「健康」でさえあれば何とかなることは多い!

収入ダウンの3つ目の崖は、「年金生活の崖」です。再雇用が65歳で終了すると、そこから年金生活がスタートします。もし新たな稼ぎ口を見つけなければ、収入源は年金のみになります。

厚生年金の受給者の平均受給額は、男性の場合、基礎年金と合わせて年間約200万円。女性は、専業主婦の期間が長い場合は80万円前後。夫と共働きで働いてきて、厚生年金に入っている場合は、120万〜180万円前後というのが一般的です。

ただし、この受給額をずっと維持できるわけではありません。収入ダウンの4つ目の崖が待ち受けているからです。その崖とは、「配偶者死別の崖」です。

例えば、現役時代に平均年収500万円だった夫と専業主婦の妻の家庭で、夫が先に亡くなったとします。すると、夫が受け取っていた年間約188万円の年金が支給されなくなります。

遺された妻には、遺族年金として年間約83万円が支給されるとはいうものの、夫が存命中にその世帯が受け取っていた支給額と比べると、約105万円もの収入減になります。

ここまでが、会社員が50代以降に経験することになる収入ダウンの4つの崖です。実は、これ以外にも、「見えざる2つの崖」があります。「病気の崖」と「介護の崖」です。

歳を取ってからも、働き続けることで収入を得ようと考えていたとしても、長期療養を要する病気に罹ったり、介護が必要な状態になったりすると、収入の確保が困難になります。

逆に、健康でさえあれば、老後の生活は何とかなるものです。よく「老後資金は2000万円必要だ」と言われますが、定年退職後からでも2000万円を確実に確保する方法があります。

それは時給1013円(東京都の最低賃金)の仕事を、夫婦2人で1日4時間、週5日、10年間続けることです。健康であれば、これができます。そういう意味では、健康を失うことが収入ダウンの一番のリスクだと言えます。


予想外にかさみがちな出費には、上限額を設定

では支出面で、50代以降に新たに増えるものとしては、どのようなものがあるのでしょうか。大きいのは、やはり介護費と医療費です。生命保険文化センターが介護経験者を対象に調査した結果によると、一人当たりの介護費用は約500万円です。

介護が育児と違うのは、いつまで続くかがわからないことです。1年未満で終わることもあれば、10年以上続くこともあり、当然、必要となる費用も、介護期間によって大きく違ってきます。

ですからシミュレーションをするのが非常に難しいのですが、少なくとも、平均とされる500万円程度は準備しておきたいところです。また、介護費用をシミュレーションする際には、親の介護費と、自分(自分たち夫婦)の老後の介護費の両方を考える必要があります。

できれば、親の介護費については、親自身の資産の範囲内で賄いたいものです。そのためには、親の理解を得たうえで、親の資産状況をしっかりと聞いておくことが大切になります。

もし自分たちがある程度負担しなくてはいけない場合は、兄弟姉妹間でよく話し合い、お金だけではなく、実際の介護についても、誰がどれだけ負担するかを明確にしたほうがいいでしょう。

そうしておかないと、相続でもめる原因にもなります。一方、医療費については、厚生労働省によれば、65〜89歳までの自己負担額の平均は191.5万円となっています。一人当たり、だいたい200万円と考えればいいでしょう。

医療費と介護費以外で、50代以降、予想以上にかさみがちな出費としては、家のリフォーム代やクルマの買い替え費用、子供の教育費、子供の結婚資金援助、子供のマンションの購入費の援助などが挙げられます。

これらの出費は、上限枠を設けておかないと、どんどん財布から出ていくことになります。親が子供のマンションの購入費を援助するのは、「今援助しておけば、老後になったときに、今度は子供が自分たちの面倒を見てくれるのではないか」という期待があるからかもしれません。

でも、子供は子供で、自分たちのことで精いっぱいなもの。子供に過剰な期待をせず、自分たちの生活を守ることを最優先に考えたうえで、「何にどれぐらい使うか」をあらかじめ決めておくことが大切です。