放送作家、タレント、演芸評論家で立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、大河ドラマから歌舞伎役者へと活躍が続く中村勘九郎についてお送りする。

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「いよっ中村屋!」思わず声を掛けたくなる中村勘九郎である。

 御存じの通り『いだてん』で1年間まさに走り抜けた。大河ドラマ、今年は『麒麟がくる』が話題であるが、あれこれ衝撃を与えた『いだてん』が暴れたからこその沢尻問題である。

 皆さんあまりちゃんと見てなかった様だが、宮藤官九郎と中村勘九郎、Wカンクローのガンバリで(少しは阿部サダヲも力を出していた)とても上質ないいドラマになっていた。

 私は父の勘三郎と親しくさせてもらい、よく談志がらみで一緒に呑んだりした。傑作で豪快でサッパリした江戸のいい男だった。だから余計若旦那の事が気になる(まるで法事に来たおせっかいな遠い遠い親せきのおじさんのようである)。

 ドラマも終わってひと段落、また歌舞伎役者に戻っているというので久しぶりに会った。顔もスッキリしてアスリートのよう。「これでも舞台用の身体にもどったんですよ。舞台は大きくなくてはいけませんから」とまだ金栗四三の面影を残してさわやかに言う。

「途中親しくしてた足袋屋がいなくなっちゃって心配だったろ?」(ピエール瀧の途中降板を遠まわりに言う私は大人である)。

 勘九郎は実直に「ああいう問題は勿論いけない事ですが、僕はなんか近くて親しい人がいなくなっちゃって、TV見てても、ちゃんとあの人ゴハン食べてるかなとか気になっちゃって」。根っから優しい男なのだ。私が「あの足袋屋がのちに厚底の凄いシューズ作って、それ履いて勘九郎が札幌を走りゃいいんだよ」と言ったら嬉しそうにアハハと少年時代の顔で笑った。

 プレッシャーも様々あって大変だったと思う。「時間があいたら何してるの?」「ライブですネ。息子二人も連れていって乃木坂、欅坂、日向坂の三坂をめぐってます」。歌舞伎役者として、あのパフォーマンスも刺激されるらしい。ファンが掛け声を舞台にかけるのが歌舞伎と同じだと、目をキラキラ。

 私思うにその大昔“女流義太夫”に追っかけが付いていい所で掛け声「どうする! どうする!」。あれと同じだろうと思う。

 三月の明治座が楽しみ。昼は「一本刀土俵入」、夜が弟・七之助と(ますます美しさに磨きがかかっている)鶴屋南北ならではの人気演目「桜姫東文章(あずまぶんしょう)」。手とり足とり監修指導はあの坂東玉三郎。勘九郎と七之助兄弟での濡れ場ときちゃ、もうたまらない。父上にみせたいネ。

■イラスト/佐野文二郎

※週刊ポスト2020年3月13日号