「この荒々しいタッチはゴッホのようだな」


子どもが描いた絵があまり上手でないとき、どんなことを言うか。「個性が溢れているよ」と断言するのがよいと思います。あるいは、「勢いがある」「このかすれ具合がたまらない」「この余白がいい」とか、とにかくあらゆる手段で褒めまくるのです。


その上で、ちょっとこの絵を見てごらんなどといって、インターネットでジャクソン・ポロック(1912〜56)の「No. 5, 1948」を見せて、「絵具をぶちまけたようなめちゃくちゃな絵だろ。これが150億円するんだぞ」と言ってあげる。

そうすると子どもは、どんどん絵を描こうとするのではないでしょうか。

あるいは、君の絵は天才画家に似ているといって褒める。粗いタッチの絵なら、「ピカソ、ゴッホに似てるね」、ぼんやりした絵だったら「モネに似てるね」、余白が多くてちんまりしてたら「水彩画のようだ」という具合です。


以前、「ほめほめ授業」と称して、学生に「どんな絵でも褒める」ということに挑戦させたことがあります。全員に絵を描いてもらって、順々に一人ずつ立って絶賛させます。その上で、褒め言葉がすごく具体的でリアルだった人を絵を描いた人に選んでもらうという授業です。全員が全員に対して褒め言葉を言うわけです。

ただ「うまいね」だけではだめで、「この線の形がとても印象的」「この構図が大胆で引き込まれる」といった具合にポイントをあげるようにしました。

その上で、「ここに紫を使うともっといいよ」などとアドバイスした学生もいました。いわば、自分が惹かれるポイントをさらに伸ばそうとしたわけです。


子どもに対しても、基本は褒めて、アドバイスがあれば伝えるという姿勢でいいのではないかと思います。「お前の絵は下手だな」などと言ってしまうと、「そうか、自分は絵を描くことが苦手なんだ」と子どもが思い込んでしまってもおかしくありません。

そもそも、現代美術の世界では「絵が上手/下手」という概念がありません。どんな絵も、その絵独特の価値を持っているものなのです。