闇営業問題で芸能活動を休止していた「ロンドンブーツ1号2号」の田村亮と、「雨上がり決死隊」の宮迫博之がそれぞれ改めて謝罪したうえで活動再開を報告したが、完全に明暗が分かれてしまった。なぜ宮迫の復帰だけに厳しい目が向けられる状況となったのか。危機管理コンサルタントでリスク・ヘッジ社長の田中優介氏が分析する。

 * * *
「雨上がり決死隊」の宮迫博之さんと「ロンドンブーツ1号2号」の田村亮さんは、少なくとも昨年の7月に謝罪会見をした時点では、同じ位置に立っていました。

 ところが半年が経ってみると、その立ち位置には大きな違いができてしまっています。田村亮さんの芸能界復帰はほぼ確実視され、宮迫博之さんの復帰は前途多難な状況です。この違いは、いったい何なのか。危機管理という視点で分析してみたいと思います。

 危機管理には「感知・解析・解毒・再生」という4つのステージがあり、その順番を間違えないよう確実に行っていく作業です。

 闇営業について簡略化して言うなら、「これはまずいと感じて、犯した罪の深さを十分に認識し、心に響く謝罪や罪ほろぼしを表明して、復帰への道筋を立てる」ということになります。この視点で見れば、1月末時点の宮迫さんと田村さんは、解毒から再生のステージに向かう途上にあったわけです。

 昨年7月の謝罪会見では、2人の解毒策は同じでした。しかし、半年後は全く違っていました。宮迫さんは単独でYouTubeを使って復帰を訴え、田村さんは相方の田村淳さんと復活ライブを兼ねた会見を行いました。その結果、宮迫さんには向かい風が吹き、田村さんには追い風が吹くことになったのです。

 なぜなのか? その一番の理由は「最後の解毒策の違い」、いわばマスコミを通した“世論とのラリーの有無”だったように思います。

 宮迫さんのYouTube報告は独り語りですので、テニスで言うなら壁打ちのような印象です。会見は記者の方々からの質問に答えますので、ラリーと言えましょう。しかし、記者の皆さんの質問は鋭くて厳しい。体の真正面をつく直球もあれば、鋭く変化する変化球もあります。そこで、田村さんはタブルスの布陣で会見に臨みました。淳さんを後衛にすえて、バックアップをしてもらったのです。

 もちろん、タブルスの布陣は淳さんの提案だったのでしょう。そのコンビ愛も解毒の役割を果たして、場を和ませたのだと私は分析しています。宮迫さんも、2度目のYouTube動画では、ユーチューバーのヒカルさんとコンビを組んで、1度目よりは高評価を得る(低評価を上回る)ことに成功しました。しかし、視聴者の知りたいことに十分に答えている印象を与えていないため、復帰の後押しになっていないのでしょう。

 2人の立ち位置に違いが出た二つ目の理由は、「自薦と他薦の違い」かと思います。芸能界への復帰を自薦するような言動と、相方が全力でサポートする他薦では、世論の受け止め方が違います。

 それは書籍のPR効果と同じです。新聞や週刊誌に書評が掲載されるのと、広告が掲載されるのでは、読者の皆さんの受け止め方は違います。前者は他薦で後者は自薦ですので、前者のほうがPR効果は大きいのです。それと同じ違いが出たのでしょう。

 違いが出た三つ目の理由は、「唐突感の有無」かと思われます。唐突感は周囲との温度差を解消しないまま行動を起こすと発生します。

 田村さんの復帰の始め方は、従来からあったライブへの出演でした。一方、宮迫博之さんは、何の説明もなく、いきなりユーチューバーを標榜してしまいました。これにはテレビ関係者や芸人仲間も驚いた違いありません。

 人は唐突なことに理解が追い付かないと、違和感や不快感を覚えてしまうものです。あるいは、深読みをして“あざとさ”を勘ぐったりします。直近では、WHOのテドロス事務局長が好例です。

 新型コロナウィルスで非常事態を宣言した時、唐突に中国を擁護する発言をしました。それを多くの人に、「何か含むところがあっての発言ではないのか?」と勘繰られてしまったのです。宮迫さんの行動に「YouTubeを逃げ場や復帰の踏み台にしたのでは?」という意見が散見されるのも、そうした理由からでしょう。

 最後に、第2の宮迫さんや田村さんにならないために、危機管理の改善点を紹介しておきましょう。危機管理の最後のステージは「再生」ですが、その主題は“出口戦略”です。じつは、出口戦略というものは、早い段階で仕込んでおく必要があります。闇営業であれば、最初の謝罪会見で、自らの口あるいは吉本興業の社長の口から、こう話しておくと良かったと思います。

「我々よしもと芸人にとってご高齢の方々は、高齢者向け公演を始めるなど、特に大切にしているお客様です。昨今の反社会的勢力は、そのご高齢の方々を特殊詐欺などで苦しめています。ですから、宮迫博之と田村亮は罪滅ぼしとして半年間、高齢者施設をボランティアとして慰問させて頂きます。もし受け入れて頂けるならばですが」と。

 そして半年後に、『罪滅ぼしのご報告』と称して、会見を開くのも一つの方策だったかと思います。ご高齢の方々からの感謝と復帰を願う手紙を携えて……。

●たなか・ゆうすけ/1987年東京生まれ。明治大学法学部卒業後、セイコーウオッチ株式会社に入社し、お客様相談室や広報部にて勤務。2014年に株式会社リスク・ヘッジに転職し、代表取締役社長に就任。現在、岐阜女子大学特任准教授も務める。著書に『スキャンダル除染請負人』(プレジデント社)、『地雷を踏むな』(新潮新書)がある。