スポーツ紙の論調が変わりつつあるようだ。2月21日、中居正広が記者会見を開き、3月限りでジャニーズ事務所を退社し、4月から新会社『のんびりな会』を設立すると発表した。

 ここ数年、ジャニーズ事務所のタレントが独立すると、スポーツ紙にはネガティブな記事が目立っていた印象がある。

 2017年、SMAPのメンバーだった稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾の退所が発表された時、『スポーツ報知』は当時の3人のレギュラー番組を挙げた上で、こう続けた。

〈これらは当然、ジャニーズ事務所所属タレントとして契約した仕事のため、独立後もそのまま契約が続くとは考えにくい。事務所との契約終了が9月8日とあって、各局の番組改編のタイミングとなる9月いっぱいで、全ての番組が終了する見込みだ。また、テレビ関係者によると、独立後2年間は番組に出演できない、というのが業界の暗黙のルール〉(2017年6月19 日付)

『スポーツニッポン』も、こう記述していた。

〈退社後の芸能活動が軌道に乗るかは不透明だ。テレビ局関係者は「事務所の影響力が強いテレビへの出番が減るのは間違いないでしょう」と話す〉(同日付)

 結果的に、香取の『SmaSTATION!!』は2017年9月限りで終了。2018年3月に草なぎの『『ぷっ』すま』(以上、テレビ朝日系)、香取の『おじゃMAP!!』(フジテレビ系)、2019年3月に稲垣の『ゴロウ・デラックス』(TBS系)も幕を閉じた。

 本来、番組が存続するか否かは視聴率の問題が大きい。『おじゃMAP!!』はゴールデン帯ながら最終回の視聴率5.6%(ビデオリサーチ調べ/関東地区。以下同)であり、2017年以降2ケタ獲得回はなかったため、打ち切りは致し方なかった。しかし、『スマステ』は土曜23時台ながら7%前後を記録しており、2ケタに乗る回もあった。合格点の数字と思われるため、違和感が残った。

 だが、3人が独立する際の“ジャニーズ事務所を退所すると、芸能界で不利になる”という論調は、その後、徐々に変わり始める。

 昨年7月、公正取引委員会がジャニーズ事務所に対して、稲垣、草なぎ、香取の3人を出演させないようテレビ局に圧力をかけた疑いがあるとして、調査していたと報道された。その約2か月後、錦戸亮が関ジャニ∞の脱退、事務所の退所を発表。『サンケイスポーツ』は公取委調査のニュースを記した後、こう続けた。

〈事務所は「圧力などをかけた事実はない」と全面否定しており、今後所属するであろう錦戸をマネジメントする事務所がしっかりとしていれば、テレビ画面から錦戸が消えることはないだろう〉(2019年9月6日付)

 一方、同日付の『報知』は公取委調査の話題を書いた後、1年前と同じような視点で綴った。

〈ジャニーズに限らず、実際に圧力がなくとも、前所属先のタレントとは共演しないことがほとんど。俳優として活躍できる場は限られる。過去の例を見ても、それは本人も承知の上での決断。錦戸の覚悟がうかがえる〉

 錦戸の退所発表から半年弱、今度はSMAPのリーダーだった中居正広が独立を公表。中居自身が2月21日の会見で「番組は継続させてもらいながらだと思います」と話した。翌22日のスポーツ紙も〈中居は今後もレギュラー番組を原則そのまま継続する予定〉(日刊スポーツ)などと報じ、会見全体も好意的に扱った印象だ。

『デイリースポーツ』が〈今後も適任者が見つかるまではジャニーズ事務所の現マネージャーが窓口となる。退所会見に事務所関係者が集結し、温かく見守るなど円満退所は明らか〉(同日付)と書いたように、スポーツ紙はまだ中居がジャニーズ事務所と関係性があると判断し、ポジティブに取り上げているという見方もできる。

 だが、今まで“事務所独立は芸能活動に不利”という論調だった『報知』がこう書いている点は見逃せない。

〈中居の全レギュラー番組は続投となった。退所後に地上波から姿を消した「新しい地図」の3人の時とは、あまりに対照的だ。(中略)“現状維持”は3人の時を含めて「圧力」とも取られかねない言動によってイメージダウンや反発を避けるジャニーズの狙いもにじみ出る〉(同日付)

 たしかに、同じ記事内で〈中居正広というタレントの大きさ、またジャニーズ事務所の大きさがあったからこそ実現したといえる。今後、同様のケースで独立するタレントが出る可能性は低い〉と所属タレントへの牽制のようにも読める部分もある。しかし、〈イメージダウンや反発を避けるジャニーズの狙いもにじみ出る〉とこれまでにない一歩踏み込んだ記述は特筆すべきだろう。

 昨年7月の公取委の調査、数年来にわたるネットなどを通じた視聴者やファンの訴えが徐々にスポーツ紙の論調を変えつつあるのかもしれない。

●文/岡野誠:ライター。著書『田原俊彦論 芸能界アイドル戦記1979-2018』(青弓社)は、鈴木智彦著『サカナとヤクザ』、山田ルイ53世著『一発屋芸人列伝』などとともに『本の雑誌』2018年ノンフィクション部門ベスト10入り。同書では田原のジャニーズ独立前後の報道の変化、田原とジャニーズ共演NG説なども事細かに検証している。