放送作家でコラムニストの山田美保子氏が独自の視点で最新芸能ニュースを深掘りする連載「芸能耳年増」。今回は若手の注目女優・伊藤沙莉(25才)について。

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「この子のCMばっかり見る気がする」と先日、生ワイドの芸能担当ディレクター氏がしみじみ言っていた。今田美桜のCMである。

『Yahoo!検索大賞2018』で「女優部門賞」を受賞。以来、若手女優ではダントツのCM契約社数を誇る彼女は、「2019年〜2020年の年末年始TV-CM会社数ランキング」でも首位を獲得している。その数は前年の3社から7社へと倍増しており、綾瀬はるか、有村架純、広瀬すずの「上」をいったのである。

 男性だと、「この人ばっかり」と感じるのは賀来賢人だろうか。今田の場合は、『花のち晴れ〜花男 Next Season〜』(TBS系)、賀来は、『今日から俺は!!』(日本テレビ系)の出演がきっかけとなって大ブレイクして今に至る。そしてCM契約社数の急増は、間違いなく人気者の証明だ。

◆CMが増!役者としては演技力に高評価

 この文脈でいくと、年末年始、『大東建託』 「いい部屋ネット」“わたしのいい部屋、みつけた”編と、『日本マクドナルド』「大人のクリームパイ」“大人とはなんぞや”編と、いきなり2本もCMが増えた伊藤沙莉(いとう・さいり)の今年の活躍は「見えた」も同然だろう。

 実際、1月6日スタートのテレビアニメ『映像研には手を出すな!』(NHK)では主演、1月18日オンエアの『オールナイトニッポン0(ZERO)』でパーソナリティを務めるという、トレードマークともいうべきハスキーボイスによる“声の出演”が話題になっている。

 もともとドラマ演出家には人気が高く、“御指名”を受ける若手女優だった。多くの演出家が「忘れられない」「すごいインパクトだった」と声を揃えるのは、『14ヶ月〜妻が子供に還っていく〜』(読売テレビ制作・日本テレビ系)での演技。彼女は子役出身なのである。

 同じく子役出身で先に売れた松岡茉優とは親友であり、松岡と同じく『GTO』(フジテレビ系)で共演した吉岡里帆とも親しい。その後、NHKの朝ドラ(『あまちゃん』と『あさが来た』)でブレイクした松岡と吉岡には大きく水を開けられることとなった。伊藤も『ひよっこ』に出演していて、お茶の間での知名度を劇的に上げたのだが、松岡や吉岡ほどの大ブレイクには至らなかったのである。

 だが、二人とは仲良し。さらに、映画・舞台『幕が上がる』で共演した、ももいろクローバーZの玉井詩織ともプライベートで交流があり、玉井からは「ももくろの隠れメンバー」とも言われている。ちなみに松岡は、大のハロプロファンで有名で、伊藤は、ももクロと親しいということから、彼女たちの“若さ”がわかろう。

 だが、芸歴は17年とベテランなのである。今年5月で26才になる伊藤には、当然のことながら“中高生”ではなく、“OL”の役が増えている。

 最近作で私が好きだったのは、『獣になれない私たち』(日本テレビ系)と『これは経費で落ちません!』(NHK)だ。顔は薄いし地味なのだが、とにかく存在感抜群。ウチの会社に、こういう社員、いるかも…と多くの人に思わせ、「主演ではないのだけれど、演出家から名指しされる女優」というポジションに、いっきに上り詰めた気がする。

◆“知る人ぞ知る女優”から次のステップへ

 実は、あの『全裸監督』(Netflix)にも出演。1月16日からは、斎藤工とリリー・フランキーのW主演で、5週連続でオンエアされている深夜ドラマ『ペンション・恋は桃色』(フジテレビ系)にも伊藤沙莉は出演しているのだ。「ゴールデンでは無理」と言われる同作だが、斎藤は「そこにリリーさんがいる、沙莉ちゃんがいるということで『どの球も打てるな』っていう構図だと思いました」と言っている。『全裸監督』と『ペンション〜』、伊藤沙莉が、“通好み”な女優であることがよくわかる2本と言えよう。

 昨今、しっかりした芝居ができると演出家や視聴者を唸らせているのは、件の松岡茉優や『教場』(フジテレビ系)で魅せた大島優子、『恋はつづくよどこまでも』(TBS系)の吉川愛ら、子役出身の女優たち。

 伊藤もこの潮流にのっているうえ、「知る人ぞ知る」存在から、「この子、知ってる」から「いいよね」「大好き」と言われる存在になりつつある。

 突然増えたCMをはじめ、今年はさらにオファーが増えそうな予感。実兄が、『M-1グランプリ2019』で初めて決勝に進出したお笑いコンビ「オズワルド」の伊藤俊介であることも、お笑い界ではずいぶん前から話題だった。バラエティー専門放送作家の私からすると、妹の沙莉にも“笑い”の才能が間違いなくあることがわかり、トークバラエティにオファーしたくてウズウズしているところだ。

 果たして、多くのエンターテインメントのシーンで、やっと伊藤沙莉の時代がやってきた。彼女の顔と名前、覚えておいて損はない。