発達障害やグレーゾーンの子どもたちを、家庭で、学校で支援する方々どのようなことを意識しているのでしょうか? 長年、特別支援学級の教師を務めてきた村田しのぶさんが、注意されたり、自分の思い通りにならないとすぐにキレる子との接し方を解説します。

※本稿は、村田しのぶ著『発達障害&グレーゾーンの子どもが「1人でできる子」になる言葉のかけ方・伝え方』(日本実業出版社)から、一部抜粋・編集したものです

[著者紹介]村田しのぶ(秦野市就学指導教育支援員、公立小学校特別支援非常勤講師、保育所等訪問支援員、放課後等デイサービスにて児童支援員) 神奈川県綾瀬市、秦野市立小学校の普通学級教諭を15年務める。その際、学級の中に自閉スペクトラム症、場面緘黙症など、さまざまな発達障害の児童がいたことがきっかけで特別支援を要する児童の教育に関心を持ち、その後、特別支援学校教諭の免許を取得し、特別支援学級を25年以上にわたって担当する。

勝ち負けにこだわる、負けるとキレる

自分の気持ちをコントロールできない

思うようにならないと、自分の気持ちをコントロールできず、さまざまな行動に出てしまう(キレる)という特徴もあります。

順番を待てない、というのもその1つです。ブランコの列に並んでみたものの、交替が待てず、友だちにちょっかいを出したり、大声を出したりします。友だちから「ちゃんとしろよ」と言われると、その友だちに暴言を吐いたり、叩いたりの他害行為が出てきます。

・次に何をするのかがわからない、体育館がイヤ

授業中、出された課題を終えると、次に何をするのかを忘れてしまったりします。誰だって忘れることはありますので、「次に何をすればいいですか?」と聞いてくれればいいのですが、どう聞けばいいのかがわからないのです。

そのため、ボーッとしています。そして、暇になったので消しゴムなどで遊び始めます。「消しゴムを切りきざんではいけません」「机に落書きをしてはダメですよ」と注意を受けると、怒って教室を飛び出してしまいます。

また、体育館などに入るのをいやがることがあります。全校生徒で600人もいると、その人数に圧倒されるのでしょうか、しり込みをします。

もう1つ、体育館のように天井が高く、反響のある場所をいやがり、耳を塞いでしまうことも多く、ときには叫び声をあげて体育館から逃走し、教室に戻ってしまうこともあります。

・注意するとキレる、負けるのがイヤ

日直が「朝の会を始めますので、座ってください」と言うと、遊んでいたみんなは着席しますが、ウロウロしていて、なかなか着席できないケースも見られます。「Kさん、着席してください」と声をかけても、知らんぷり。

先生が見かねて「Kさん、座って!」と大きな声を出すと、Kさんの顔が険しくなり、近くの友だちを叩いたりします。大きな声を出されると、パニックになるのです。


注意は短く、具体的に! 目と目を合わせて、簡単に伝える

子どもの場合、ケンカは日常茶飯事です。さっきまで仲よく遊んでいたのに、ちょっとしたことで友だちと口論になります。発達障害の子どもの怖いのは、腹が立つと、急に外に飛び出していってしまうことです。

親は「勝手に飛び出してはいけないよ」と注意をするのですが、子どもは興奮しているので聞く耳をもたず、奇声を発したり、怒鳴り散らしたりします。

・短く、目と目を合わせ、具体的に伝える!

こんなときの対処法としては、少しクールダウンするのを待つことです。その後の対応として、何が大事で、何がNGでしょうか。

第一に、注意が長いのはNGです。第二に、過去の話をもち出すのもNG! 大事なこと、それは「どうして外に飛び出してはいけないのか」をわかってもらうこと。そのためには、「簡単な言葉で、目と目を合わせ、具体的に、短く話す」の4点が大切です。

「急に外に出ると、クルマにひかれてしまうんだよ」「大好きな○○ちゃんのことを心配してるからなんだよ」と、イメージが伝わる話し方をすると聞いてくれます。

子ども自身が自分の行動を振り返って、「クルマにぶつかるとケガをするから」「お母さん/お父さんが心配するから」「そうか、もう飛び出さないようにしよう」と答えたら、やってはいけないことが頭にインプットされた証拠です。

もう、急に飛び出したりしません。

「どうして外に飛び出してはいけないのかな?」とやさしく質問し、子どもが自分で答えるのを待ってあげます。口ごもっても、話し方がわからないだけなので、繰り返し教えてあげます。「急に外に出ると......?」と、親の言葉に続けて答えてもらうようにすると、子どもも覚えられます。自分で言えたら、「よくわかったね、えらいね」と褒めましょう。

その後、道路にさしかかった際、「ここは危ないから飛び出さない......だったよね!」とインプットを強化すると効果的です。