国々の関係は、それぞれ条件が異なります。島国なのか、半島なのか。海洋国家なのか、大陸国家なのか。何カ国と国境を接しているのか。どの国と海峡を挟んで向かい合っているのか。それらの国々は、これまでどの国と戦争をしたのか。彼らはいまなおお互いに憎しみを感じているのか。それとも和解したのか。

こうした地理や歴史は、人間の意思では変えられない、少なくとも変えにくい条件です。地政学では、世界の国々がその地理的条件によって考え方や行動パターンが異なってくることに着目します。そこから見えてくる世界の動きは、これまでは知りえなかったものとなるはずです。

※本稿は、船橋洋一監修/バウンド著『こども地政学 なぜ地政学が必要なのかがわかる本』(カンゼン)より、内容を一部抜粋・編集したものです。


「ランドパワー」と「シーパワー」ってなんだ?

地政学には知っておくべき重要な考え方がいくつかあります。なかでも重要なのが「ランドパワー」と「シーパワー」です。

簡単にいうと、陸続きで他国と国境を接する中国やロシアのような大陸国家は「ランドパワー」、島国の日本やイギリスのように長い海岸線をもつ海洋国家が「シーパワー」です。

ちなみに、アメリカはシーパワーに分類されます。「島国?」という感じもしますが、 国土の東西に海があり海岸線が長いので、地政学ではアメリカを大きな島とみなします。

「ランドパワー」は陸続きで国が接しているために、古くから国境を越えて陸づたいに侵略したり、侵略されたりしてきた歴史をもっています。一方、シーパワーは周囲を海に囲まれているので、侵略されることは多くありません。

日本のようなシーパワーと中国のように多くの国と国境を接しているランドパワーでは、「自分たちの土地をどう守るか」も変わってきます。地理的条件によって考え方が異なってくるこということです。

この後、シーパワーとランドパワーの違いを説明しますが、考え方や行動パターンが違うことを知ると、世界の動きがこれまでとは違った見え方になるはずです。


「シーパワー」は貿易、「ランドパワー」は侵略が特徴

島国である日本では、自分たちの土地を耕し、海で魚を獲って生活してきました。食料や資源が足りなければ、いまの日本がそうであるように貿易でその不足を補ってきました。

たとえば、19世紀にイギリスが圧倒的な武力を武器に中国に対してアヘン戦争を起こしたり、ペリーが黒船で浦賀にやって来てアメリカが日本に開国を求めたのも自由貿易をしたかったからです。シーパワーは、自分の国の外に貿易拠点をもとうとするのです。

しかし、陸続きで国境があるランドパワーは、食料や資源が不足すれば隣の国へ出向いて奪うことが可能です。たとえば、チンギス・ハンで有名なモンゴル帝国(元)は、西は現在のトルコ、南はアフガニスタン、東は中国・朝鮮半島までユーラシア大陸のほとんどを領土にしました。

モンゴルの土地は農業に向かず、資源もそれほどありません。食料や資源が足りなくなると新たな土地へ食料や資源を求めて次々に征服していき、ついにはヨーロッパまで領土を拡大しました。海を越えて日本に攻め込んできた「元寇」もその一環でした。

なお、ランドパワーとシーパワーは考え方が異なるため、争いになることが多いとされています。


日本は「ランドパワー」になろうとして失敗した

島国である日本は海洋国家(シーパワー)ですが、かつては大陸に進出して大陸国家 (ランドパワー)になることを狙っていました。

1904年に勃発した日露戦争に勝利して、朝鮮半島、中国・遼東半島を手に入れた大日本帝国は、満州(現在の中国東北部 )に進出するなど大陸における領土を拡大していき、「大東亜共栄圏」を唱え、ランドパワー大国を目指して東南アジアまで勢力を拡大していきました。しかし、第2次世界大戦の敗戦で失敗に終わりました。

かつてドイツ、ソ連(現在のロシア)はランドパワー大国でありながらシーパワー大国を目指しました。しかし、いずれも失敗に終わっています。

両立しないといわれているのです。その意味では、中国の「一帯一路 」構想(2013年、習近平国家主席が打ち出した巨大経済圏構想。中央アジア経由の陸路とインド洋経由の海路で、道路や鉄道、港湾などのインフラ整備を進める構想のこと)がどうなるかは注目されています。