脳の前頭葉は「意欲・感情、思考、クリエイティビティ」を司る重要な存在。前頭葉の老化を防ぐことが、心身の老化を食い止めることにつながります。では何に気を付ければ老化を防ぐことができるのでしょうか? 老年精神医学の専門家である和田秀樹氏が教えます。

※本稿は『医者が教える50代からはじめる老けない人の「脳の習慣」』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を一部抜粋・編集したものです。


前頭葉の老化を防ぐには?

「気が若い人は、見た目も体もいきいきしている」─とは、多くの人が認めるところでしょう。この「気」とは「気持ち」のこと。

それはまた「感情」と言い換えることもできますし、さらにそれらは「意欲」や「思考」、それに「創造性(クリエイティビティ)」にもおのずと現れてくるものです。

これら「意欲・感情、思考、クリエイティビティ」を司るのが、脳の「前頭葉」です。

したがって、ある人の「意欲・感情、思考、クリエイティビティ」の如何をみればその人の前頭葉の状態もわかるのですが、一方で「意欲・感情、思考、クリエイティビティ」をいかに若い状態に保つか、いかにコントロールするかによって、前頭葉の萎縮、老化を抑えることもできるのです。

しかもそれは決して難しいことではなく、ライフスタイルや日常の習慣、嗜好や性向、また思考法をほんの少し変えるだけ、修正するだけで意外に簡単にできるものなのです。


「アレ」「ソレ」「コレ」を使わない

どうしても人の名前、モノの名前が思い出せない。そんなときに〝便利〟なのが、「アレ」「ソレ」「コレ」といった指示代名詞。家族との家のなかの会話では、「アレ、どこやったんだ?」「ああ、アレならアソコに置いてあったわよ」─で事足りてしまいます。

歳をとればとるほど「アレの名前が思い出せない」...と、指示代名詞頻発の会話になるのは致し方ないといえば致し方ありません。しかしこれをただ放っておくのは問題です。

第1に、単語が出てこず指示代名詞に頼るのを「よし」として、「思い出そう」という努力を怠ることは、すなわち「思い出す=脳のアウトプット機能」を使わなくなることです。脳の機能というものは、使わなければサビていく一方です─特に中高年以降は。

第2に、そもそも「アレ」「ソレ」「コレ」で会話が成り立ってしまう相手というのは、よく言えば「あうん」の呼吸の仲なのですが、ちょっと厳しい言い方をすれば、お互いすでに「新鮮味のない」「刺激のない」「惰性で付き合っている」関係ともいえます。

このような関係の付き合いのなかでは、前頭葉を使う機会もありません。
「アレ」「ソレ」「コレ」頻発の会話には、こうして知らず知らずのうちに老化への加速度をアップさせてしまう危険が潜んでいるのです。