ビジネス書を中心に1冊10分で読める本の要約をお届けしているサービス「flier(フライヤー)」(https://www.flierinc.com/)。
こちらで紹介している本の中から、特にワンランク上のビジネスパーソンを目指す方に読んでほしい一冊を、CEOの大賀康史がチョイスします。

今回、紹介するのは『オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る』(オードリー・タン(著)、プレジデント社)。この本がビジネスパーソンにとってどう重要なのか。何を学ぶべきなのか。詳細に解説する。


テクノロジーと人類のポジティブな未来を見通す一冊

AIが人類の能力を超えると言われると、映画『ターミネーター』や『マトリックス』のようなAIに人類が支配されるディストピアを連想するかもしれません。

その一方で、日本のアニメに登場するAIは、『ドラえもん』や『鉄腕アトム』のような、人を助けるロボットの姿で描かれています。

AIと人類の未来として、読者の皆さんはどちらを想像するでしょうか。AIと言われるより人型ロボットと言われる方が親しみを持てるのかもしれません。

AIなどのテクノロジーは人が生きる上で役に立つものであってほしいですし、人の意思によりそった実装が望まれます。

本書の著者のオードリー・タンは、台湾のデジタル担当政務委員という現役の閣僚です。「IQ180」「15歳で中学を中退」「スタートアップ経営者」「トランスジェンダー」「史上最年少閣僚」という言葉は、全て著者を表現する際に使われます。

キーワードに触れるだけでその異才ぶりが伝わるのではないでしょうか。今回はその著者自身が書かれた作品に触れていきます。


台湾の新型コロナウイルスの対応がなぜ機能したのか

台湾は新型コロナウイルスの封じ込めに、いち早く成功しています。これは医療専門家、政府、民間とともに、社会全体の努力の成果だと言われています。

武漢での感染拡大当初の2020年1月20日に中央感染症指揮センターを設立し、翌日に台湾人女性の感染を確認。22日に武漢からの団体観光客の入国許可を取り消し、24日には中国本土からのすべての団体観光客の入国を禁止します。

それと同時に、スマートフォンを活用して、感染者と接触した可能性のある人たちに警告の連絡をしたそうです。日ごとに対応を更新するほどに、初期対応が迅速だったと言えるでしょう。

このように公衆衛生においては、官公庁が迅速に動くということの大切さとともに、重要な原則があるといいます。

それは、一部の人が高度な知識を持っているよりも、大多数の人が基本的な知識を持っている方が重要だということです。例えば手を洗う際に石鹸で洗うことは、広く行われてこそ効力を発揮します。

マスクの配布に関しても、キャッシュレスの仕組みも構築しながらも、使い慣れていない高齢者のために薬局の仕組みも併用して、誰でもマスクを購入できるようにしました。

さらに、市民のプログラマからなるシビックハッカーにより、マスクの在庫状況がわかるマスクマップが構築されました。

この新型コロナウイルスの対応に関しては、対応の迅速さが効果を発揮しています。それとともに、テクノロジーを使うべきところと使わないところを併用して、血の通ったデジタル政策をしているようでもあります。

台湾が政策にテクノロジーを活用しているのは、新型コロナウイルス対応にとどまりません。2014年にはオンラインで法案を討論する「vTaiwan」というプラットフォームを展開しています。

著者がデジタル担当政務委員に就任した2016年には、「Join」という参加型プラットフォームを構築します。

「Join」は、主に医療サービス、公衆衛生設備、公営住宅建設などの政府プロジェクトについて、住民の新しいアイデアを提案して意見を言えるプラットフォームです。これまでに議論された政府プロジェクトは2,000件以上で、ユーザー数はなんと1,000万人を超えます。

このような取り組みで著者が大切にされている価値観は、「政治への直接参加」と「常にアップデートしていく」ということです。以降は本の内容から離れますが、この話はスタートアップの会社経営に近いものを感じます。

「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」と言われる経営資源のうち、スタートアップが大企業に比べて優位なものはありません。

そのため、私自身は「スピード」こそがスタートアップが持っている構造上の最大の優位性だと考えています。メンバーの直接参加と常にアップデートする姿勢はその優位性を強める要素です。

台湾は、大国と比べたときに、広さ、人口、資源、軍事力などのハードパワーには優位性がほとんど存在しません。それは国土の狭いシンガポールや、中東にありながら石油資源にめぐまれないドバイのような地域でも同様です。

でも彼らはその弱みを上回る、運営上の優位性を築いています。政策のスピード感や合理性で、他の地域を凌駕しています。日本のような他の国が学ぶべき点は多いように思います。