のツボ』を上梓しました。

本稿では、作家エージェントでかつ自身も『花戦さ』などのヒット作品の著者でもある鬼塚忠さんが、山中さんに「外国人にささる日本史」を聞きました。


日本人は戦国、幕末が好きだが、外国人にとっては…

(鬼塚)今日はお越し頂きありがとうございました。山中さんは元外交官でエジプト、英国、サウジアラビアに赴任し、世界から日本を見てきましたよね。

世界の有識者の方々の日本史への興味の持ち方は、私たち日本人が持つ日本史への興味の持ち方と違うということですが、どこがどう違うのですか?

(山中)今日はお招きいただきありがとうございました。海外の視点で日本を見ると、日本の文化には日本人が思いもよらぬような驚くべき点があります。

日本人は、大河ドラマの題材でも分かるように、戦国時代や幕末維新の時代に興味があります。ところが外国人にとっては、戦国時代は単なる権力闘争の時代に過ぎず、世界のどこにでも転がっているような話です。

今年の大河ドラマのクライマックスにある本能寺の変も、世界のどこにでもあるような主君への裏切りにすぎない。むしろその手の話は世界の方がはるかに迫力あるのです。

幕末維新も、日本の近代化の契機になったという点では関心はありますが、寺田屋事件、薩長同盟などの個別の事象や、坂本龍馬、西郷隆盛などの登場人物についてはさほど関心がありません。


海外から驚かれる「天皇制」

(鬼塚)戦国時代と幕末維新はさほど興味がない。言われてみればそうです。山中さんは世界の国際会議や社交の場で有識者と頻繁に交流をされているという話ですが、では、彼らはどんなことに興味があるのでしょうか?

(山中)海外の方々に刺さるテーマは5つあります。

1つめは、外国人から見て唯一の日本の歴史と文化です。

例えば、太古の時代から現在まで継続している天皇制です。世界のどこを見渡しても同一の家系で少なくとも約1500年にわたり続く王族や皇室はありません。日本の皇族の歴史は世界で案外知られていないことであり、話すとみな興味を持ちます。

2つめは、日本が時代ごとに世界最高レベルを誇った歴史です。

外国人のほとんどは、日本が世界の経済大国になった理由に興味があります。日本が20世紀に経済大国として台頭する以前、近代以降で経済的に発展した国はすべて欧米諸国でした。

なぜそのなかに日本が割り込めたのか、ここに興味を示します。ここで、その戦後の日本が復興した期間だけを語るのではなく、江戸時代の教育や社会制度まで遡って説明したり、さらに禅思想との関係に言及したりすると外国人は目を見開いて聞いてくれます。

3つめは世界史に置ける日本の位置づけです。

知日派の外国人は日本の歴史を単体的には知っています。しかし、アジアとの関係性から語る日本の歴史はあまり知りません。

日本は古代より、中国や朝鮮半島から文化の影響を受け、積極的に学んできました。多くの渡来人が活躍した日本の古代は、多様な文化のるつぼとも言えるのです。そしてその文化を日本風にアレンジして新しいものを創ってきたのです。

日本と東アジアなどの他国との関係から日本史を語ることが出来れば、外国人から見るとそれだけで新たな視点を与えることになり、一目置かれます。また、キリスト教の欧州から日本への伝播やその後の広がりと潜伏キリシタンの話は関心を持って聞いてもらえるでしょう。