「たかが口の中のこと」と甘く見るのは危険です。口腔ケアを怠ると、歯周病はもちろんですが、がんや認知症、さらには新型コロナウイルス感染など、様々な病気のリスクが高まるのです。正しい口腔ケアとは、どんなものなのでしょう。

※本稿は、『PHP』2021年10月号より、内容を一部抜粋・編集したものです。


歯の健康が多くの病の予防につながる

最後に歯医者さんに行ったのはいつですか? 3カ月以内なら合格、半年以内でも何とか及第点ですが、それ以上の期間行っていない人、あるいは「虫歯もないし痛くもないから、もう何年も行っていない」という人は、認識を改めましょう。

歯医者さんは「痛くなったら行くところ」ではありません。口の中の環境を整えるために行く医療機関なのです。もちろん、虫歯や歯周病などの口腔疾患の治療も行ないますが、現代の歯医者さんの役割は、「治療」よりも「予防」の比重が大きいことを、まず知っておきましょう

ここでいう「予防」とは、虫歯や歯周病の予防だけに留まりません。口の中の衛生状態、つまり「口腔環境」を良好に保つことで予防できる病気は多岐にわたります。誤嚥性肺炎、心臓病などの血管病変(動脈硬化)、糖尿病、さらには認知症や、新型コロナウイルス等の感染症の予防にも役立つことがわかっています。

予防のために歯医者さんに行くことを「定期歯科健診」と呼びます。日本人は「予防」や「健診」というと軽く考えがちですが、それは健康保険制度によって、安い費用で高度な治療が受けられるという安心感があるから。

でも、日本の医療費は高騰を続けていて、このままではいずれ破綻しかねません。そうならないために、「病気になってから治す」のではなく、「病気にならない取り組み」に力を入れるべきなのです。


口の中を清潔にし、ウイルスの侵入を防ごう

新型コロナウイルスに限らず、ウイルスや細菌が体内に侵入してくる最大の経路は「口(口腔)」です。新型コロナウイルスであれば、口腔からのど、気道を経て肺に到達して肺炎を引き起こすのです。口腔の表面は粘膜で覆われています。粘膜には「粘膜抵抗性」という防御機構があり、口腔内にウイルスが入ってきても感染を防いでくれます。

ところが口腔内の病気、特に歯周病になると、歯周病菌が出す毒素が粘膜にダメージを与え、抵抗性を低下させます。その結果、ウイルス感染症のリスクを高めてしまうのです。

歯周病を防ぐには、定期歯科健診をきちんと受けて、歯周病の予防と治療を実践する以外に手はありません。どんなにセルフケアに力を入れていても、それだけで歯周病を防ぐことは不可能なのです。