企業にもよるが、50代に入ると、定年まであと10年を切ってくる人が多いだろう。気になってくるのが、老後資金だ。どう対策すればいいのかを、老後資金捻出のプロフェッショナル・水上克朗氏に教えてもらった。(取材・構成:長谷川敦)

※本稿は、雑誌『THE21』2020年10月号より一部抜粋・編集したものです。


50代半ばから、収入は下がり始める

一般に会社員の収入は、50代前半をピークに、その後は下がっていきます。ところが、「これから下がっていくんだろうな」ということは何となく意識していたとしても、具体的に、いつ、どれぐらい下がるかを把握している人はほとんどいません。

これでは老後の資金計画はままなりません。私はいつも、50代以降の収入には「4つの崖」があるという話をしています。まず1つ目の崖は、55歳頃に訪れる「役職定年の崖」です。

人事院の調査によれば、500人以上の企業の約3割が役職定年を導入しています。役職定年によって収入がいくら下がるかは、企業やその時点での職位によって大きく違ってきますが、だいたい2〜3割下がると考えていいでしょう。

読者の皆さんの中には、「自分が勤めている会社には役職定年がないから大丈夫」と思う人もいるかもしれませんが、役職定年の制度がないからといって、安心していいわけではありません。

今50代前半の会社員が入社したのは、平成初めのバブル期です。そのため、この世代の社員数が他の世代の社員数の倍以上に達している企業も少なくありません。

高収入の50代前半の社員が数多く在籍していることは、企業にとって大きな負担です。そこで現在、多くの企業が、この年代層の社員をターゲットにした給与体系の見直しを行なおうとしています。

難しいのは、多くの場合、人事評価制度の内容を細かく改訂しながら給与体系の見直しを行なっているために、「勤務年数が何年で、どの職位にある人が、どんな評価をされたときに、どれぐらい給料が下がるのか」がわかりにくいということです。

計算が複雑なので、自分の給料がこれからどうなりそうかを把握できている人が少ないのです。「気がつけば収入が下がっていた」ということになりかねません。

自分が勤めている会社に役職定年がないからといって、55歳前後に訪れる収入ダウンの1つ目の崖をすり抜けられるかというと、そんなことはないと考えておくべきでしょう。


再雇用後の賃金は、定年前の60%以下!?

収入ダウンの2つ目の崖は、60歳のときに訪れる「定年の崖」です。定年後の選択肢としては、(1)継続雇用してもらう(2)他の会社に転職する(3)独立・起業する(4)引退して老後を過ごすの4つが考えられます。

退職金が十分にもらえるのであれば、「引退して老後を過ごす」という選択肢もアリでしょう。事実、昔はそういう人がたくさんいました。しかし、厚生労働省の調査によると、2018年に大卒の定年退職者に企業が支払った退職金の平均額は1788万円。

これは、約20年前の1997年と比べると、1080万円も減少しています。「退職金があれば、老後は何とかなる」という時代ではなくなっており、今では多くの人が定年退職後も働くことを選択しています。

高齢者雇用安定法が施行されたことによって、本人が希望すれば、企業は65歳まで社員を雇用することが義務づけられています。

企業によっては定年を65歳にしたり、定年制を廃止したりするところも出てきていますが、多くの企業が導入しているのは、60歳定年制は維持したまま、希望する社員に対しては再雇用を行なうという形です。

現状では、60歳で定年を迎えた人の8割以上が、会社と再雇用契約を結び、継続して働くことを選択しています。確かに、継続雇用であれば慣れ親しんできた職場で働き続けることができるわけですから、精神的にはかなりラクです。

ただし、収入が落ちることは覚悟しなくてはいけません。労働政策研究・研修機構の調査によれば、継続雇用を選択した場合、約4割の人が、定年前と比べて賃金が60%以下になるということです。また、同機構の別の調査によれば、平均年収はフルタイムで働いたとしても374.7万円です。