健康のためを考えるなら、過度なダイエットは禁物。自分に必要な栄養素を確認して、正しい食事をとることで健康な体が作られる。地域在宅医療・介護の現場で、「高齢者の栄養管理」の最前線に立つ塩野﨑氏が、手間をかけずに栄養バランスの整った食事をとるコツを伝える。

※本稿は、塩野﨑淳子・著(若林秀隆・監修)『70歳からは超シンプル調理で「栄養がとれる」食事に変える!』(すばる舎)より、内容を一部抜粋・編集したものです。


ダイエット中でも「必要な栄養は確保」が鉄則

テレビの宣伝や雑誌広告で、「2週間で体重がマイナス10㎏減少」などといった、うたい文句の健康食品やダイエット食品を目にすることはありませんか。

太っている方からすると、「そんなに短期間で体重が減るならやってみたい」と思うことでしょう。しかし、こういったダイエットでは、都合よく「体脂肪だけが減る」というわけではありません。

体重は、体脂肪と体脂肪以外(除脂肪体重)の合計ですが、ダイエットをすると体脂肪以外の水分や筋肉も失われてしまうのです。

健康診断で「メタボ」を指摘され、生活習慣病の予防や悪化防止のためにダイエットを指導された方は少なくないと思います。「ダイエットをしたら、血圧や血液検査のデータが改善した」という経験をお持ちの方もいらっしゃることでしょう。

高度な肥満になっている方のダイエットは、病気の予防の観点から大変重要です。国は、特定保健指導に多額の予算をつけて、「現役世代」の体重適正化を呼びかけています。

ある研究では、生活習慣の指導を行った人のうち、6ヵ月後に3%以上の体重減少があった方は、健診のすべての項目で検査結果が改善したという報告があります(※)。

太っている人でも、標準体重までダイエットせず数値が改善する可能性があるので、無理に標準体重まで痩せようとしなくてもいいのです。

「日本人の食事摂取基準2020年版」(厚生労働省)で、総死亡率がもっとも低かったBMIの範囲が紹介されていますが、65歳以上では22.5〜27.4でした。BMIが27というと、身長150㎝の方なら体重は約61㎏、170㎝の方なら約78㎏です。

高齢者の場合は、少しぽっちゃり気味の人の方が、どうやら長生きしているということがわかりました。

しかし、高度の肥満で生活習慣病があった方の場合、もしかすると高齢になる前に心疾患や脳卒中などで亡くなっているのかもしれません。安易に「太っていても大丈夫」とは言い切れないのが難しいところです。

重い体重を支えるために膝が痛み、外出が困難で活動量が低下するのも、「肥満」の二次的な問題です。

もしダイエットをする場合には、必要な栄養を確保したうえで、筋肉が落ちないようにトレーニングしながら、ゆっくりと体重を落としていくことが大切です。

※Muramoto A,et al.Three percent weight reduction is the minimum requirement to improve health hazards in obese and overweight people in Japan Obes Res Clin Pract Sep-Oct 2014;8(5):e466-75


「亜鉛」の不足が病気のリスクを高める

「亜鉛」は、バランスよく食べていないと必要な量を摂取することが難しい栄養素です。

令和元年の国民健康・栄養調査結果によると、75歳以上の1日の亜鉛摂取量は7.5㎎でした。推定平均必要量は9㎎、推奨量は10㎎ですから、やや不足していることがわかります。

亜鉛は体内に2g程度しか存在しませんが、微量ながら体内でさまざまな酵素やホルモンの原料になっています。

慢性的に不足すると、皮膚炎、味覚障害、免疫機能障害などが起こるリスクが高まります。

亜鉛は牡蠣などの貝類に多く含まれています。牡蠣のオイル漬けなども便利で、野菜と炒めたり、ごはんに炊き込んだりして、一年を通して美味しく食べることができます。

亜鉛はほかに、赤身肉や豆類などに豊富で、少し意外かもしれませんが、あんこやきなこ、純ココアにも含まれています。

かつて日本人の食卓には、あさりやしじみなどの貝類がよく登場し、おやつにはおはぎやお団子などをよく食べていました。

食生活の欧米化によって、これらの食品を食べる機会も減っているのではないかと思います。

季節ごとの旬の豆や貝類を食生活に取り入れて、あんこやきなこをたっぷり使った和菓子を楽しむのも、亜鉛の摂取につながるのではないでしょうか。