中居正広がジャニーズ事務所を3月いっぱいで退所するが、元SMAPで中居よりも先に退所していたのが香取慎吾、稲垣吾郎、草なぎ剛の「新しい地図」の3人だ。稲垣は連続テレビ小説『スカーレット』(NHK)でドラマ復帰、その演技が話題を集めている。3人は今後、民放ドラマにも復帰するのか? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。

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 3月に入り、いよいよ残り4週となった朝ドラ『スカーレット』に稲垣吾郎さんが出演し、その存在感の大きさが話題となっています。稲垣さんの役どころは、主人公・川原喜美子(戸田恵梨香)の息子・武志(伊藤健太郎)の主治医・大崎茂義。難病に苦しむ母子を支えていく終盤の最重要キャラクターです。

 稲垣さんに求められているのは、視聴者をなごませる人物像。闘病を描くシリアスなストーリーの中、穏やかでちょっと変わり者の人物像は、喜美子と武志だけでなく視聴者をも癒す役割を担っているようです。

 先日、稲垣さんの朝ドラ出演は1989年の『青春家族』以来30年ぶりであることが報じられましたが、焦点はそこではありません。今回の出演は、ジャニーズ事務所を退所してから、初めてとなるドラマ復帰であり、新しい地図の盟友・草なぎ剛さん、香取慎吾さんを含めた大きなムーブメントの序章となりそうなのです。

◆大スターでなければもっと起用していた

 新しい地図の3人は、年末年始に『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!大晦日年越しスペシャル!絶対に笑ってはいけない青春ハイスクール24時』(日本テレビ系)、『出川哲朗の充電させてもらえませんか?』(テレビ東京系)、『スッキリ』(日本テレビ系)に出演して世間を驚かせました。

 また、香取慎吾さんは2月1日の『内村カレンの相席どうですか』(フジテレビ系)にも出演しましたが、これらはいずれもバラエティ番組へのゲスト出演。SMAP時代とは異なる形での出演であり、魅力の一部分を見せただけにすぎず、どこか物足りなさを感じさせました。

 だからこそ今回のドラマ出演は、彼らが「戻るべき場所に戻ってきた」ことのきざしと言えます。そもそも3人は俳優としての業界評価が高く、「SMAPという大スターでなければ、もっといろいろな役で起用できるのに」などと言われていました。

 まず稲垣さんは、主演を務める華がありながら、SMAP時代から悪人や変人などのさまざまな助演をこなす名バイプレーヤー。次に草なぎさんは、『任侠ヘルパー』『嘘の戦争』(フジテレビ系)『スペシャリスト』(テレビ朝日系)など、ダークヒーローを演じさせたら業界トップクラス。さらに香取さんは、『西遊記』(フジテレビ系)『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(TBS系)などの強烈キャラがハマる上に、最後の主演作『家族ノカタチ』(TBS系)ではアラフォーの独身男性を等身大で演じて称賛を集めました。

 新しい地図の3人がジャニーズ事務所を退所してからの約2年半、しばしば民放ドラマを手がけるプロデューサーたちに「いつ彼らを起用しますか?」と尋ねていました。プロデューサーたちは「まだわかりませんが……」「起用できたらいいですよね」などと口にするのみでしたが、その顔は「本当は起用したい」と言っているようにしか見えなかったものです。今回の朝ドラ出演をきっかけに、いよいよその時期が来たのではないでしょうか。

◆期待値が高いのはNHKとカンテレ

 出演先として真っ先に挙げられるのがNHK。稲垣さんは朝ドラに出演しているほか、『不可避研究中』のMCを務めていますし、草なぎさんは『ブラタモリ』のナレーションを務めている上に、『草なぎ剛の“ニュースな街に住んでみた!”』などの単発番組にも出演していますし、香取さんも大河ドラマ『新選組!』の主演を務めた縁があります。もともとNHKは朝ドラや大河ドラマだけでなく、不定期放送、深夜、BSプレミアムなどとドラマ枠が豊富なだけに起用の可能性は高いでしょう。

 また、草なぎさんにとってカンテレは、忘れてはいけない特別な存在。初主演ドラマ『いいひと。』、代表作である『僕シリーズ』、最後の連ドラとなっている『嘘の戦争』らを手がけたカンテレとの関係性は深く、草なぎさんとスタッフ、双方の思い入れは相当なものがあるようです。カンテレの手がける火曜21時台のドラマ枠が低迷する中、草なぎさんの主演作は起爆剤となりうるだけに、関係者は模索を続けるでしょう。

 ただ、ジャニーズ事務所の若手タレントを積極起用しているテレビ局もあり、彼らと新しい地図との共演には、まだ超えなくてはいけないハードルがあるのも事実。しかし、中居正広さんのレギュラー番組がジャニーズ事務所退所後も継続されるように、テレビ業界が変わりはじめているのも、また事実です。

 テレビマンたち自身、「公正取引委員会から監視されている」「視聴者が過剰な忖度がないか厳しい目を向けている」ことは分かっているだけに、動くなら今しかありません。一方、新しい地図の3人にとっても、40代中盤という俳優として円熟味の増す年ごろだけに、演じる機会を自ら手放すことはないでしょう。

 スケジュールの不規則なオリンピックイヤーである上に、新型コロナウイルスの猛威で各局は難しい対応を強いられていますが、だからこそ「国民的スターのドラマ復帰」という明るいニュースを届けてほしいところです。

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本超のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。