クジラやイルカは喉が渇くの? 科学者たちが、クジラのうんちや鼻水を集めているって本当? ...イギリスの科学技術雑誌「ニュー・サイエンティスト」に寄せられた、読者が生活のなかで感じた「海の生き物」に関する疑問についてご紹介します。

※本稿は、ニュー・サイエンティスト(編集)、西川由紀子(翻訳)、千葉和義(監修)『どうしてオナラはくさいのかな? 人に聞けない!? ヘンテコ疑問に科学でこたえる!』(評論社)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

【ニュー・サイエンティスト】
1956年にイギリスで創刊された科学情報誌。科学技術分野の最新情報を一般読者にもわかりやすく解説することで人気を博す。週刊誌、HP、SNSなど、さまざまな媒体で情報を発信し続け、世界中の読者から支持されている。

【西川由紀子】
大阪府生まれ。神戸女学院大学文学部英文学科卒業、立教大学大学院異文化コミュニケーション研究科修了。訳書に『理系アタマがぐんぐん育つ 科学の実験大図鑑』『理系アタマがぐんぐん育つ 科学のトビラを開く! 実験・観察大図鑑(』いずれも新星出版社)がある。

【千葉和義】
お茶の水女子大学理学部生物学科教授、サイエンス&エデュケーションセンターセンター長。生物学科の学生や大学院生たちと、ヒトデ卵の減数分裂と受精機構(発生生物学)を研究すると同時に、理科教育と科学コミュニケーションの振興活動に従事している。


クジラやイルカも、のどがかわくのかな?

水分はどうやってとっているの? 海で泳いでるときに、口いっぱいに水を飲みこんじゃったことはある? おいしくないよね。

じゃあ、人間は海水を飲んでも、水分をとったことにならないって知ってた? 海水にはたくさんの塩分がふくまれている。からだから塩分を取りのぞくためには、飲んだよりも多くの量のおしっこを出す必要があり、かえって脱水状態になるんだ。

海の動物たちも、海水は飲めない。だから、クジラやイルカも飲んでいない。

そもそもクジラやイルカは、のどがかわくのかな? クジラやイルカは、水分のほとんどを、魚やイカからとっている。イカのからだの80パーセント以上は水分だからね。さらに、えものの脂肪を代謝したり、自分の体内にたくわえた脂肪を分解したりして、水分を生成している。

水不足におちいらないように、クジラやイルカのからだの内部は、砂漠に住む哺乳動物とよくにている。とても複雑な腎臓を持っていて、ものすごく濃いおしっこをつくりだせる。だから、不要な塩分を出すためにするおしっこの量も少しですみ、あまり多くの水分を必要としていないんだ。

体内での調節だけじゃないよ。汗をかいて水不足にならないよう、海の哺乳動物には汗腺(ひふにある、汗を出す器官)がない。その代わりに、海という環境を利用して、自分たちのからだをひやしているんだ。