意外なところに意外なファンが潜んでいるものだが、プロレスラーの越中詩郎は約半世紀にわたる筋金入りの「寅さんファン」だ。2019年末に新作の第50作が劇場公開される「男はつらいよ」シリーズで、越中が挙げたシリーズ最高のマドンナは、第16作『男はつらいよ 葛飾立志篇』(1975年、監督/山田洋次)に登場した御前様の親戚の大学助手・礼子役の樫山文枝だ。越中に寅さんと好きなマドンナへの想いについて聞いた。

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 両親の影響で中学時代から寅さんを観始め、社会人になってビデオが出ると、何回も観るようになり、好きな作品は何十回も観ています。映画ファンではなく寅さんファンで、寅さんは僕の人生の教科書。女性に惚れても、相手に迷惑をかけてはいけないと悟って身を引く。その潔さ、男らしい美学が好きです。

 好きなマドンナを一人だけ挙げるなら樫山文枝さん。お嬢様タイプで、知的で、清楚で、おしとやか。樫山さんはそんな役を演じるのにぴったりな方です。あの可愛らしいえくぼがたまりませんよ。

 他には、光本幸子さん、栗原小巻さん、吉永小百合さん、竹下景子さんなどが好きです。体育会系の世界にいるので、正反対の世界の人に憧れるんです。実生活でも、若い頃、そういうタイプを好きになっては振られたことが何度かあります(笑い)。でも、人生には振られることも大事と、寅さんに教わりました。

『葛飾立志篇』では寅さんと礼子の出会いの場面が好きです。喫茶店で声を掛けた礼子が、とらやに下宿していることがわかり、礼子に「お兄様」とにっこり微笑まれると、もう有頂天。“また始まるな”と思うんです。結局振られることがわかっていても、何度でも観てしまいます。

【葛飾立志篇・あらすじ】御前様の姪で、大学助手の美しき礼子がとらやに下宿し、寅次郎は一目惚れ。礼子の気を引こうと、礼子に家庭教師になってもらい、猛勉強を始める。やがて礼子の師である教授も礼子を思慕していることを知り、自ら身を引く。だが、教授も礼子に振られてしまう。

●こしなか・しろう/プロレスラー。1958年生まれ。

※週刊ポスト2020年1月3・10日号