疲れを残さない睡眠には、寝る直前に副交感神経の働きを高める「入眠儀式」が欠かせない。しかし実際には、多くの人が寝る直前までスマホをいじるなど交感神経を刺激しているのではないだろうか。

そこで、人体の解析力学と東洋医学を織り交ぜた治療をし、身体の仕組みを熟知している鍼灸師の竹田竜太氏に、寝る準備の整え方についてうかがった。(取材構成:野牧峻)


深い眠りを手に入れるには、寝る直前に心拍数を落とせ!

寝つけない、夜中に目が覚めたまま寝られない――。こうした悩みを抱える人が後を絶たない原因は、交感神経のスイッチを切るタイミングを失っているからだと考えられます。交感神経が優位な「仕事モード」のまま寝床に入り、睡眠の質を落としているのです。

お勧めなのは、徐々に身体を「寝る体勢」へと切り替えていくこと。人の身体は「今から寝よう」と思っても、意志の力だけでは寝られるようにできていません。

そこで重要なのが、入眠儀式です。身体を動かす交感神経優位の状態から、身体を休ませる副交感神経優位の状態へと、少しずつ移行していきます。

ポイントは「呼吸」です。呼吸は、自律神経にアクセスでき、整えることができる唯一の手段なのです。

身体は、交感神経のほうが優位のときに心拍数が高くなり、呼吸が早くなります。一方で、副交感神経が優位のとき、心拍数が落ちて気道が狭くなります。

逆もまた然り。心拍数が自律神経に影響を与えます。つまり、「心拍を下げること」で副交感神経を優位にするのです。

上記には心拍数を下げることにフォーカスした「4つの睡眠習慣」を紹介しました。打席に立つ前のイチロー選手が、ルーティンで集中力を高めていたように、入眠儀式をルーティン化して睡眠力を高めましょう。

ただし、睡眠の質が高まったからといって、睡眠時間を削っていいわけではありません。とても忙しいことで有名な実業家の堀江貴文氏ですら、職場の机の下を寝床にして8時間の睡眠時間を確保したというエピソードがあります。それほど、睡眠は大切なのです。仕事のできる人ほど、睡眠を大切にしているという証拠でしょう。

それでも、寝る直前までストレスを解消するために何かしたい人もいるはず。スマホをいじりたい方なら、せめて寝る直前に睡眠アプリを起動し、「これから睡眠の態勢に入ること」を身体に染み込ませてください。寝酒を止められない人は、香りを楽しむ高級酒を少し舐める程度で、せめて寝る前の多量のアルコール摂取を避けましょう。

疲れを残さない休息を取るのも仕事。そう考えて、睡眠の質の向上に取り組んでください。