2019年末に第50作目が公開される映画「男はつらいよ」シリーズには、毎回、主人公の車寅次郎が恋をして失恋するマドンナが登場する。歴代のマドンナのなかで、お笑い芸人の玉袋筋太郎は、マドンナといえば浅丘ルリ子さん演じるリリーしかない、と言い切る。「男はつらいよ」との出会いの思い出、なぜリリーが至高のマドンナなのかについて聞いた。

 * * *
 いろんなマドンナがいたけれど、オレには浅丘ルリ子さん演じるリリーしかいねぇ(笑い)。リリーは『寅次郎忘れな草』に始まって『寅次郎相合い傘』、『寅次郎ハイビスカスの花』、『寅次郎紅の花』、特別篇と最新作を合わせると6作品に最多出場。

 どのマドンナもさ、寅さんと交わりつつも自分が帰る世界があって、最後にはそれぞれの人生に落ちつくじゃない? でもリリーだけは寅さんと同じ根無し草。独り身で家庭の団欒を知らず、旅回りの歌手をしている。2人はひかれあうけど、リリーは結婚して家庭におさまる女じゃないんだよね。独りで全部背負い込んで、気が強いけど寂し気でさ。そんなところにひかれるよ。

「男はつらいよ」との出会いは、小学生の時、おばあちゃんに連れられて映画館で観た『寅次郎相合い傘』だった。子供ながらにグッときたよ。観ればわかると思うけど、雨の中、寅さんがリリーを柴又駅まで迎えに行くシーンはたまらない。あれほど美しい相合い傘はないね。

 オレ、高校卒業してすぐに働いたのが、ストリップ小屋だったの。「お兄さん」って呼んでくれるキレイな姉さんもいたけど、ストリップの姉さんもリリーと境遇が似ているんだ。10日で入れ替わってしまって、二度と出会うことはない。でも15年経って芸人で飯を食えるようになった頃、新宿コマ劇場のキャバレーで、ステージで歌う姉さんに再会したの。「売れてよかったね」って喜んでくれて、一緒に飲んだあの夜はいまも忘れられない。

 寅さんもリリーとすれ違っては、旅先で再会するでしょ。もちろんオレのケースと違って2人の関係はもっと深いけれど、俺もリリーと同じでこんな商売をやっているから、個人的に想い入れがある。やっぱりさ、リリーがいないと「男はつらいよ」がしまらねぇんだよな。

◆第11作『男はつらいよ 寅次郎忘れな草』(1973年、監督/山田洋次、上)

【あらすじ】北海道を旅する寅次郎は、網走で旅回りの歌手・リリーに出会う。独り身で浮草稼業のリリーと寅さんは、境遇が似ていることから意気投合。互いに心ひかれあっていく。リリーは今作含め、6作品(第11、15、25、48、49、最新作)にわたって登場する。

◆第15作『男はつらいよ 寅次郎相合い傘』(1975年、監督/山田洋次、右)

【あらすじ】青森で知り合った中年サラリーマンと旅する寅次郎は、函館のラーメン屋台でリリーと再会する。意気投合した3人は、自由気ままに初夏の北海道を旅するが、ある日寅次郎とリリーは大喧嘩。降りしきる雨の中、寅次郎はリリーを柴又駅まで迎えに行く。

●たまぶくろ・すじたろう/1967年、東京都生まれ。ビートたけしに弟子入りし、1987年に水道橋博士と「浅草キッド」を結成。

※週刊ポスト2020年1月3・10日号