2021年の新語・流行語大賞にノミネートされた「フェムテック」をご存知でしょうか。フェムテックとは、女性が日常生活を送る上で我慢や苦痛を強いられていることに対して、テクノロジーの力で解決しようとする製品やサービスのことをいいます。

フェムテックは女性の間だけの話題ではありません。なぜなら、女性の悩みは社会の課題だからです。男性向け雑誌でも特集が組まれるなど、その注目度は日に日に高まっています。

このトレンドに乗り遅れたくない方に向けて、医療ライターの及川夕子著、産婦人科医・高橋幸子監修『365日機嫌のいいカラダでいたい。』より、フェムテックの基礎知識を紹介します。

※本稿は、及川夕子著、高橋幸子監修『365日機嫌のいいカラダでいたい。』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)より、内容を一部抜粋・編集したものです。


最近よく聞く「フェムテック」とは何か?

2021年の新語・流行語大賞にノミネートされた「フェムテック」。聞いたことはあるけれど、どんなものかはよくわからない、という人もたくさんいると思います。

フェムテックは、Female(女性)とTechnology(テクノロジー)を組み合わせた造語で、女性が声を上げにくかった心やカラダのモヤモヤやタブーを解決してくれるさまざまな製品やサービスのことを指します。

女性特有の症状や女性ホルモンの分泌に関連した悩みを解決してくれる製品やサービスを、「フェムケア」といったりもします。この記事ではどちらも広い意味でフェムテックと呼ぶことにします。フェムテックは「女性特有の生きづらさを救う」と表現されることもあります。

生理痛の悩みや、不妊の悩み、性交痛の悩み、セックスレスの悩み、更年期のモヤモヤは、以前はなかなか口に出しにくいものでした。

でも、SNSの普及で、みんなが困っていることを口に出しやすくなって、「しんどいと声を上げることは、わがままじゃない」という空気感がどんどん広がってきています。

生理周期を管理するアプリは以前からありましたが、最近はペアリング機能といって、パートナーに生理の情報を共有することができる機能がついていたりします。

また、更年期症状のつらさをパートナーにどう伝えたらいいかをAIが判断して、メッセージを考えてくれるアプリも登場しています。コミュニケーションツールも、どんどん進化してきているんですね。

今は、女性の悩みをデータ化し、AIを使って一人ひとりに効果的なヘルスケアの解決策を導き出すといった技術も可能になっています。生理管理アプリのような以前からあるアプリも、今後ますます使いやすく高度に進化していくことでしょう。

流行だから使うというわけではありませんが、テクノロジーが進化して、私たち一人ひとりの悩みに寄り添う製品やサービスが生まれてきているのはうれしいことですよね。

もともと女性は自分で自分をケアすることがとても得意です。あなたが今抱えている課題を解決してくれるものは、ぜひ積極的に取り入れてほしいと思います。


なぜ今、フェムテックが盛り上がっているのか?

最近、いろいろなところでフェムテックという言葉を聞くようになりました。

フェムテック専門ストアの運営などを行う「フェルマータ」が2021年の秋に開催したイベントには、国内外から157社が出展し、3日間で約1500人が来場しました。東京・六本木にある同社の路面店には、吸水ショーツや月経カップなどを求めてさまざまな年代の女性たちがやってくるそうです。

なぜ、このような盛り上がりを見せているのでしょう。フェルマータの最高執行責任者、近藤佳奈さんは以下のように分析します。

「フェムテックとして紹介されているものには、もちろん最新のテクノロジーを活用したものもたくさんありますが、中には10年以上前から世の中に存在しているものも多数あります。

吸水ショーツは、尿もれ対策として以前から販売されていました。女性の悩みや課題を解決する製品やサービスがフェムテックという言葉で表現されたことによって、各国で広がり、メディアにも取り上げられるようになりました。新しい選択肢として認知され始めたのだと思います」


フェムテックが目指すのは、誰もが生きやすい社会の実現

もう1つ、フェムテックには、女性の心身にまつわるタブーや価値観を変容するムーブメントの側面があります。2020年ごろから盛んになってきた、次のような動き、女性たちの意識の変化です。

・生理痛や更年期、不妊など、これまで人前でオープンに話せなかったことが話しやすくなった。

・デリケートゾーンやセルフプレジャーといった言葉が広がり、メディアでも隠すことなく取り上げられるようになった。

・生理の貧困や性教育の遅れ、ジェンダー格差(性的役割分担やジェンダーを背景にした賃金格差など)、女性に対する性暴力などの社会問題について、女性たちがSNSなどで積極的に声を上げるようになった。

・多くの女性たちが女性特有の健康課題を、自分ごととして捉えるようになった。

このような意識の変化が起こっている背景には、世界に広がる「SRHR(Sexual and Reproductive Health and Rights)」(性と生殖に関する健康と権利)の考え方があると思います。

SRHRとは、性(セクシュアリティ)や生殖に関して、心身ともに満たされて幸せを感じられ、またその状態を社会的にも認められていること、そしてこれらを自分で決める権利を持っていることを表す言葉です。

具体的には、誰を愛するかということや性的なあり方、自分の性的な快楽(セックスをする・しない)、または産むか産まないか、いつ・何人子どもを持つかといったことを、自分で決められる権利のことです。

つまり、人は皆、自分が自分であるために、身も心も、社会的な状況においても、尊厳を持って生きる権利があるということです。この考え方は、フェミニズム運動や#MeToo運動の精神とも重なってきます。

「フェムテックは、今まで人に話せない、我慢していて当たり前だと思っていた自分の心身に関わるタブーやモヤモヤを解決するための選択肢です。でも、大事なことは、女性が変わる・ 変わらなければいけないということではなく、社会が変わることで女性が生きやすくなることだと思います。

新しい技術も、取り入れるかどうかはその人自身の選択でよく、周りからの圧力があってはいけないと思います。意識せずとも、たくさんの選択肢があり、必要なときに手に取れるようになっていくことが大切です」と前出の近藤さんは言います。

たくさんの人が女性特有の症状について我慢したり諦めたりしなくてよい社会、そして積極的にケアをすることが当たり前になっていく未来が、ようやく見えてきました。

これからますます、自分の性のあり方や健康に、一人ひとりが主体的に向き合う時代になっていくでしょう。いえ、そうでなければいけませんよね。