◆ 親の「口ぐせ」は子どもの「思い込み」を作る

「何度言ったらわかるの!?」
「早くしなさい!」
思い通りにいかない子育てにイライラすることはありませんか?
家事も子育ても大変なのに、夫は仕事で遅いから頼れない......。
他のママたちは、みんな上手に子育てしていそう。それに比べて私は怒ってばかり......。
私はダメな母親だ......。
こんなふうに追い込まれている方もいらっしゃるかもしれません。
毎日毎日、家事に子育てにてんてこまいのお母さんたち、本当におつかれさまです!
誰もほめてくれませんから、自分で自分をねぎらってください。「よくやってるよ!」と。
悩みなんて全然なさそうに見えるお母さんたちもみんな、子育ての悩みを抱えているものです。悩んでいるのは、けっしてあなただけではありません!
今の時代は特に、核家族が多いため、親子が閉ざされた空間に置かれ、ストレスがたまりやすい環境になってしまっているかもしれません。一度ボタンのかけ違いが起きてしまうと、ますます悪化し、家庭に笑顔がなくなることも......。
実は、子どもの心や能力を伸ばし、あなた自身も笑顔になるためには、言葉がけは一番大切なことかもしれません。子どもにかけている言葉は、自分の心に無意識にかけている言葉となるからです。

◆ 親の言葉は「子どもの心」をどのように育む?

生まれたての赤ちゃんには、もちろん「思い込み」というものがまったくありません。
しかし、育っていく過程でかけられた言葉によって、「自分に対する思い込み」を作っていきます。
「こんなこともできないの!?」
「何度も言ったでしょ!?」
「ダメな子ね!」
などと否定ばかりされてきた子は、どのような心を育むでしょうか。
「自分はダメな子だ」
「だから、怒られて当然」
おそらく、こういった思い込みをもつことになるでしょう。
また、子どもの行動すべてを管理しようとする、過干渉な親に育てられた場合は、「それじゃダメ! こっちにしなさい」などとコントロールされることがふつうになってしまいます。
そういう子は、「私は何もできない子だから、親の言う通りにしないといけない」と、いつもお母さんやお父さんが望むように行動し、我慢して、無理をする子ども(大人)になる傾向があります。
こうして、ついには生涯にわたって「マイナスの思考ぐせ」を定着させてしまうほど、親の言葉の影響は大きいのです。
言葉には言霊があると言われています。もし、一番身近である親からかけられた言葉が、子どもにとって心地よいものだとしたら、子どもの心はどのように育まれるでしょうか。
この世界は安心できる世界で、自分の存在が尊重されていると感じ、自己肯定感も高まることでしょう。
と言っても、「いつも笑顔の、やさしいお母さんでいましょう」という意味ではありません。
人間には喜怒哀楽があります。怒りも大切な感情ですから、ときには怒ってしまっても大丈夫です。
ただ、一日中怒っていて、子どもがいつもおびえて委縮しているとしたら、その言葉がけは別のものに置き換えたほうがいいでしょう。
本誌を手にとっているあなたは、「変わりたい」という思いをもった、とても子ども思いの親です。ぜひ、言葉がけのコツをつかんでもらえたらと思います。

◆ 親の言葉は「子どもの力」をどのように伸ばす?

「違う! なんでできないの!?」
「そうじゃない! こうでしょ!」
このように子どもを責めてしまったことはないでしょうか。実は、私は過去に、不器用な長男を追い詰めてしまったことがあります(反省)......。
私は、発達障害と診断された長男の子育てを経験しています。
たとえばボタンかけを教えるとき、「ボタンの練習するよ」と伝えても、まったく反応せず、ボタンを見てもくれませんでした。そこでまず、子どもの手をそっと押さえ、ボタンに触れさせて、「見て」と、ボタンを目で見てもらうことから始めました。
一方、次男は、ボタンかけの練習などしなくても、1人で器用にボタンをはめていたことに驚きました。
発達障害があってもなくても、不器用な子はいます。生まれもったものは、人それぞれ。その子に合わせて言葉がけをしていく必要があります。「できてあたりまえ」という考えは捨てましょう。
できないときは、「どうしたらわかるかな?」と、子どもの立場になって考えてみることが大切です。できないことに寄り添ってもらい、わかりやすい言葉がけをしてもらうことで、子どもは安心し、「挑戦してみよう」という気持ちになれるのです。
「子育ては自分育て」という言葉があります。もし、命令形や否定形オンパレードの言葉がけをしてしまっているとしたら、それは、自分自身にも「早く動け!」「そんなこともできないなんて、おまえはダメな親だ!」と無意識にダメ出しをしていることになります。
心にゆとりをもてない方は、忙しい中にも、リラックスすることや、心がホッとすることを生活に取り入れてみてください。
親が発する言葉が変化していけば、子どもには挑戦する心が芽生え、自らの力を伸ばしていきます。焦らず、少しずつ、できることから取り組んでいきましょう。

【著者紹介】
shizu(しず)
自閉症療育アドバイザー。ABA(応用行動分析)を利用して子どもの自己肯定感を高め、さまざまな力を伸ばす方法についてブログ、講演活動などで紹介している。著書に、『発達障害の子どもを伸ばす魔法の言葉かけ』(講談社)、『言葉がけひとつで行動が変わる! 子どもの叱り方・伝え方』(PHP研究所)がある。

「PHPのびのび子育て」11月号より